2021年4月26日月曜日

 

子育て日記に想うこと

kudo1.jpg・工藤保則さんから本が届きました。『46歳で父になった社会学者』(ミシマ社)というタイトルに、おやおやと思い、笑ってしまいましたが、読みはじめると、他人事ではなかったな、と反省してしまいました。

・工藤さんのパートナーは出版社で編集の仕事をしています。実は彼女とは2冊の本を出していて、最初の『コミュニケーション・スタディーズ』は彼女にとって最初の編集の仕事であり、2冊目の『レジャー・スタディーズ』は、出産後に復帰してすぐの仕事でした。相変わらずの仕事ぶりに、出産も子育ても順調なのだろうと、勝手に判断していましたが、この本を読むと、大変なことだったことがわかりました。

・本の内容は工藤さんが雑誌に連載していた子育て日記です。46歳になって初めての子育て体験が大変なことがよくわかります。何事も初体験で、それまでの生活習慣をがらっと変えなければならなかったのですから、それは当然でした。もちろんここには、しんどさだけではなく、子どもとつきあうことでもたらされた楽しい経験も、詳細な日記をもとに語られています。

・子どもは二人にとって計画的ではなかったようです。で、彼女には母親になることに対する不安が生まれました。出産前からあれこれ悩み、重いつわりや、出産時の苦闘、そしてその後の体調の悪さを抱え、仕事に復帰しての子育てと続きました。そんなこととはつゆ知らず、本を作る過程で、彼女にあれこれ注文したのではなかったかと、改めて思い起こさざるを得ませんでした。

・僕にとって子育ては、すでに40年以上前のことでした。あー、そんなこともあったなと、思いだすこともありましたが、ずいぶん違うと感じられることもありました。二人がフルタイムの仕事をしていれば、子どもは預けることになります。しかし、僕らはフリーで仕事をしていましたから、どちらかが家にいるローテーションを組んで、子どもを預けることはしませんでした。これは二人目の子どもの時も続きましたから、僕らの子どもたちには、保育所や学童保育の経験はありません。

・二人がフルタイムで働いて子どもを育てることが大変なのは、この本を読んでもよくわかります。これでは子どもが欲しくても無理だと思う人が多いのも頷けます。だからといってフルタイムでなければ、経済的に苦しくて生活が困窮してしまいます。その意味では、40年前に比べて、日本は明らかに貧しくなったと言えるかもしれません。そもそも預けることも容易ではないようですから、子どもの数が減るのは当たり前のことなのです。

・もう一つ、「イクメン」などということばが今頃になってもてはやされていますが、男が家事や育児に関わらないことは、40年前だって問題にされていました。僕は積極的に関わり、そのことを新聞や雑誌に書きましたし、テレビでも取り上げられたことがありました。半世紀近く経っても現状がさほど変わっていないことに、日本社会や男たちの意識の低さを感じます。それだけに、もう若くはない年齢になって家事や育児に奮闘する工藤さんには、がんばれ!とエールを贈りたくなりました。

・僕は自分自身が求め、経験したライフスタイルを研究対象にして何冊かの本を書きましたが、井上俊さんから「私社会学」と言われました。この本には、そんな特徴を感じて親近感を持ちました。

2021年4月19日月曜日

 

MLBがおもしろい

・MLBも去年は60試合で無観客で行われた。ダルビッシュや前田が活躍してそれなりに面白かったが、観客のいない試合は、やはり淋しかった。さて今年はどうなるのか、心配していたが、キャンプもスケジュール通り行われて、開幕にも漕ぎつけた。観客は2割とか3割だが、歓声の聞こえる試合はやはり盛り上がる。

・一番注目しているのは大谷で、去年は投げるのも撃つのも不調だったから、今年はどうかとキャンプ中から気になっていた。そうすると撃つは撃つは、特大ホームランを連発し、打率は5割を超えたし、投げても100マイルを超える速球で三振を取った。コントロールに課題が残ったが、今年の活躍を期待させる、十分な成績だった。

・好調さは開幕後も続いている。指の豆がつぶれて、投げるほうはまだ一回だけだが、スピードは十分で、投げた日にホームランも撃って、話題になっている。身体的には十分に回復しただけでなく、より強くなっているようで、この後の活躍が楽しみになった。エンジェルスは彼の活躍もあって、スタートダッシュに成功して首位を走っている。リリーフ陣も好調だから、終盤に勝ち越す試合も増えている。

・ダルビッシュや前田も引き続き好調だ。今年メジャーに移籍した有原や沢村などもがんばっている。投手に比べて野手の活躍が目立たないが、面白そうなシーズンになることは間違いなさそうだ。そうなると見る手段だが、NHKのBS以外で生中継を見ることができるのは、テレビではスカパーだが、これは契約していない。ネットで見るなら今年はSPOZONEで、年間パスが9900円で1ヶ月だけだと1650円だ。まだ契約していないが、これからの展開次第では契約するかもしれない。

・ところでアメリカのコロナ禍だが、ワクチン接種が進んで減少しているようだ。有原が所属するレンジャーズはテキサス州知事の宣言で、観客を100%入れてもいいことになった。大谷やダルビッシュが所属するカリフォルニア州の球団は33%で、ニューヨーク州は20%となっている。他方でカナダは入出国を厳しく制限しているから、ブルージェイズはトロントではなく、キャンプ地のフロリダで試合をしている。チームによってそれぞれだが、カリフォルニアは6月15日から経済活動の全面再開を宣言しているから、うまくいけばこの日から観客数の制限はなくなるのだろうと思う。

・アメリカは3000万人以上が感染し、56万人以上が死亡した。感染者数が52万人で、死者数が1万人以下の日本とは比較にならないが、アメリカでは終息が見え、日本ではこれからの桁違いの拡大が懸念されている。理由はもちろん、ワクチンの摂取率の違いだ。このまま行けば夏までには、アメリカはあらゆる制限が解除され、日本はまた緊急事態宣言を出さなければならなくなるだろう。スポーツが無観客になり、オリンピックが直前になって中止ということになるのかもしれない。基礎研究をおろそかにしてワクチン開発が遅れていることを含め、失敗の責任はすべて政府にある。 

・追記:エンジェルスとツインズの試合が、選手に陽性者が出たことを理由に2試合中止された。これまでにいくつかのチームで感染者が出て、試合が中止されているし、濃厚接触を疑われる選手が欠場したりもしている。選手の多くは既にワクチン接種を済ませているはずだが、決して安心できないことを改めて知らされた。 

2021年4月12日月曜日

ヘンリ・ペトロスキ『失敗学』青土社

 失敗を認めない。失敗だと自覚しない。最近の日本は、こんなことのくり返しのように思われる。その最たるものは、東日本大震災から10年過ぎてもまだ廃止できない原発だろう。欧州では太陽光や風力が主力電源になっているのに、日本の政府はまだ、脱炭素化社会に不可欠だなどと言っている。
JR東海が建設中のリニア新幹線も同様だ。コロナ禍でも仕事の多くはリモートでできている。仕事や生活の仕方が大きく変化すれば、交通機関もそれに対応しなければならない。乗客の落ち込みが常態化して、既存の新幹線もリニアも共倒れになるかもしれないのに、そんなことには目もくれないようである。そもそも、南アルプスに穴を開けるのは無謀な行為だし、膨大な電力量を必要とするリニアには、原発が欠かせないのである。

コロナ禍でわかったのは、日本の政府がどこの国よりもダメだということだった。PCR検査を徹底させて感染源を断つことをしなかったし、「Go to~」などというコロナをまき散らすことに巨額の税金を使ったりしたのである。しかも誰一人として、そんな繰り返される失敗を認めようとしない。で、開けるはずのないオリンピックに固執して、聖火リレーを始めてしまっている。一度始めたらやめられない、止まらない。こんな性癖は戦争で懲りてるはずだが、やっぱり同じ轍を踏んでいる。なぜ、どうして、と思って読みはじめたのが『失敗学』だった。彼の本は『鉛筆と人間を』自分でも訳していたから、まだ読んでいない本を何冊か持っていた。

petroski1.jpg 著者のヘンリ・ペトロスキは土木工学の研究者である。だから内容は、洞窟に投影される光と影からカメラなどを経て、PowerPointなどのデジタル機器に至るもの。飛び石から木の橋、そして巨大な吊り橋に至るものなどを話題にしている。そこで主に問われるのはデザインの問題であり、小さいものと大きいものに関わる事柄である。
そこにはもちろん、はっきり失敗とわかる事例がある。風で落ちてしまった吊り橋や地震で倒壊した建物などである。それらは設計そのものに原因があったり、材料の問題であったりする。しかし大事なのは、失敗を批判し、非難するだけではなく、失敗の原因を探り、その改善に力を注ぐことである。

失敗は失敗で終わらないし、成功も成功で終わらない。この本が言っているのはこの一点である。失敗には学ぶべきものがたくさんあるし、成功したからといって、それで終わるわけではない。失敗の原因は何らかの欠点や欠陥に求められるが、欠点や欠陥は、成功したと思われるものの中にも必ずある。だからこそ、どんなものも改良や改善が進み、画期的な変容が可能になるのである。

この本を読みながら考えた。蒸気機関が鉄道を産み、電気によって進化した。それは現在の生活には欠かせない交通機関だが、それをさらに進化させたリニア新幹線は、未来に必要な技術だろうか。電気なしには生活できない世界になったとは言え、大惨事をくり返し起こしてきた原発が、未来に不可欠な電源と言えるのだろうか。時代の流れに沿わないし、危険性があまりに大きい。それがわかったなら、計画を断念したり、開発を中止したり、できてしまっているものを捨てたりする。その決断こそが重要だが、日本人にはそれが一番苦手なのかもしれない。

現在のコロナ禍は異常事態である。だから通常とは違うルールや発想が必要になる。しかし平時のルールや慣習や既得権に縛られているから、適確な対応がとれずに後手後手になる。それでも、自らの失敗を批判されたくないし、認めたくないから、責任をうやむやにして、根拠のない新手を打ち出し、かえって支離滅裂になって泥沼にはまることになる。緊急事態を解除したらすぐに感染拡大してしまったから「マンボウ」だって。こんな体質の政府や政治家や官僚やメディアに任せていてはいけないのに、人びとはあまりにおとなしく、従順だ。

2021年4月5日月曜日

早い春が来た


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forest174-9.jpg・毎年のことながら、庭にいの一番に咲いたのはカタクリの花だった。去年100を超えたが、今年は140にもなった。この調子だと、数年先には庭一面なんてことになるのでは、といった期待を抱かせる。暖冬だったせいか、いつもより半月も早く桜が咲いている。去年も暖冬だったが、4月になって何度か雪が降った。花冷えで桜がいつまでも咲いていたが、今年は異常なほどに暖かいから、すぐに散ってしまうかもしれない。
・7本ある庭の桜の木のうち2本を伐採した。ほとんど花も葉も出さなくなっていたからだが、その後には小さなモミジを植えた。伐採した木のうち、ミズキの切り株から大量の水分がわき出して、オレンジ色になった。葉の出る季節になって、根が養分を送りだしているのだが、残念ながらもう木はない。ちょっと申し訳ない気になった。根元からでている枝を残したから、そこからそだってほしいと思う。


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・原木の調達ができないからと付近の倒木なども集めて、何とか来冬の薪を確保した。伐採すると、当然、大量の枝も処分しなければならない。それらを短く切って、焚きつけ用に整理した。もちろん、この作業は終わっていない。面倒だが、少しずつやれば、いつかは終わる。そんなことを口ずさみながら続けている。


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forest174-10.jpg・やるべき仕事はほかにもある。生ゴミを捨てる穴が2年でいっぱいになった。で、隣に新しい穴を作った。1mほどの深さだが、これも結構な力仕事だった。住みはじめて20年を超えたから、もういくつめになるのかわからないが、土地はずいぶん肥えたことだろうと思う。もっとも木に覆われているから、作物を植えることはできない。

・もう一つ、ストーブの掃除も片づけた。煙突のススを落とし、ストーブの中の灰をくまなく取り去って、黒く塗り直す。これも一日仕事だった。ほかにも、バルコニーのイスや玄関前の板を補修し、ペンキを塗り直した。やるべき仕事はまだまだあるが、暖かくなったので、自転車にも乗っている。とは言え、実は薪集めに精出したためか、2年ぶりにぎっくり腰になったから、しばらく休んでの活動再開だった。歳を考えて無理せずのんびりやること。そう身体に忠告されたような気がした。