・ディランの"Christmas in the heart"は楽しいアルバムだ。1曲目から「サンタクロースが今晩やって来る」と歌うディラン自身の声が弾んでいる。全曲が有名なクリスマス・ソングでおなじみだが、あのだみ声で歌われると、やっぱり、ディランの歌になってしまうから不思議だ。クリスマスまではまだだいぶ日にちがあるが、我が家では夕方暗くなり始める頃に毎日かけている。
・大不況でアメリカの失業率は10%を超えている。クリスマスどころではない人が大勢だが、ディランはこのアルバムの印税を全額寄付するようだ。ディランのオフィシャル・サイトには発展途上国の子どもたちに50万食、イギリスのホームレスに1万5千食、そしてアメリカの140万の家庭に 400万食の食事を提供するだろうと書いてある。もちろん、これは目標だが、このサイトでは印税の他に募金も求めている。今度のクリスマスには、ディランがサンタになって、大勢の人の飢えを癒すことになる。
・ディランに孫がいるのかどうか知らないが、このアルバムを聴いていると、ディランが小さな子どもに囲まれて歌っている姿をイメージしてしまう。しかも、何の違和感もなく自然に思える。ところが、ブログを検索していたら、孫の前で歌って泣かれた話が出てきた。本当なのかどうかわからないが、このクリスマス・ソングだったら喜ぶだろうと思う。
・彼は相変わらず精力的にコンサート活動をこなし、ラジオでは20世紀のポピュラー音楽の講義を続けている。今年は新しいアルバムも出した。きわめて自然体で、好きな音楽とともに生きている。どこに行って、誰の前で、どんな歌を歌うのか。その幅の広さは年の功だが、いずれにしても薄っぺらでない深みを醸し出すのは、彼が歩いてきた歴史以外の何ものでもない。
・ほぼ同時に出たスティングの"If on n winter night......"はきわめてまじめだ。静かで厳粛なサウンドでできあがっている。歌われているのはイングランドやスコットランドで歌われているクリスマス・ソングで、聴いているとジャケットの写真のような雪景色をイメージするし、イギリスに出かけた時に見かけた石でできた田舎の小さな教会を思い出す。まだ聴いていないが、スティングの前作もまた、イギリスに伝わる古謡を集めて、彼なりにアレンジしたものでできているようだ。クリスマスのアルバムを聴きながら、そっちも聴いてみたい気になった。
・ちょっと前にBSでスティングのライブを見た。アルゼンチンのブエノスアイレスでの収録だったと思う。例によってベースを弾くスティングのバックにはドラムとギターしかいなかった。シンプルなサウンドでいつもながらに歌うスティングの声や姿は10年前に大阪で見たのと変わらなかった。肌や声がしわしわになったディランはなるがままという感じだが、スティングからは節制に徹する求道者のような雰囲気を感じる。今度の2枚のクリスマス・ソングには、そんな二人の違いがくっきりと映し出されている。
・今頃になって、Youtubeを見始めている。公式に提供されたU2のコンサートをダウンロードして何度か聴いた。よくできたコンサートで、歌われている曲目も新旧盛りだくさんでなかなかいい。しかし、太ったボノはいただけない。若いままである必要はないが、それなりのふけ方が必要だ。なにより、ボノに贅肉は似合わないだろう。