2014年7月28日月曜日

自転車に乗って

 


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・6月の末に泊まりがけで八ヶ岳周辺を歩いた。梅雨なのにご覧の通りの天気で、1日目は美しの森から牧場を横切って天女山までを周回した。12kmほどで4時間の歩きだった。2日目は清里のスキー場からリフトに乗って、そこから牛首山まで3kmほどで400mほどの登りを2時間ほど歩いた。いつかは八ヶ岳そのものに泊まりがけで登りたいと思っているが、まずは周辺からという行程だった。

forest117-1.jpg・7月に入ると天気が悪くて、山歩きの計画を立てにくくなってしまったが、その代わりに、自転車に乗った。薪割りが済んだ5月の中旬から乗り始めて、歩かない週は2〜3回、河口湖や西湖を走ってきた。もう乗り始めて7年になる自転車で、ドッペルギャンガーの折りたたみできるクロスバイクで、3万円ほどだったが、パンクもせずによく走ってくれている。ただし、あちこちガタがきているから、そろそろ新しい自転車に乗り換えようと思っている。

forest117-2.jpg・ネットで調べると、今さらながらにバイクの値段の違いに驚いてしまう。その差は主にフレームの素材にある。僕が乗っているのはスチール製で14kgもあるが、これがアルミだと10kg前後になって、さらにカーボンだと7とか6kgになってしまう。半分の軽さだったらもっとスピードも出るだろうし、坂道を登るのも楽なんだろうと思う。ただし値段はアルミだと10万円、カーボンだと20万円を超えてしまう。体力の維持のために乗っているのに、軽い自転車は求めるのは矛盾しているから、次もやっぱりスチール製でいいかと考えている。

forest117-3.jpg ・自転車で走るのは河口湖と西湖で、河口湖だと我が家からは20km、西湖は23kmほどで、両方を巡ると33kmを超える。この距離をそれぞれ1時間弱、1時間10分、そして1時間40分かけて走るのだが、どのコースにするかは体調や日差し、そして風向きなどで変えている。事前にと言うよりは走り始めて決めることが多い。調子が悪い時や風が強い時には河口湖大橋でショートカットすると、18kmほどになって50分程度に短縮できる。

・一番きついのは河口湖から西湖に向かう登り坂で、高低差が140mあってヘアピンカーブになっているから、ハーハー息をして、心臓もバクバクしてしまう。西湖を周回した帰りは、ブレーキをかけながらも50kmを超えるスピードが出るから、楽というよりは転ばないように気を遣う。

forest117-5.png ・その日の走りはSUUNTで記録して、帰ったらパソコンにつないでチェックをする。平均時速が20kmを切らないことが走る目安だが、最近心拍数や消費カロリーを計測できるバンドを買った。みぞおちあたりにつけておくと、走っている時でも、心拍数が時計に表示できる優れものである。数字フェチとしては、時間や平均速度だけでなく、心拍数もわかると、むやみにがんばる気も制御できるから、走る楽しみが増えたというものである。

・そんなわけで、7月は一日おきぐらいに自転車を走らせた。がんばったのは夏の旅行を考えて体力作りをするためだった。このブログを更新した今日はロンドンにいて、これからパリに向かう。これから4週間、自転車には乗れないが、元気に旅が続けられますように。

2014年7月21日月曜日

CM出演は金目でしょう

・テレビを見る時間が減ると、CMの多さが余計に気になるようになった。特にBSでは、健康や美容のための食品や薬品の宣伝が多い。で、そのたびに思うのは、驚きの表情で効果を話す人たちの真意についてだ。いったい、この人達は、どこまで責任を持って、発言をしているのだろうか。ついつい、そう言いたくなってしまうのである。同じCMがくり返し流されるとだんだん腹が立ってきて、チャンネルを変えてしまうが、それだけでなく、CMに登場している人に対する不信感や嫌悪感が湧いてきてしまう。そして、いったいこの人達は、何のために、こんなCMに出ているんだろうと、考えてしまう。もっとも理由ははっきりしている。要するに「金目」、これしかないのである。

・M大学のSさんは教育学者らしいが、毎朝のテレビ番組で司会をしているようだし、サントリーのCMで青魚と胡麻の成分の入ったサプリメントについて「考える仕事が多いから欠かせません」と推奨している。ひょっとしたら、いい仕事をしてきた人かもしれないが、このCMを見るたびに、「何やってんだ」と言いたくなってしまう。

・メジャー・リーグで活躍するI選手は、年俸が下がったとは言え、今でも数億円は稼ぐし、かつては毎年20億円ももらっていた。すでに一生かかっても使い切れないほどの蓄えができたと思うのだが,同時に何本ものCMに出ていて、最近では演技もするようになった。彼のファンなら、CMにつられて飲んだり、食べたり、買ったりするのかもしれないが、僕は野球選手としての卓越さを汚すだけのように思う。メジャーの選手には、その収入のかなりの部分を慈善活動に使う人が少なくないのだが、彼については、そんな話もあまり聞かない。

・東京オリンピックの誘致活動で「おもてなし」を流行語にしたTさんは、最近ではヱビスビールのCMに出ている。僕はヱビスビールファンだから、このCMに対しても腹が立ってしまう。理由は、3.11直後まで東京電力のオール電化を宣伝するCMに出ていたからだ。彼女の本職が何のなかよくわからない。報道番組の司会などもやったことがあるから、ジャーナリストを自認しているのかもしれない。だったら、CM出演にはそれなりの考えを持つべきだし、責任もあると思うのだが、それに関する発言は一切聞こえてこない。知らん顔して今度は東京オリンピック誘致で一役買うという節操のなさに呆れているから、ヱビスビールまでまずく感じてしまうのである。

・こんなふうにあげつらっていくと、CMに出る人に対する苦言は際限なく出てきてしまう。不良のロッカーだったYさんは、世の中の不条理を批判することなど全くなくて、ビールや缶コーヒーから自動車や化粧品など、ありとあらゆるCMに登場する。本職のゴルフが海外ではまったく通用しないI選手は、最近あまりCMに出ないが、英会話だけはスピードラーニングでマスターしたようで、BSでは頻繁に登場する。金を稼ぐのが何が悪いと言われてしまえばそれまでだが、有名性や人気を利用しているだけに、その社会的責任も自覚するべきで、日本人にはCMに出る人にも、それを見たり聞いたり読んだりする人にも、希薄だと思う。

・石原環境相の「最後は金目でしょう」発言が失言として非難された。この人に関しては父親共々「アホ」としか言いようがないが、失言が本音であることもまた、隠しようのないことである。僕はそんな、利己主義的で拝金主義的な今の日本の風潮に対して、うんざりすると同時に、絶望の気持ちにとらわれている。どこかに少しでもいいから希望は見えないのだろうか。その拝金主義の本家であるアメリカでも、映画スターやスポーツ選手はテレビCMに出ることを控える傾向にあると言われている。ましてやロック・ミュージシャンなどは聞いたこともない。そんな節度や自負心が、アメリカの映画やスポーツや音楽の魅力を支えている。その意味でも、昨今の日本人の拝金(金目)主義はひどいと思う。

2014年7月14日月曜日

南アフリカのジャズ

 Abdullah Ibrahim "Senzo" "Mukashi"
"Water from an Ancient Well"
"Essential South African Jazz - The Jo'Burg Sessions"

・アブドゥーラ・イブラヒムという名のジャズ・ピアニストを知ったのは、NHKのBSで見た「南アフリカ絶景を弾く〜ジャズ・ピアニスト アブドゥーラ・イブラヒム」だった。南アフリカの山や川、海、日の出などを背景にピアノが流れる内容で、その響きの透明さに引き込まれてしまった。この番組はすでに2010年に放映されたもので、僕が見たのはその再放送だった。彼のもともとの名前はダラー・ブランドで、イスラム教に改宗して改名をしたようだ。

ibrahim4.jpg・アブドゥーラ・イブラヒムは南アフリカのアパルトヘイトに反対して、ヨーロッパやアメリカに逃れて音楽活動をしていたが、彼が作曲した「マネンバーグ」という曲は「反アパルトヘイト運動」のテーマ曲となり、第二の南アフリカ国家といわれるほどに、人びとに親しまれ、支持されている。そのことは番組でも語られていて、反アパルトヘイトを理由に警察に逮捕された時に、人びとが口ずさむ、合い言葉のような歌だと言う人がいた。

 

ibrahim2.jpg・さっそくAmazonで検索すると多数あったが、「Mukashi」とか「Senzo」といった奇妙な名前のアルバムが気になって、その2枚を購入した。1934年生まれだからもう80歳になるのだが、この2枚のアルバムはごく最近の作品である。ほとんど即興に近いようなピアノソロで、曲の合間をなくしてアルバムが一つの曲であるかのように構成されている。「昔」「先祖」とは言っても、日本をテーマにしたものではない。聴いていて思ったのは、キース・ジャレットに共通した、透明感のある音色だった。

ibrahim1.jpg・ネットで調べると、長年武道を習っていて、日本については文化はもちろん、自然についても関心を持っているようだった。タイトルに込められているのは、今は失われてしまった、あるいは失われつつある自然や人びとの暮らしに対するノスタルジーであり、彼が静かなピアノで強く主張するのは、表層的で慌ただしく、本質を見失った現代社会に対する批判のメッセージなのである。僕は聴きながらキース・ジャレットの即興音楽を連想したが、秘められた強いメッセージを知ると、その音にあるアフリカ特有の明るさゆえに一層、彼の訴えが響いてくるように感じた。

ibrahim3.jpg・もちろん、これまでに発表されたアルバムにも、遠くパリやニューヨークから、南アフリカののことを思い、アパルトヘイト政策に反対するメッセージを込めた曲が多く残されている。ピアノだけでなく、トリオやカルテットで演奏される、いわゆるジャズの曲もあるようだ。もう少し、彼のアルバムを集めてみようと思っているが、僕が共感するのは、即興で惹かれるソロのピアノだ。今まであまり考えもしなかったが、アフリカ、それも一番遠い南アフリカの山や川や海、そして人びとに触れたくなったらどうしようか。そんなことも感じさせる出会いだった。

2014年7月7日月曜日

拝啓安倍総理大臣様

・あなたは戦後最悪で最低の総理大臣です。それは未来の歴史的評価を待つまでもなく、明らかなことだと思います。「集団的自衛権」「秘密保護法」「TPP」「消費税増税」「年金の減額」「介護保険制度の改悪」「残業手当の廃止」、そして「憲法の軽視」と、この2年足らずの間にあなたが強行に進めた政策は、どれも、今後の日本の行き先にとって不安の多い、大きな変更を迫るものばかりです。ところが、こういった大きな変更について、正面から正直にではなく、抜け道を探し、国民を欺くことをくりかえしてきています。

・そもそも、これらの政策は、選挙では争点にしなかったものばかりなのですが、あなたは国会において、選挙で選ばれた私には、自分の考える政策を遂行する権利があると豪語しました。その中には、憲法を改正するのも自分の権限だといった「立憲主義」を否定する発言もあったのです。そんな暴走ぶりに対してメディアが正面から批判しないのは、NHKの人事に明らかなように、批判を抑える手立てを労してきているからに他ありません。

・これほど強腰でいられるのは、国会の「ねじれ」が解消して、衆参共に圧倒的な議席をもっているからでしょう。その与党多数の国会がまったく軽視されて、内閣や私的諮問機関の段階で、重要な政策が決まってしまう現状を見せられると、「ねじれ」の効用に改めて気づかされてしまいました。その意味では、あなたはすでに独裁者だということができるでしょう。そんなあなたの最近の言動に接するたびに、僕はジョージ・オーウェルの『1984年』に出てくる独裁者ビッグブラザーの次のスローガンを思い浮かべます。


戦争は平和(War is peace)、自由は奴隷(Freedom is slavery)、無知は力(Ignorance is strength)

・あなたは「集団的自衛権」の根拠として「積極的平和主義」をあげました。平和を実現するためには、それを侵す危険に武力をもって積極的に対処する必要があるという意味ですが、それはまさに「戦争は平和」のスローガンが意味するところです。「集団的自衛権」は具体的にはアメリカがどこかと戦争をはじめて、日本に支援を求めた時に、そこに自衛隊を参加させることができるという権利です。今までは「ヴェトナム戦争」にしても「湾岸戦争」にしても、日本は憲法を理由に参加を断ってきましたし、イラクやアフガニスタン侵攻に際しても、大きな議論の上で、武力行使をしない後方支援として参加してきました。

・あなたは今、このハードルを取り除いて、戦争に参加できる「ふつうの国」にしようとしているのです。しかし、これまでアメリカが行ってきた戦争がどんな結果をもたらしたか、現在のイラクやアフガニスタンの現状などを見てみれば、その多くが愚行であったことは明らかです。しかし、日本はアメリカの属国ですから、アメリカから「集団的自衛権」の行使の要請があれば、他国に介入して侵攻するアメリカの方針そのものを批判したり、要請を拒否することはできないでしょう。

・あなたが法制化した、あるいはしようとしている政策の多くは、国民が当然の権利として持つ「自由」を抑え、行動を検閲し、なおかつ「自由という奴隷状態から解放してやるのだ」とうそぶくたぐいのものばかりです。「秘密保護法」が国民の「知る権利」や「表現の自由」を強く制限することは明らかです。しかも、政治家に任せて、知らない方が、黙っている方が楽なんですといわんばかりの態度ですが、これはまさに「無知は力」そのものでしょう。

・また逆に、「自由」にするのだと言って、逆に国民を縛り、路頭に迷わして奴隷状態にすることをいとわない姿勢も露骨です。一部の者たちばかりが豊かになり、多くの人たちは収入が減って、年金も健康保険も介護保険も頼りないものにさせられてきています。株価高と円安を維持すれば、後は何をやっても政権は安泰だと思っているのでしょうか。

・あなたの政治手法は一言でいえば「欺き」です。その最たるものはオリンピック誘致のためにブラジルまで出かけて公言した「福島第一原発は完全に制御できている」という嘘でしょう。あるいは「集団的自衛権」の根拠として説明した、有事の際に日本人の母子の乗った米軍の軍艦を護衛するといった荒唐無稽な話など、あなたの使う手口には「欺き」が満ちあふれています。

・そんな嘘でいつまでも国民をだまし続けることができると高をくくっているとしたら、あまりに国民を馬鹿にした態度だと言うほかはありません。あなたが今築こうとしているのは明らかに「砂上の楼閣」です。僕は早く大波に崩されたらいいと思いますが、そのために私たちが被る被害の大きさを考えると、空恐ろしい不安や怒りがこみ上げてきます。戦前の日本を取り戻して、もう一度破滅の道を歩くことなどは、断じて許してはいけないことなのです。