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2026年10月12日月曜日

ネットに預けた個人データが心配です

・「Eストア」を名乗る所からメールが届き、不正アクセスによってお客様、つまり僕の情報が流出したという知らせがありました。聞いたことがない名前だったので調べたのですが、インターネットの通販サイトを支援をする企業のようでした。つまり、僕がどこに登録したのかはわからない情報が誰かによって盗み取られたというのです。流出したのは、名前の他にメールアドレスや住所、電話番号などですから、被害は迷惑メールや電話の増加程度で済むのかもしれません。しかし、その直後に知った「タイムズ」のデータ流出にはかなり心配になりました。

・ 「タイムズ」はレンタカーや駐車場を営む会社ですが、僕は奄美大島と屋久島でクルマを借りました。その時に運転免許証のコピーを取られたかどうか、記憶がありません。「運転免許証には、住所、氏名、生年月日、顔写真など、他人が『なりすます』ために十分すぎる情報が、1枚の画像にすべて集約されています。」ですから、これを使えば、ネット銀行の口座開設やクレジットカードでの借金、あるいは各種ローンを組むことも可能だという指摘もありました。確かに、免許証は身分証明書として良く使われています。これだけで本人確認ができてしまうのであれば、どんな被害がもたらされるか。大いに心配になる出来事でした。ただし今のところ、「タイムズ」から情報流出の知らせは届いていません。

・実際僕のところにはさまざまな迷惑メールが届きます。そのほとんどはGmailが迷惑として始末していますが、その数が最近増えているのも事実です。利用しているカード会社を名乗ったり、アマゾンやアップルや楽天、あるいは厚生労働省やe-Taxなんてのもあります。どれももっともらしいので、迷惑として処理していなければ、つい開けてしまうこともあるでしょう。気をつけなければと改めて思っています。今ではほとんど使わなくなってしまった家電話ですが、日に数回ベルが鳴ります。迷惑電話防止のために名前を名乗るように返答するボタンを押すと、ほとんどが切れてしまいます。

・そんな物騒なことが続いている時に、パートナー宛でデジタル庁・厚生労働省から「公金受け取り口座に関する大切なお知らせ」と赤字で書かれた手紙が届きました。その内容は、「『公金受取口座登録法』の改正により年金口座の情報を厚生労働省からデジタル庁に提供し、公金受取口座として登録することが可能となりました。」というものでした。無視しようと思ったのですが,続けて読むと「登録に同意される場合には,お手続きは不要で」、同意しない場合には付属の「不同意申出書」を返送しろというのです。それをしなければ自動的に登録するというのですから、ずいぶん勝手なやり方だと思いました。もちろん、不同意のはがきを返送しました。

・我が家では、僕もパートナーもマイナンバーカードを持っていません。国や自治体に個人情報を提供したくないと思っているからですが、それで何か不便に思うことは全くありません。国民健康保険証と同じものが確認書と名前が追加されて毎年届きます。マイナカードには運転免許証も追加できるようですが、そんなことをする必要性は全く感じていません。と言うより,大事な情報が一括して一枚のカードに盛り込まれれば,それを紛失したりしたら大変です。老人には心配の種が増えるだけなのです。それに、国に預けた情報が不正に流出しないという補償がどこにあるのでしょうか。

・AIが本格化する時代になりました。これからはもっと巧妙に、人を騙す手口が増えることでしょう。歳とっていく者にはそんな流れについていくのは本当に大変です。と書いたら、実際には不正流出は他にもたくさんあることが報じられました。今のところ、流出したというメールは1件だけですが、個人情報の提供にはより注意を払わねばと戒めています。しかし、個人データを預かる企業や公共機関にAIの進化に対応したより徹底した管理をして欲しいと思います。難しいでしょうが念のため………。

2026年9月28日月曜日

高市・トランプとメディアの対応

・高市首相が訪米してトランプ大統領と会見し、国連で演説したようだ。日本の新聞やテレビの報道は地味なものだったが、それでも大統領に会ったことや国連で話した内容には、それなりに意味があったといった論調があった。しかし、フリーのジャーナリストがYouTubeなどで伝える中身は真逆で、恐ろしくひどいものだったと言える。

takaiti1.jpg ・高市首相がニューヨークに専用機で到着した時にテレビはタラップで手を振る様子を映していた。一体誰に手を振っているのかと思ったが、実際には駐在員などの日本人が数名だったようだ。この光景は帰る時にも同じように映されていた。そんな寂しさは国連での演説でも同様で、その前に出たトランプの時とは比べるべくもないほどに閑散としていた。彼女は首相就任時に「世界の真ん中で輝く外交を」と宣言したが、実際には、世界の真ん中に行っても、その末席に控えただけだったのである。(画像は内閣広報室より)

・もちろん、トランプとは実際に30分ほど会談した。その様子もYouTubeではテレビ以上に詳しく見ることができた。冒頭で彼女は大きな内閣改造をやってきたところだと自慢気に話したが、トランプは何にも関心も示さなかった。逆に、彼女がトランプに向けた視線(色目?)に対してトランプが思わず目をそらしたシーンがあって、彼の気持ちがわかって面白かった。そもそも彼は高市を日本の首相として紹介し、彼女と言って一度も名前を言わなかったのだが、高市はロナルドと読んで話しかけていたのである。

・そんなやり取りがあって、本題の会談に入る前に高市の通訳は、彼女が言わなかった記者の退席を要求して、大統領や側近達の笑いを誘っていた。大統領は高市の前にイギリスの首相、後にウクライナの大統領と会談したのだが、その時にはどちらも、記者からの質問に答えていたが、高市の時には全くなかったのである。

・記者の質問を避けるやり方は、帰国前の最後の会見でも同様で、質問は日本はNHKと時事通信の記者が行ったが、高市は日本で行っているのと同様に、台本(プロンプター)に目をやりながら答えていた。つまり事前に質問を聞いていて、答えを用意していたのだが、それは外国の記者についても同様だった。ただし質問したのはUAEとインド系の小さな新聞社の記者で、アメリカのメディアからはほとんど無視されたのである。

・驚くのは、こんなやり方に対して、それを批判する日本のメディアがほとんどなかったことである。新聞やテレビをすべてチェックしたわけではないが、現地で取材をしてYouTubeで放映したフリーのジャーナリストは、そう話していた。それが国会や官邸での記者会見のお決まりのやり方だから、同行した日本の記者達は違和感を持たなかったのかもしれない。だとしたら、そのことに気づくいい機会でもあったはずだが、首相同様、外国に行っても日本流を踏襲したのである。

・そのことがいっそう目立ったのは、トランプ大統領が数日前に、彼に批判的なCNNなど数社のメディアのホワイトハウスへの立ち入りを禁止したことがあったからだった。この大統領の発言に対してトランプよりのメディアも含めて、一致団結して憲法違反だと連邦裁判所に提訴して、それが認められた所だったのである。

・なお高市は何より一番強く大統領に対し抗議すべきだった、ICC(国際刑事裁判所)に対する仕打ちについて、何を言ったのか話していない。国連演説でも間接的な批判で、トランプ自身への抗議ではなかった。大体面と向かってドナルドと呼んだり流し目をしたりした後で、強い抗議などはできるはずもないし、やる気もなかったのである。

・トランプの中国に対する姿勢は全く対照的だった。空港まで習首席を出迎え、会談後には第二次世界大戦では同盟国として日本と戦ったことを強調し,お互いの関係の重要さを確認し合った。日本はどんな扱いをしてもついてくる属国だが、かつては敵国でもあったことまで蒸し返して中国に迎合したのである。それでも何も言えない日本の現状には腹立ちよりも情けなさが強かった。

2026年9月14日月曜日

カー・ステレオの変遷

carstereo1.jpg ・1993年にスバルのレガシーに乗ってから、現在のレイバックは5台目だ。30数年でクルマはずいぶん変わったが、カー・ステレオもその一つである。それは今回も同様で、乗り換える前のクルマでは聞くことができたCDもSDカードも使えなくなってしまった。音楽を聴くのはiPhoneをbluetoothでが簡単で、これは前のクルマでもできたのだが、今度のクルマについているカー・ステレオにはそれ以外の付属物はついていないのである。

・ スマホがキイにつかえるなど、まさに何でもスマホ対応だが、iPhoneに音楽を入れてないパートナーは困ってしまう。さてどうするか。長い間使ってきたiPodも、もう寿命がつきてしまっていたのでダメ。一つはSDカードリーダーをUSBで繋ぐ方法だが、今までのSDカードは64GBだから読み込んでくれなかった。32GBが上限だったのである。仕方なしに新しいカードに入れ替えたのだが、当然、入れる曲数は半減してしまった。しかしこれでiPhoneと合わせて二つの選択肢ができた。で、あらためて、これまでどうやってクルマで音楽を聴いてきたのか、振りかえりたくなった。

・ 最初のクルマにはCDの他にカセット・デッキがついていたと思う。カセット・テープはその前からウォークマンで使っていたから、買ったCDのほとんどを録音して持っていた。それを箱に入れてクルマに置き、歩きながら聞くためにバッグに入れて持ち歩いた。CDも何枚かケースに入れてクルマに置いたが、いずれにしても、1時間おきぐらいに、別のカセットやCDに変えなければならなかった。で、飽きるから、毎週のように、カセットもCDも別のものに入れ替える必要があった。今からすれば、えらい面倒なことをやっていたものだと思う。

・ 2台目のクルマにはカセットの代わりにMDが使えるようになった。それでカセットは不要になり、持っているCDを改めてMDに録音する必要があった。持ち運ぶ嵩(かさ)が小さくなって、その分たくさんの枚数をバッグやクルマに入れることができるようになった。とは言え、終わるたびに付け替える面倒は同じだった。

・ それがiPodの登場で、大量の曲を持ち歩くことができるようになった。ただしそれをカーステレオに接続できるようになったのは2台目ではなく、3台目からだったように思う。それもAuxのプラグをわざわざ追加させてのことだったと記憶している。ただし、3台目はカーステレオに複数のCDを入れることができるようになった。もうMDも用無しになって、iPod一つを持ち歩いてイヤフォンやカーステレオで聴くことになったが、これは大きな変化だった。

・最初に書いたように、 4台目になってCDの他にSDカードを差し込むことができるようになった。iPodをUSBで繋ぎ、またBluetoothでiPhoneを使うこともできるようになった。iPodがパソコンからアルバムを取りこめなくなったから、新しいものはCDかiPhoneでと、選択肢が増えて便利だった。それが新しいクルマではCDもSDカードも消えたのである。カードリーダーは場所を取るから、USBメモリーにしようかとまだまだこれでいいと決められないでいる。

2026年9月7日月曜日

ドジャースの試合が面白くない

・ドジャースは今年も西地区で首位にいて、プレイオフに出るのは間違いないだろう。相変わらず強いと言えば強いのだが、今年は面白くない試合が多い。その一番は残塁の多さだ。チャンスを作るのに点が入らない。そんなシーンを何度も見ている。原因は、何も策を講じずに選手に任せる監督だ。ランナーが出たら盗塁やバント、あるいはヒット&ランを試みて点を取ろうとする。相手チームがこうして点を取るシーンは何度も見るが、ロバーツ監督は何もしない。だから、ホームランでも出なければ点が入らないのである。スター選手ぞろいだからと言えばそれまでだが、打てない時にもそうだから、無策だと言わざるを得ない。

・逆に投手交代では忙しい。ピンチでもないのに回の途中で交代させるのは、左には左、右には右をと考えるからだが、良く失敗をする。投手の気持ちがわからないのではと思うことが少なくない。リリーフに出たらイニングの終わりまでしっかり投げたい。そんな気持ちが無視されるし、途中で代わった投手だって、できれば回の最初から投げたいと思うだろう。もちろん、ピンチに出て火消しのできる投手もいる。頼りになるが、誰もができるわけではない。とりわけ若い投手には酷である。

・ロバーツ監督は今年で11年目で、ワールドシリーズを3回制している。今年も勝てば4回目だが、一度も最優秀監督賞を手にしていない。今年も候補にすらなっていないようで、彼自身は大いに不満のようだ。しかし、大金を使ってこれだけ選手を集めれば、誰が監督になったって優勝できる。そんな評価なのかもしれないが、試合を仕切る監督の手腕も決して優れているとは言えない。もっとも、スター選手とうまくコミュニケーションを取ってチームを一つにまとめていることは評価すべきだと思う。

・とは言え、高額で獲得したスター選手があまり活躍しないのも毎年のことである。今年は特に外野手のタッカーの不振と、絶対的な守護神と期待されたディアスの乱調である。サイヤングを2度も取ったスネルは、故障で去年も今年も終盤戦以降にしか投げることができなかったし、三年目のグラスナウは一年目は終盤、二年目と今年は中盤に故障をしている。そして、この四人に払う報酬は総額で6億ドルを超えている。ちなみに大谷選手一人で7億ドル、山本選手は3億ドル超である。

・ドジャースには優れた若手選手がたくさんいる。しかし、外からスター選手を取ってくるから、なかなかメジャーに上がれない。上がっても成績が上がらなければすぐにマイナーに落とされてしまう。メジャーで経験を積ませてレギュラーにするという他のチームなら当たり前の発想が弱いのである。だから若い選手は結果を残そうとがんばって空回りをしてしまう。

・これは野手についてだが、投手は対照的に、スター選手の故障を充分に補ってきた。今年のローテーションを守っているのは山本一人だが、佐々木やロブレスキーもがんばった。他にも去年のメイや一昨年のストーンなどもいた。彼らはメジャーの最低年俸で働いたから80万ドルの収入である。今年外野手として例外的に頭角を現したパヘスももちろん、この額しかもらっていない。

・対照的なのは、村上選手が入ってプレイオフに出るほど強くなったホワイトソックスだ。このチームは、去年まで三年間続けて100敗以上していて、今年もほとんど評価されなかった。しかし、村上が点火剤になり、我慢して使って育てた若い選手が実力を発揮しはじめたのである。だから、20代の中頃の選手が中心で勢いがあって面白い。エラーやちょんぼもあるが、意外な活躍も少なくない。それに比べるとドジャースはおじさん集団のチームだから、活き活きしたところがない。特に今年は大谷選手の活躍が目立たないから、いっそう目立ってしまっている。果たしてプレイオフになったらおじさん達も目を覚ますのだろうか。


2026年8月17日月曜日

広告に腹が立つ

・テレビをケーブルで見るようになって3ヶ月ほどになる。東京の民放がすべて見られるようになったのだが、面白いと思うような番組はほとんどない。というより、どこのチャンネルにあわせてもCMの洪水で、面白そうと思うほど見ていないのである。たまに何か番組を見ていても、CMになった瞬間に音無しにする。そんなことをしていたのだが、すぐに、ケーブルテレビのチャンネルに合わせることが習慣になった。河口湖のケーブルテレビは一日中、富士山の周囲に設置したカメラを流し続けている。山中湖や河口湖、西湖に精進湖、そして本栖湖の富士五湖はもちろん、朝霧高原や勘助坂から新東名、富士山の南斜面から駿河湾、御殿場、あるいは葉山から海の鳥居越しの富士山を巡回している。

ktv.jpg ・梅雨が長く、明けても天候不順の日が多かったから、雲ばかりで何も見えないことが多かったのだが、時には富士山や富士五湖がくっきり見える日もあって、それはなかなかの風景だった。それに出かける時によく通るいくつかの交差点や河口湖駅前などもあって、今日の人出は、交通量はなどとチェックすることもできるようになった。だから見たい番組がない時には、ケーブルテレビにずっと合わせておくことも少なくない。ちょうど景色が変わる一つの窓が増えた感じなのである。

・少なくとも我が家では、増えた民放よりは、ケーブルのチャンネルにあわせていることが多い。面白そうな番組がなにもないし、あまりにCMが多すぎるのである。CMの間に中身がある。そんな印象を持つのだが、実際には番組全体の18%と設定されているようである。しかし見たくもないものに突然番組が妨げられるのだから、その時間は実際の何倍に感じてもおかしくないだろう。人々はこんなCMをよく我慢してテレビを見ているなーと今さらながらに感心してしまう。それとも何か無視する方法があるのだろうか。あるいはCMこそがおもしろいと思う人がいるのだろうか。

・広告に妨げられて腹が立つのはYouTubeなどでも同じである。それがだんだんひどくなってきて、いやならお金を払って広告なしにしろという態度だから、ますます腹が立ってくる。すぐにスキップ・ボタンを押すことにしているが、それができない長いものや、連続するものもあって、邪魔なことこの上ないが、金など払うものかと思っている。

・で、思うのだが、嫌われるだけの広告に何かプラスの効果があるのだろうかと疑問を感じている。ネットの広告は視聴者の情報に合わせて選択されていると聞くが、少なくとも僕にとっては興味を持つものなどほとんどない。「うるさいな」「邪魔だ」と思われるだけのためにお金を出して広告をして何かメリットがあるのか不思議に思う。そんな広告に限ってまた、何度もくり返しやってくるのである。

・メディアに氾濫する広告には当然、広告費がかかっていて、それは製品などの価格に含まれている。要するに僕たちは、迷惑な広告の費用を、製品を買うことで払っているのである。もっとも僕が見る限り、邪魔になる広告の製品など、一度も買ったことはない。

2026年8月10日月曜日

ジェニファー・ラウシュ『スロー・メディア』(世界思想社)

slow1.jpg ・翻訳者の伊藤明己さんからこの本をいただいた時の反応は「スロー・メディア」って何だ?というものだった。「ファースト・メディア」なら何となくわかる。スマホやタブレット、それにPCといったものと、それを使って利用するインターネットのことだろう。だとすると、「スロー」は新聞や雑誌、あるいは番組編成で規制されるテレビやラジオのことだろうか。そんなふうに思って読みはじめたのだが、それほど単純な話ではなかった。

・内容は「ファースト・メディア」批判の書だと言える。あらゆる情報が洪水のように押し寄せるし、SNSでのやり取りやメールも瞬時のうちにできてしまう。だから一日中スマホやPCから目が離せない。そんな中毒症状に陥って、心身に不安を感じる人が増えている。で、一度スマホやPCを脇において、接触しない時間を作ったらどうだろうか。この本はそんな筆者自身の体験から始まっている。

・「スロー・メディア」は「スロー・フード」を参考にしてつけられた名前である。「ファースト・フード」ではなく、時間をかけて作った食べ物を、ゆっくりと味わって食べる。そこにはもちろん、大量生産や遠隔地から輸送されるものではない、近隣で取れる無農薬の食材が大事という側面もある。だから当然、そんなことができるのは金持ちや閑人だけだという批判も起こってくる。そんな批判は「スロー・メディア」に対してはどうだろうか。

・「ファースト・メディア」はペーパーレス時代を招くから、木の伐採による環境破壊を抑制することができる。そんなふうに言われたこともあったが、代わりにとんでもないほどの電力を使うようになった。スマホのメーカーは次々に新しい機能を装備し、スピードをアップさせて、買い替えた方がいいですよと宣伝する。だから廃棄される量もまた膨大なものになっている。レアアースなどの採掘やゴミ処理などがもたらす健康被害や環境の汚染は、紙媒体がもたらしたものとは比較にならないほどになっている。

・とは言え、「スロー・メディア」は「ファースト・メディア」を捨てて、その代わりに使うものではない。かつて産業革命時に起こった「ラッダイツ{機械打ち壊し}運動」とは違って、スマホやPCの使い方を工夫しましょうというものである。スマホはメーカーが宣伝するほどには買い替える必要のないものである。ニュースだってSNSだって、メールだって自分の心や身体と相談して使えば、いい道具になるはずである。あるいはよく調べ、考察された記事やエッセイを探して読めば、氾濫する情報にまどわされずに済むかもしれない。この本はそんな至極当然の対処の仕方を提案している。

・要するに「スロー・メディア」は「ファースト・メディア」に批判的に対処するための、一種の運動なのである。それは個人の心身を健康に、正常に保つためにするメディアへの接触の仕方であり、環境破壊や資源の浪費をこれ以上ひどいものにさせないための方策である。それはまた、1960年代に起こった既存のシステムに対する「対抗運動」の再現だとも言える。

・僕はそういった発想には大いに興味を持ち賛同するが、現実を見た時にこれがどれほどの力を持つのかという心細い気にもなってくる。この本が書かれたのは2018年で、現在の「ファースト・メディア」の力は比較にならないほど強く、大きなものになっている。AIの進化は、僕たちに、もう考えなくていい、調べなくていい、トレーニングや勉強もしなくていいと言わんばかりなのだ。しかしだからこそ、「スロー」な発想に立ち返る必要があるんだよ、と訴え続けなければとも思った。

2026年7月27日月曜日

傍若無人のとんでも国会

・こんなひどい国会ははじめてだろう。高市首相は国論を二分するような案件を成立させると豪語したが、その法案はどれもひどいものだった。「個人情報保護法改正案」「皇室典範改正案」「国家情報局(国家情報会議)設置法案」「国旗損壊罪」そして「副首都構想法案」などである。どれもが充分な審議を必要とする法案だが、極めて少ない時間で強行採決された。衆議院では極めて少数になった野党にはなす術が無かったのだろうか。

・「国旗損壊罪」とは一体何なのだろうか。ここには国旗は国民の誰もが尊重し敬愛すべきものという前提がある。しかし、国家の行いへの批判として、国旗を燃やしたり汚したりするするのは、一つの政治的な表現の一つだろう。そんな憲法に認められた表現の自由に違反する法案だとも言える。国旗の損壊を犯罪とするのは人々を不快にさせたことが根拠になるというのだが、不快に思うかどうかは極めて主観的だから、好き勝手に判断されてしまう恐れがある。僕はこの法案を知った時にすぐに刑法の「わいせつ罪」を思い出してしまった。

・「皇室典範改正案」は醜悪としか言えないものだろう。ここには皇室の世継ぎが将来的に途絶える危険性があるので、女性皇族の身分を保持することと、旧皇族の男子を現皇族の養子として縁組みすることの二本の柱がある。そして養子縁組みした男子の息子が天皇になることを拒まないが、女性皇族が天皇になることは認めないとなっている。憲法では天皇という地位は国民の総意に基づくとあって、世論調査では女性天皇や女系天皇について7割もの賛意が示されている。それを国会の総意に置き換えて強行採決したから、この成立直後の世論調査では高市政権の支持率が激減して、不支持が上回った調査もあった。

・「個人情報保護法改正案」には、それに対する過剰な反応を避けるという名目で保護を緩めるという特徴がある。たとえば医療のデータなどを利用するために、個人の了解を得なくてもいいといった点である。グローバルなデータ規制に合わせるといった視点もあって、国会ではもっと充分な時間をかけて検討する必要があったはずである。

・「国家情報局(国家情報会議)設置法案」はスパイ防止が目的だと言われている。日本はスパイ天国だとも言われているが、この法案が目的とするのは外国のスパイではなく、政権に批判的な人々や集団に対する見張りの正当化にあるとも言われている。日本の主要な政治家がアメリカの情報局によって、その電話まで盗聴されていたといったこともあったのに、ろくに非難もしなかった政権が、今さら何をやろうとするのかと言いたくなった。

・最後に「副首都構想法案」である。副首都は東京が天災などで機能不全に陥った時に、機能を代行する都市を決めておこうとするものである。しかし、副首都には名古屋や福岡などが手を上げているが、実際には維新の会が強行に主張する大阪のための法案だと言われている。高市政権が成立するために維新が持ち出した案件だからである。

・ほとんど審議されずにこのような法案が可決されて法として成立した理由には、他にも高市首相個人の醜聞と、それに対する首相の態度にあった。総裁選の対立候補に対して誹謗中傷動画をネットで拡散させ、同じことを、衆議院選挙で野党の有力政治家にもやったという疑惑である。あるいは「サナエトークン」という仮想通貨を作り高騰させておいて、自分とは関係ないといって暴落させたという問題である。どちらも信じられないほどの暴挙で、実際にビデオやトークンの作成に関わった人が、文春などで、そのいきさつを暴露している。

・今人々が本当に困っているのは円安による物価の高騰だし、世界情勢に対して日本はどういう立場に立って発言するかといったことだろう。しかしこの国会では、そんなことは議題にもならなかった。国会前を初めとして、デモを続ける人たちが徐々に増えているが、メディアがほとんど取り上げない。野党の腰抜けと合わせて、日本が取り返しのつかない道に進むことを止めるのは無理だな、と思ってしまった。

2026年7月6日月曜日

テレビのスポーツ中継と広告

・サッカーのワールドカップがアメリカとカナダ、それにメキシコで開かれている。日本は予選を勝ち抜いたが、ブラジルに負けて終わった。いいチームだったが、主力の三苫や遠藤、それに久保まで欠いたのでは、仕方がないと思った。もっとも、強いフランスやアルゼンチンなどのように、強力な点取り屋がいなければ勝ち抜けるのは難しいのだろう。勝つためにはサッカーにも大谷翔平が必要だな。そんなことを感じた。

・そんな試合とは別に気になったことがあった。スタジアムのフィールドは広告板で囲まれている。コーラなどのおなじみの名前もあったが、聞いたことがないものが多かった。何より日本のメーカーが一つもないことに、ちょっと意外な感じがした。まだ日本が弱い頃は、広告板だけは日本のメーカーで埋め尽くされていたことがあったのでは、と思ったからだった。日本のチームは強くなったが、対照的に日本の経済力は弱くなった。そんなことがあからさまにされた気がした。

uniqlo1.jpg ・もっとも、毎試合見ているドジャースの試合では、日本の広告ばかりが目立っている。試合の中継はNHKがやっているのだが、バックネットには大谷選手と契約しているメーカーの広告がよく載っている。「おーいお茶」を背景に大谷選手の打撃を見るのは、もうほとんど日常的な風景である。今年からこの球場は「ユニクロ・フィールド・アット・ドジャースタジアム」という名称になった。このパートナーシップは5年で1億2500万ドル(200億円)で看板は外野のフェンスやバックネット、それにスコアボードの上などに設置されている。

samty1.jpg・ またドジャースのブルペンには今年から毛筆で大きく「不動産を超えてゆけ」と書かれた広告がある。SAMTYという大阪の不動産会社で山本投手と契約しているようだ。バックネットの「おーいお茶」と合わせて、何とも奇妙な感じがする広告である。ちなみにネット裏の広告は1イニングで1000万円以上もするようだ。しかも、実際に球場でも見られるのではなく、TV中継のために合成して貼りつけられているのである。NHKはなぜ許しているのだろうか。考えればおかしな話である。これはドジャースが遠征する球場でも同様である。

・ ドジャー・スタジアムは56000人収容だが、全試合がほぼ満員に近いようだ。しかも一番安い席でも70ドル以上する。いい席では2000ドルにもなるようだ。30万円以上だが、ワールドカップでは、そんな値段が当たり前のようだ。YouTubeには日本を応援するためにダラスやモンタレイに出かけた人のビデオがたくさん載っていた。その多くはリセールされたチケットを数千ドルで買った人が多かった。飛行機代と宿泊代、食事に移動の交通費などを考えると、一つ試合を見るだけでも100万円以上がかかっている。サッカー好きの若者がお金を貯め、場合によっては仕事を辞めて応援に来ている。いやいやご苦労さん。そんなふうに言いたくなった。

・ いずれにしても、スポーツを見ていて、お金のことを意識することが多くなった。WBCはネットフリックスの独占で、見るためには1ヶ月の料金を払わなければならなかった。ワールドカップはテレビで見ることができたが、前回のカタールから、テレビ局の独占ではなくなった。今回もスポーツ中継をメインにする世界的なインターネットテレビのDAZNが全試合を中継する権利を得たが、独占ではなかった。さて次回はどうか。僕は有料なら多分見ないだろう。

・サッカーはイギリスの労働者階級に支えられて盛んになった。しかし世界的な人気が高まると入場料の高騰で、金持ちしか見られないスポーツになった。ワールドカップは世界中の人が楽しんできたイベントだが、チケットの値段を聞くと、やっぱり金持ちしか楽しめなくなっていると言っていいだろう。広告が氾濫するイベントなのに、テレビやネットで見るにもお金を払えというのは強欲さ以外の何ものでもないだろう。やな感じという気持ちがいつもつきまとっている。

2026年6月8日月曜日

ブラウザーの翻訳機能に驚き!

・ネット上の翻訳機能の優秀さに気づいたのは5年前でした。訳したい文章を翻訳ソフトにコピペするだけで瞬時に翻訳してくれる。その優秀さに驚いて以降、頻繁に使うことになりました。AIによる翻訳機能の進化はすさまじくて、アメリカから友人が訪ねてきた時には、iPhoneの音声入力による翻訳機能がずいぶん役に立ちました。 YouTubeにも翻訳機能がありますから、字幕を見ていれば内容が分かるようにもなりました。翻訳機能はもちろん、メールでも使えます。届いた英文のメールが自動で日本語に翻訳されているのに驚いたのはつい最近のことですが、これもかなり役に立っています。

・僕のホームページは開設して30年になりました。もちろん日本語だけですが、表紙だけは英語のページもつけています。同内容のブログを作ったのは5年前で、翻訳機能の充実と重なっていましたから、英語のページも同時に作りたいなと思いました。しかし、bloggerには日本語と英語のページを併記させる機能はありませんから、新たにもう一つ英語のブログを作る必要がありました。それで諦めていたのですが、それにしては海外からのアクセスが結構あるなと感じていました。

・bloggerには統計情報を見る機能があって、どこの国からアクセスがあるかがわかります。もちろん日本が一番多いですが、たとえば、直近の一週間の数値は次のようになっています。日本97、アメリカ合衆国47、シンガポール22、フランス19、イギリス19、ベトナム17、スペイン17、ドイツ9、ブラジル8、その他85で、総数は340。ぼくはおそらく、海外にいる日本人や日本語の分かる人がアクセスしているのだろうと思いました。日本語をわざわざ翻訳ソフトにコピペして母語に訳して読む人などいないだろうと思ったからでした。

・ところがつい最近、ブラウザーの右上にあるアプリケーション・メニューに「翻訳」があることに気づきました。試しにやってみるとbloggerはもちろん、ホームページでも瞬時に英語に翻訳してくれました。できは次のようになかなかです。
驚いたことはもう一つ。雑草が伸びてきたので草刈りをしていると、川に面したところに生えているモミの木に爪痕を見つけた。最近のものではないから、2年半ほど前に工房の外にでかい糞を残していった熊だろうと思った。
Another surprise. When I was mowing the weeds, I found a mark on the fir tree growing on the face of the river. Since it is not recent, I thought it would be a bear that left a big piece of shit outside the workshop about two and a half years ago.
・AIによる翻訳がここまで来ると、1冊の本を短時間に丸ごと訳すことも可能です。翻訳家にとっては仕事を奪われることになるのかもしれません。僕は何冊か翻訳しましたが、夜なべ仕事で日に数頁で数ヶ月といったなかなか大変な仕事でした。あるいは論文を書く時には、必ず英語の文献にあたり、大事な部分をノートにしてといった作業から始めました。原文を辞書引きながら読まなくてもいいし、わざわざ訳書を買う必要もないということになると、これからの論文を書くスタイルはずいぶん変わるのだろうと思います。

・と言うよりは、レポートや論文を書く作業自体をAIに任せてしまうこともできるようになったと言われています。見事なレポートを書いた学生に、その内容についての質問をするとちんぷんかんぷんだった、という教員の声も耳にします。小説だってAIに書かせたものが賞を取るほどのできになったといったことも話題になっています。翻訳を瞬時にしてくれる便利さに感心していますが、これは人間の知性にとっての危機になるのではといった不安も感じてしまいました。


2026年5月25日月曜日

仕方なくケーブルテレビにした

・我が家は難視聴地域にあって、テレビの映りは極めて悪かった。それでも悪いなりにアナログの時代には東京局のすべてが見えたり見えなかったりした。風が吹いたり雨が降ったりすれば当然、ほとんど見えなくなる。我が家は難視聴地域というだけでなく、松や欅の大木に囲まれているのである。2011年にテレビがアナログからデジタルに変わったことによって、山梨県ではNHK2局と民放2局の4つのチャンネルだけになった。ケーブルテレビに加入すれば、東京局のすべてが見られるのだが、テレビを見る時間はそれほど多くなかったし、そもそもバラエティばっかりの民放などはほとんど見る気にならなかった。

forest101.jpg ・しかし、地デジを見るためには新しくアンテナを付け替えなければならない。腹が立つから役場から始まって総務省まで引っ張り回されて電話で文句を言って、やっと半年間だけBS経由での視聴が許可された。ただし見えたのはやっぱり4局だけで、その半年が過ぎると何の知らせもなしに、映らなくなった。仕方がないからアマゾンで見つけた高感度の大きなアンテナを買って、自分で2階の屋根につけることにした。意地でもケーブルと契約などするかという気持ちだったのである。それで映るようになったのは、間にブースターを二つかませてからだったが、日によって映りが良かったり悪かったりするのはアナログ時代と変わらなかった。

journal3-242.jpg ・映りが悪いのはBSも一緒で、夏は茂った木の葉が邪魔をしたし、冬は雪が降るとアンテナを凍りつかせた。インターネットを光にして、BSも見えるようになったが、地デジは強い風が吹くと枝がアンテナに当たって見えにくくなった。その度に屋根に上って位置を調整して見えるようにしたのだが、最近は歳とって屋根には上らないことにしていた。テレビを見る時間はそんなに多くないので、まあいいかと思っていたのだが、先日の強風でアンテナが大きく動いて、ほとんど見えなくなってしまった。何しろ枯れはじめたカラマツが2メートルの高さからぼっきり折れてしまうほどの風だったのである。

・こうなると見えるようにする手段はケーブルテレビしかない。というわけで、ここに住んで四半世紀を過ぎたところでケーブルテレビに加入することにした。我が家は道路から引っ込んでいるからケーブルはNTTが埋設した導管を使うことにした。ところがどうしても途中でつかえて進まない。諦めて空中で繋ぐことにしたが、間には大小何本も木があって枝が重なり合っている。風が吹いたら切れてしまう危険性もあるが、一応繋いで、無事見ることができるようになった。

・ケーブルテレビは東京局のすべてが見えるし、神奈川のUHFやケーブル独自のチャンネルもある。いっぺんにチャンネルが3倍にも増えたのだが、さて、テレビを見る時間は増えるのだろうか。いずれにしてもきれいに見えるようになったのだからNHKの受信料は払うことにしようと思っている。

2026年5月18日月曜日

ノーム・ チョムスキー『破綻するアメリカ・壊れ逝く世界』(集英社)

・ノーム・チョムスキーは著名な言語学者だが、アメリカに対して強烈な批判をする論者であることも知られている。1928年生まれだから、もうすぐ100歳になる年齢である。トランプ大統領の最近の愚行に対する彼の批判はさすがに聞かないが、ロシアのウクライナ侵略については、その直後に「戦争犯罪」だと批判をしている。

chomsky.jpg ・そのチョムスキーの本をアメリカがイラクを侵略した直後に読んで、紹介したことがある。『すばらしきアメリカ帝国』(集英社)で印象に残ったのは、アメリカのイラク侵略を「国際法に根拠のかけらさえもない予防戦争」だと言い、次のような批判を書いていたことである。
つまり、軍事力によって世界を支配しようとするアメリカに挑戦しようとするものがあらわれた場合__それがさし迫っていなくても、あるいは捏造や空想であっても__それが脅威に発展する前に消滅させる権利がアメリカにはあるというのです。
・それに気づいて、同年の2008年に出版されて積読だった『破綻するアメリカ・壊れ逝く世界』を読み直してみようと思った。トランプのイラン襲撃はブッシュのイラク侵略と酷似していて、もっと横暴だと思ったからである。

chomsky1.jpg ・この本は「無法国家のやりたい放題!」「『違法だが正当』というごまかし」「海外における民主化促進」「中東が証明するもの」「アメリカ国内における民主化促進」といったタイトルの章で構成されている。無法国家とはもちろんアメリカのことだが、それはアメリカの国内法はもちろん、国際法や国連の手続きも誤魔化したり無視することを指している。そして法を無視することが正当であることを主張する傲慢さが常套句であることが指摘されている。

・たとえばユーゴスラビアが崩壊して内戦が深刻化した時に、当時のクリントン米大統領は、セルビアによるアルバニア人の虐殺を防ぐことを理由にサラエボの空爆を実行した。「違法だが正当」を主張したものだったが、実際には虐殺はむしろ空爆後に増加したのである。あるいは「海外における民主化促進」には、そのような理由とは正反対に、ナショナリズムに基づく民主化を実現させようとした国の政権を倒すことを実行している。チリのアジェンデ政権の転覆と軍政の支持や、パナマ侵攻によるノリエガ体制の崩壊である。同様のことはハイチやニカラグア、グアテマラなどの中米諸国に及んでいるのである。またその時の理由に麻薬の密輸があったことは、トランプによるベネズエラ侵攻と大統領逮捕に酷似している。ベネズエラの石油を抑えることで次に狙っているのはキューバである。

・イランのホメイニ体制は1978年の革命で成立した。親米派の王政を倒したのだが、その王政は、石油の国有化を実現させたモサッデク首相をクーデターによって失脚させた後に生まれたものだった。そのクーデターを支えたのはアメリカやイギリスで、最大の理由は石油利権である。「中東が証明するもの」はそんな石油利権とブッシュによるイラク侵攻、イスラエルとパレスチナ、そしてアラブ諸国との関係に触れている。イスラエルがアメリカの後押しによってガザ地区をがれきの山にして膨大な犠牲者を出すまでにはまた、多くの横暴で悲惨な歴史があったのである。

・民主主義をリードすると思われていたアメリカは、今トランプによってその崩壊の危機にある。しかし新自由主義的な政策による富の格差や、政権よりのメディアの姿勢は20年前から指摘されたことだった。オバマが大統領になって少しはましになったと思われたが、その反動がトランプを誕生させた。アメリカが破綻し世界が壊れていく。この本を読むとそんな危機がいっそう強く感じられる。

2026年4月13日月曜日

デモはネットでしか伝えない

・アメリカで起きている反トランプデモには800万人もの人が参加したようだ。YouTubeにはその模様がいくつもアップされていて、見切れないほどだった。それはそうだろうと思う。トランプの暴走は危険この上ないし、口汚いののしりは聞くに堪えないほどだ。ちょうどアメリカから知人が訪ねてきていて、一緒に見たが、彼女達にとっても嫌悪の対象でしかないようだった。トランプはイランを悪玉化し、野蛮な国であることを公言するが、それはトランプにこそ当てはまることなのである。

・デモにはおなじみのブルース・スプリングスティーンやジョーン・バエズが登場し、懐かしいジェーン・フォンダが威勢のいい発言をして、ロバート・デ・ニーロがニューヨークでのデモの先頭に立った。おそらくテレビでも大きく報道されたのだと思う。そんな反対の声に対してトランプは意に介さないような発言を繰り返しているが、戦いが思うようにいっていない現状に不満や不安を感じていたはずだ。何とか2週間の停戦に漕ぎつけて勝利宣言などしているが、内心びくびくだったにちがいない。

・高市首相が訪米して、自衛隊の参加が憲法を理由にできないことになって、それを成果として評価する声が聞こえてくる。しかしそれは憲法のおかげであって、高市の交渉力によるものではない。彼女はむしろそんな憲法を邪魔扱いして改正を狙っているのである。抱きつきとおべんちゃらしかできなかっただけでなく、トランプの真珠湾発言には何の返答もせず、意味不明の英語で嘲笑されている様子がホワイトハウスの公式ページに公表されているが、日本のメディアはそのことをほとんど伝えていない。

・レーガンと中曽根の「ロン・ヤス」以来、ファースト・ネームで呼びあうことが日米関係の親密さを表すかのように思われてきた。そんな慣習を高市も踏襲して、何度もドナルドと呼びかけたが、トランプはサナエどころかタカイチとも言わず、日本の首相という言い方を繰り返した。通訳が気を使って高市首相と意訳していたが、そのこともまたメディアは話題にしなかった。高齢のせいかもしれないが、本当は名前さえ覚えてもらっていないのかもしれない。

・トランプの暴走に危険を感じたのか、日本でも連日、国会周辺や全国各地の繁華街などでデモが行われている。若い人たちの参加が多いようで、久しぶりの光景をYouTubeで見ている。ところが例によってテレビはほとんど取り上げていない。何万人も集まっているというのにである。もっともそれは10年ほど前に「シールズ」という学生の集まりが特定秘密保護法に反対してデモをリードした時や、福島原発事故に抗議した15年前のデモの時にも同様に、極めて消極的な取り上げ方だった。

・そんなテレビの姿勢を反省してか、元TBSで「報道特集」のキャスターを務めていた金平茂紀が「IMAJIN」と言う名のサイトをYouTubeに立ち上げて、「路上からの反戦」の取材を続けている。テレビで培った手法で、テレビが取り上げない政治的な行動を発信しようというものである。彼にしてみれば、今のテレビの姿勢には忸怩たる思いがあるのだろう。始まったばかりだが、彼が出演していた時の「報道特集」はよく見ていたから、チャンネル登録して追いかけることにした。

2026年3月23日月曜日

世界が壊れはじめている

・トランプが米大統領に就任して以降、彼は世界がこれまで築いてきた制度や慣行を無視し続けている。それは気候変動についてのパリ協定や、世界保健機構(WHO)からの脱退であり、アメリカへの輸入品に対して一方的に関税をかけることだった。それで世界中が振り回されたのだが、次には強大な武力を行使して、ヴェネズエラの大統領を拘束し、イランの最高指導者を殺したのである。独立国家に対して宣戦布告なしに攻撃を加えるのは国際法違反だが、トランプは全く意に介さない態度である。そもそもアメリカでは軍隊を動かすためには議会の承認が必要なのだが、それもしていないし、議会も反対もしていない。

・ロシア大統領のプーチンがウクライナを侵略してから4年が過ぎた。戦況は膠着状態で和平の兆しは全く見えていない。イスラエルによって徹底的に行われたガザの破壊も放置されたままである。米軍によるイラン攻撃にはイスラエルが加わっていて、強く勧めたのはネタニヤフ首相の方だったと言われている。イスラエルにとってはイランの体制を崩壊させて核兵器の開発を止めさせることが理由だが、汚職で告発されているネタニヤフが、その罪を免れるために戦争をしかけているといった憶測もある。同様のことはトランプにも言えて、エプスタイン問題が明るみに出れば、トランプも大統領ではいられなくなると見る向きもある。

・一国の首長が個人的な問題をなしにするために戦争をしかけて多くの人を殺戮する。そんな暴挙が繰り返されているのに、世界中のどこの国からも強い反対や批判が起こらない。何とも不条理な世界になってしまったものだと思う。多くの人が死に、街が破壊されるのを目の当たりにするのは堪え難いことだが、それによって引き起こされるのは、これまで長い期間をかけて築かれてきた国際間の取り決めの崩壊である。世界一の超大国に傍若無人の大統領が現れれば、世界は簡単に壊れてしまう。そんなSF映画のような物語が、今、現実化しているのである。

・それで思いだすのは、ジョージ・オーウェルの『1984年』に登場する全体主義体制が掲げるスローガンである。その「戦争は平和、自由は奴隷、無知は力」は逆説的なプロパガンダで、オーウェルがこの小説を書いた当時のソ連の体制を批判したものだと言われている。しかし、今の状況はまさにこの標語が現実化していると思わされてしまう。そしてそんな空気は、もちろん、日本にも蔓延してきている。高市人気と衆議院選挙における自民党の圧勝は、何よりその証拠だと言えるだろう。平和のための防衛力強化(戦争は平和)、リベラル批判(自由は奴隷)、知性の軽視と知らぬが仏(無知は力)なのである。

・その高市がアメリカに行ってトランプと会談をした。とんで火に入る夏の虫で、風邪を理由に中止したらどうだという意見も多かったが、彼女は強行した。自衛隊の派遣が難しいことは何とか納得させたようだが、日米の関係の強さを再認識させることが強調された。彼女の口からは、世界に平和をもたらすのはトランプだけだといったおかしな発言もでた。トランプの息子がハンサムだといったおべんちゃらもあったし、アメリカへの投資をさらに増額するといったお土産もあった。物価高で、とりわけ石油の値段が高騰しているのに、日本のどこにそんな金があるのか。「戦争は平和、自由は奴隷、無知は力」。そのスローガンがさらに現実化した気がした。

2026年3月16日月曜日

させていただきましたはいただけません

・ずいぶん前から気になっていましたが、最近特に耳にする変な敬語の使い方があります。たとえばテレビで歌手が「歌わせていただきます」といった言い方をよくします。しかしこれは一体誰に対して敬語を使っているのでしょうか。聴いている視聴者に対してか、番組製作者なのか、あるいは番組スポンサー、それともそのすべてに対してなのでしょうか。ここはただ「歌います」と言えばいいのではと思うのですが、どうでしょうか。

・高校野球で甲子園に出場するためには予選を勝ち抜く必要があります。これは選手達の力によって成し遂げることですが、監督や選手達は「出場させていただきました」と言うことが多いです。これは僕にも経験があって、その都度学生に指摘してきたことですが、「発表させていただきます」も気になります。僕に対する敬語なら、そんなものは必要ないと思ったからでした。「発表します」あるいは「発表いたします」で十分なのですから。同様のことはたとえば店が「明日は休業させていただきます」にも言えるでしょう。客に対する敬語なのでしょうが、ここは「休業いたします」で十分だろうと思います。

・ネットで調べると、文化庁がこの使い方について、「 基本的にはア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる」としています。なるほどと思いますが、許可してもらったとしても、「させていただく」はやっぱり不必要なへりくだりに思えてしまいます。

・ネットにはもっと笑えるような使い方も散見されました。結婚式でのあいさつで「新郎とは~大学で一緒に勉強させていただきました」という言い方が当たり前になっているようです。あるいは「~高校を卒業させていただきました」などは、本当は落第だったのに、便宜を図ってもらったのかと疑いたくなるような言い方です。店で食べた料理が格別おいしかった時に「食べさせていただきました」と言うのは作った人に対する敬意の現れとしてわかる気もしますが、ちゃんとお金を払うわけですから、「おいしかったです」とか「ごちそうさま」で十分な気がします。

・ところで、このような丁寧な言い方が当たり前になり、乱発されるようになったのはなぜなのでしょうか。上から目線にならないようにとか、不要な摩擦を避けるようにとか、相手との関係を無難に保とうとする意図があるようです。人とのつきあい方、コミュニケーションの仕方が難しくなった証拠なのかもしれません。相手との距離、上下の関係をどうしたらいいか。そんなことがまず気になるということでしょう。

・ぼくは戦後の民主化教育の中で育ちました。そこで地位や年齢の上下関係を気にせずにつきあうのが当たり前といった感覚を養いましたから、教える側に立ってからも権威主義的に振る舞うことを極力避けてきました。それで、学生の発言はもちろん、僕の話の中に疑問や間違いを見つけたら、遠慮なく指摘したり批判して欲しいと思ったからでした。ゼミが活発な議論の応酬でにぎやかになれば、後は学生に任して放っておいてもうまくいったのです。ところがだんだんそんな雰囲気を作るのが難しくなりました。

・先の選挙で自民党が圧勝した理由の中に、野党は批判をするだけという意見がありました。国会の場で政権の批判をするのは当たり前ですが、そこに違和感も持つ人が増えているのでしょうか。ところがネット上では、ちょっとした発言が炎上して、誹謗中傷が蔓延しています。面と向かっては距離を持って無難に対応すべきだが、匿名なら過激な発言も構わない。「させていただきます」には、人間関係におけるそんな両極端な距離を感じざるを得ない気がします。

 PS.準々決勝で負けた選手に戦犯扱いして誹謗中傷する輩が多いようです。とんでもない話でしょう。一生懸命やった結果にご苦労様と言えない己の貧しさを自覚しろと言いたいです! 

2026年3月2日月曜日

選挙報道とオリンピック中継

・2週間のオリンピック期間中のテレビはひどかった。早朝から夜中まで、ということは一日中オリンピック競技のライブ中継や録画の放送をしていたからだ。だから見るものがほとんどない。わずかな救いはイタリア各地を紹介する番組があったことだった。これほどのオリンピック偏重はこれまでで一番だったのではないかと思う。そう言えばパリ五輪の時にも、この欄で同じようなことを書いたから、この後もますますひどくなるのかもしれない。

・日本選手は24個というこれまでで最高の成績で、すごいすごいと持ち上げる報道ばかりが目立っている。しかし、競技種目がどんどん増えているのだから、増えるのは当たり前だし、金5個のうちスケボーだけが4個なのだから、他の種目はどうなんだと言いたくなってしまう。主たる競技のアルペンでは下位に沈む選手ばかりだったし、スピードスケートも高木選手一人の活躍だった。唯一の例外はフィギアーで、りくりゅうの活躍に大騒ぎでうんざりするほどだった。

・そんな日本選手のメダル数に乗じて、また札幌五輪をなどと元オリンピックオタクの国会議員が言い始めている。東京オリンピックの失敗でも懲りないのだから、もういい加減にしろと言いたい。そもそも東京オリンピックにどれほどのお金がかかったのか、いまだに明らかにされていないのである。日本がいまだに経済大国だと勘違いして、お金はいくらでも使えると思っているのだろうか。

・ところで、その前にあった衆議院選挙期間中の報道では、テレビはほとんど沈黙状態だった。事前には高市首相の唐突な解散宣言や、それに対応した中道改革連合の成立など、それなりの報道もあったのにである。で選挙当日の開票速報ではまた大盛り上がりで、自民圧勝の結果を無批判に取り上げるばかりだった。いろいろ問題山積みなのに、その点を強く指摘する報道はほとんどなかったのである。アイドルのファン気質に使われていた「推し活」なることばが、高市人気の理由に挙げられて、日本の深刻な現状などはそっちのけになってしまった。

・中国が真綿で首を締めるように、輸出品の規制を強めている。レアアースは日本の産業にとって命取りになるかもしれないし、抗生物質などほぼ100%中国に依存しているものもあるのに、高市は知らん顔である。突っ張る姿勢を評価するなどは論外なのである。逆にトランプにはしっぽを振ってなつくだけである。関税が最高裁で憲法違反の判決が出て、新たな関税を設けているが、これについて批判することなど考えてもいないだろう。こういったことについて、正面から疑問を投げかけ批判をするメディアはテレビはもちろん新聞にもない。

・批判が消えたのは統一教会や裏金と関係した議員に対しても同様だ。今度の選挙でほとんどが当選したから、みそぎは済んだとまた大きな顔をするのだと思う。野党が激減した国会でも、様々な問題を指摘して紛糾などということは起こらないに違いない。高市政権の政策は安部の焼き直しだから、失われた30年が40年になるだけだろう。それでも高市の発言は、掛け声だけは勇ましいから、何か良い方向に変えてくれると期待しているのかもしれない。しかしそれは淡い期待に過ぎないし、それどころか、とんでもない悪夢の現実化の危険性を孕んでいるのである。

・ひょっとすると高市支持の中には、日本の崩壊を望む声もあるのかもしれない。とことんダメになったところから出直したらいい。それはそれで一つの展望なのかと思わないでもない。しかしそうなった時の混乱や困窮をどこまで自覚しているのだろうか。

2026年2月9日月曜日

ドジャースの戦力補強に違和感

・2月になって、もうすぐキャンプが始まります。今年はWBCですから、もうすぐにぎやかになるでしょう。WBCを見るためにNetFlixに加入するかどうかはまだ決めていません。月額890円ですから直前になって判断しようと思っています。当然、日本は連覇を狙っていますが、アメリカもドミニカも本気で戦力を整えてきています。さてどうなるでしょうか。

・今年のドジャースですが、当然地区優勝は堅く、リーグ優勝も本命です。うまくいけばワールド・シリーズ3連覇も可能で楽しみだと言いたいところですが、オフの戦力補強には首をかしげることが多かったです。2連覇して最強の軍団なのに、外野とリリーフが穴だと言われ、あいつをとれ、こいつがいいといった記事が連日取りざたされました。しかしさっぱり動かないので、僕は現有勢力で来シーズンも行くのだろうと思いました。期待外れだった選手が復活するかもしれませんし、マイナーにいる若手の成長も期待できるのです。

・ドジャースには有望な若手がたくさんいます。しかし、トレードやFAで補強を繰り返しているので、なかなかメジャーに上がってこられません。そんな選手が他球団にトレードされて、それなりに活躍しているのを見ると、出さずにチームの戦力にした方がいいのでは、と何度も思いました。何しろドジャースの一番の欠点はチームの高齢化で、20代のレギュラー選手は外野のパヘスしかいないのです。すぐに結果が出なくても我慢して使い続けることをしなければ若手は成長できません。パヘスは例外的に我慢して使って実力を出しはじめた選手なのです。

・ドジャースはすでに選手に支払う年俸がメジャートップで莫大な贅沢税を払っています。今シーズンの終了後には選手会とオーナーが結んでいる労使協定が失効して改訂をしなければなりません。年俸のチーム上限を定めるサラリーキャップ制の導入をオーナー達が主張すれば、選手会と対立してストとロックアウトでシーズンが始まらないのではと心配されています。25年度の贅沢税を払ったのは9チームで全体の3割でした。財政豊かな球団はそんなことお構いなしにこのオフも戦力補強に多額のお金を費やしました。

・ドジャースは結局、クローザーのエドウィン・ディアスと外野手のカイル・タッカーを取りました。ディアスは3年で6900万ドル、タッカーは4年で2億400万ドルの超高額契約でした。これで弱点と言われたリリーフと外野を補強したわけで、まさに悪の帝国といわれても仕方がないのだと思います。大谷との契約以降、ドジャースの収入は爆上がりしていますから、財政的には何の問題もないのでしょう。しかしリーグでの不均衡なチーム力は大きくなるばかりですから、他球団にとっては戦う前からギブアップということにもなりかねません。

・選手は生身の身体ですから故障やスランプで期待外れといったこともおこるでしょう。実際去年も一昨年も、ドジャースはそんな選手たちに悩まされました。だからこその補強なのですが、毎年あまりに露骨にやっているので、もうドジャースを応援するのはやめようかと思うようになりました。大谷や山本や佐々木の応援はするけれども、ドジャースの応援はしたくない。そんなことができるのかどうか、何とも悩ましいかぎりです。

2026年2月2日月曜日

厳寒のお粗末選挙にうんざりだ!

・厳寒の中、唐突な衆議院選挙である。高市首相は私を選ぶかどうかの信任選挙だといった。意味が分からないが、選挙情勢では自民単独過半数の勢いだと言う。本当の解散理由は何なのか。統一教会の問題が韓国で裁判になっていて、その資料が公開された。そこには安部や萩生田をはじめ自民党議員の名前が数多く登場し、高市の名もあると言う。国会で追求されたらとんでもないことになるのは明らかだった。あるいは維新の国保逃れの問題もあって、身を切るどころか身を肥やすことに腐心していたのだから、これも問題にされたくなかった。などなど、国会を開いたらやばいと思われることが目白押しだったのである。

・来年度予算が可決し、国会が終わってからの選挙と言われていたが、それでは高市人気は下落して、選挙ではとても勝てなくなってしまう。首相にはそんな危機感があったのではと言われている。実際選挙に入ると、統一教会も国保も、あまり話題にならなくなった。で、公明と立憲が合体して「中道改革連合」になったとは言え、高市政権は安泰だろうと言うのが、大方の選挙情勢である。高市首相は信任されたら国論を二分するような政策を行うから、その白紙委任が欲しいと言っている。その中身については何も語らないから危ないことこの上ないが、それでもいいと思っている人が多いのだから、こんな恐ろしい選挙はないだろうと思う。

・国論を二分するような政策とは何なのか。それはたとえば非核三原則の改訂で核兵器を所有できるようにするのではと言われている。それを使うためには原子力潜水艦が必要だが、その建造も狙っているのかもしれない。それらを含めて防衛費をGDPの2%ではなく3.5%に増額し、さらにアメリカの言うがままに5%にもすることまでやろうと思っているのだろうか。そのための予算は税金や国債に頼るのだが、日本の経済は破綻してしまうにちがいない。彼女の言う積極財政は安部政権時の経済政策で失敗が明らかなアベノミクスの焼き直しにすぎないのである。

・ベネズエラの大統領を拉致しグリーンランドをよこせと息巻いているトランプ米大統領は、中国に対しては極めて弱腰だ。西半球の支配は譲れないが東は勝手にやってくれ。そんなことを言い始めている。つまり台湾有事にアメリカ軍が出る可能性はないと言っているわけで、日本はどうするんだと聞きたくなってしまう。高市はこれまで以上にアメリカに言いなりだから、単独でも行けと言われれば戦いを挑むなんてことをやるかもしれない。

・高市人気を支えているのは若者層のようだ。初めての女首相、はっきりものを言って勇ましいし、見栄えもいい。そんな声が聞こえるが、日本の将来を担う人たちには高市政権の本質が見えていないのだろうか。自衛隊は人手不足だから徴兵制をなんて言われたら若者たちはどういう反応をするのだろうか。老い先短い僕にとってはどうでもいいことだが、何ともおぞましい未来しか思い浮かばない。

・それにしても、前回は排除された壺議員や裏金議員がすべて公認された。代わりに石破に近い議員が冷遇されている。何とも露骨なやり方だが、自民党の穏健派が選挙後に大挙して離党なんてことはおこらないのだろうか。一縷の望みを夢想したくなった。

2026年1月19日月曜日

久米宏とテレビの終わり

・久米宏が亡くなった。81歳だから僕とは4つ違いだ。初めに彼を知ったのは1970年に始まった永六輔が司会するTBSの『土曜ワイドラジオTokyo』だった。僕は京都に引っ越してラジオを聴かなくなったし、久米の人気が出た『ザ・ベストテン』は見なかったから、彼についての記憶はほとんどない。しかし1985年にテレビ朝日の『ニュースステーション』が始まると毎日欠かさず見る番組になった。よそ行きの態度で原稿を読むだけのアナウンサーとは違って、くだけた調子で自分の意見もはっきり言う久米のスタイルに好感を持った。

・筑紫哲也が司会をする『NEWS23』が硬派的特徴を前面に出して始まると、久米も負けじと発言をして、政治や社会、経済などについて、それまではあまり取り上げなかった事件や問題をニュースにするようになった。夜の10時から12時ぐらいまではいつもテレビをつけていて、横目でちらちら見ながら本を読んだり論文を書いたりといった生活がずっと続いた。80年代から90年代にかけては自分でも一番勉強した時期だったと記憶しているが、テレビをよく見たのもこの時代だったのかもしれないと思う。

・今でも一番鮮明に覚えているのは2001年の9月11日に起きたニューヨークの貿易センタービルへの旅客機の衝突だった。高層ビルに最初の旅客機が衝突して大騒ぎになっているところに、また別の旅客機が衝突する。で、二つのビルが続けて崩壊したのである。この事件は『ニュースステーション』が始まる直前に起きたから、『ニュース23』が’終わる頃まで、一瞬も目が離せないほど釘付けになったことを記憶している。ネットはまだ普及途上だったから、テレビの力を見せつける事例だった。

・久米は2004年に『ニュースステーション』を辞めている。その理由は明言されていないが、番組内での彼の発言が有力政治家や番組スポンサーから批判され、自由にものが言えなくなったことが指摘されている。その後彼はラジオで番組を持って、言いたいことを自由に話すようになった。2008年には筑紫も『NEWS23』を辞めているが、その理由は肺ガンで、亡くなったのはその7ヶ月後だった。二人が辞めた頃から、僕はこの時間帯にテレビを見ることはしなくなった。ニュース番組で見るのは金平茂紀がキャスターを務める『報道特集』ぐらいで、それも彼が辞めた後は、それほど見なくなった。

・テレビが権力やスポンサーに弱いメディアであることがあからさまになったのは東日本大震災があった2011年以降だろう。とりわけそれが露骨になったのは安倍晋三が首相に復活した2013年以降である。そして、そんな力に抗う人もテレビには出なくなった。ネットの急成長に押されて影響力を失ってしまったテレビはますます権力におもねり、スポンサーの言いなりになっている。その意味で久米の死はテレビの終わりと言ってもいいのかもしれないと思った。

2026年1月12日月曜日

黒川創・滝口夕美編『加藤典洋とは何者だったか?』SURE

kato1.jpg ・高市早苗が首相になって、急に怪しい状況になってきた。台湾有事で中国を激怒させ、トランプべったりでアメリカ依存をよりはっきりさせた。トランプの傍若無人ぶりはエスカレートするばかりだから、このまま行ったら世界が壊れてしまうのではといった恐怖さえ感じてしまう。こんな時に思ったのは加藤典洋だったらどう発言するかといった思いだった。彼が書いたものの中で一番記憶に残っているのは、1999年に書かれた『日本の無思想』(平凡社新書)の中の敗戦による戦前と戦後の「切断」についての次のようなことばである。
一つは天皇との関係における「切断」です。もう一つは憲法との関係における「切断」です。また三つ目は、戦争の死者との関係における「切断」です。そして最後は、旧敵国との関係における「切断」ということになるでしょう。 『日本の無思想』pp.67-68
・黒川創・滝口夕美編『加藤典洋とは何者だったか?』は、こんな主張も含めて、加藤典洋が書き残したすべての著作に触れて、改めてその実像に迫っている。驚いたのはその著作が主だったものだけで50冊を超えているということだった。僕もかなり読んでいるつもりだったが、その2割ほどに過ぎなかったからである。さらにもっと驚いたのは、この本に関わっている人たちの多くが、加藤典洋とかなり近い距離にいた人たちで、生身の彼を良く知っていたということだった。

・編者の黒川創は雑誌『思想の科学』で長い間加藤と一緒に編集の仕事をしてきたし、鶴見太郎は加藤が明治学院大学で初めて教鞭をとった時に学生だった。共編者の滝口夕美は黒川のパートナーだが、彼女もまた明治学院大学で加藤の講義を受けている。そんな関係の中から出てくるのは、個人的に良く知っているからこその発言の数々で、著作でしか知らない僕の加藤に対する印象とはずいぶん違ってもいておもしろかった。

・加藤は2011年の東日本大震災の時にはアメリカにいて、その揺れを経験しなかった。ところが帰国してすぐに福島に行き、何度も通って『3.11 死に神に突き飛ばされる』(岩波書店)を書いた。政府や原子力の専門家、そしてメディアに対する強烈な批判に対して、僕は納得して読んだが、その時期の加藤がずいぶん変わった印象を持たれたようだった。それまでは発言することはあっても直接行動することが少なかったのに、震災と原発による被害に対しては血相を変えて行動したからである。

・加藤は一貫して、日本の戦前と戦後、そして現在における問題や矛盾を突いてきた。僕はその主張に微妙な変化があったことに無頓着だったが、この本では、加藤が見せたブレや変化が指摘されている。安部政権時における憲法と自衛隊、対米従属と戦前復帰型の国家主義の台頭といった矛盾に対して、まるで絡まりあってほどけない糸を必死にほどこうとしていたというのである。

・であれば、彼が生きていたならば、現在の高市政権や、トランプ大統領に対してどんな批判をしたのだろうかといったことを想像したくなった。僕はもう半分絶望した気分になっているが、それでも、現状からは目をそらさないでおこうと思っている。いや、そんなんではダメで、今こそ声を大にして批判する必要があるのだ。そんな声も聞こえてくる気がするが、果たしてどうなんだろうか。

2025年12月22日月曜日

国会議員の定数より歳費の削減を!

・臨時国会が終わった。公明党の政権離脱と日本維新の会の連立によって始まったのだが、何ともひどく危ない国会だった。高市首相の発言によって中国が硬化して、様々な圧力を加えてきている。首相は発言を訂正しないから、圧力はますますエスカレートするだろう。ところが政権支持率はほとんど下がらないから、彼女は突っ張ったままである。中国には貿易でアメリカ以上に依存しているからどこより重視すべきなのだが、一体どういうつもりなのか疑問に思う。香港の現状を見ても独裁色の強い国家であることは明らかだが、それだけに、もっと慎重な対応が必要なはずなのである。そのことは、横暴に振る舞うトランプ米大統領もよくわかっていて、高市発言を直接戒めたようである。

・ところで、自民党総裁にはなれたが総理にはなれないかもしれないと泣き言を言ったのに、維新が連立に加わることになった途端の右旋回である。公明党のブレーキが無くなったのだから当たり前だが、防衛予算のGDP比2%の今年度中の実現をさっそく公言した。財源をどうするかはもちろん、曖昧なままである。何が必要かを精査して決めるといった石破政権の方針は問答無用に反故にされたのである。反故にされたのは他にも米の生産増にも及んでいて、お米券などというばらまきで誤魔化そうとしている。

・維新は連立に参加する条件として唐突に、衆議院の議員定数削減を言い出した。何より政治資金規正法の改正こそが重要なのに、高市首相は立憲民主党の野田代表に、そんなことより議員定数について議論しましょうと言い放った。結局、政治資金規正法を優先して議員定数は次の通常国会に持ち越しになったのだが、とんでも国会を象徴する案件だった。

・維新は「身を切る改革」を党のスローガンにしている。議員定数削減はその主張に沿うものだが、連立政権に入った途端に、議員の政治資金の使い道についての疑惑が暴露された。印刷費を秘書が経営する印刷所に払ったとか、政治資金をキャバクラなどでの飲食費に使ったなどである。維新の不祥事はこれまでにも、地方議会の議員を含めて多発していて、身を切るなどがまやかしであることは明らかなのである。

・そんな実情を見て思うのは、今必要なのは議員定数の削減ではなく、議員報酬の見直しにこそあるということだ。国会議員は年額で2100万円超の歳費をもらう他に、「文書通信交通滞在費(月100万円)」や「立法事務費(月65万円)」と秘書給与やJRの無料パスも交付されている。ところがそれらを何に使っているかが不透明だから、いろいろと怪しい金の使い道をしたことが暴露されるのである。国会議員の定数は他国と比べて決して多くはないが、議員が手にする報酬こそが圧倒的に多額で、しかも使い道が不明瞭なままなのだ。

・日本の国会議員はアメリカやイギリスの1.5倍以上の報酬を手にしている。しかも日本人の年収は逆に米英の半分かそれに近い数値だから、いかに日本の国会議員が優遇されているかがよくわかる。議論すべきはここのはずだが、自分の懐に入るお金を減らすことなどは、ほとんどの政党も議員も考えてはいない。「身を切る」などとはちゃんちゃらおかしい政策なのである。