2006年6月26日月曜日

Wカップで気づいたこと

 

・サッカーのWカップは本当にワールドワイドな大会だと思う。春にやった野球のWBCがアメリカ大陸とアジアに限定されたローカルなスポーツ大会だったことを認識した後ではなおさら、そう思う。
・出場国はどこも2年間に及ぶ予選を勝ち抜いてきた。だから、どうしようもなく弱い国は一つもない。審判も世界中から厳選され、中立的な立場でゲームを管理できる人が担当する。当たり前の話だが、WBCはそうではなかったし、奇妙な判定が勝負を左右したことが何度もあった。アメリカ生まれのローカルなスポーツで、メジャー・リーグが現在でも頂点なのだから仕方がないといえばそれまでだが、世界大会を本気で考えるのなら、見直すべき点があまりにたくさんある。Wカップを見ていて、何よりそのことを感じた。しかし、である。
・Wカップに参加するチームはどこも勝つことを第一の目標にしていて、それぞれ、できる限りの支援をしてきている。けれども、それぞれのチームを支える国の状況は、また、あまりに違いすぎる。それはとても、公平な条件でやっているとはいえないものである。
・たとえば、アフリカから参加したチームには、その報奨金をめぐって選手やコーチに不満がくすぶって、試合をボイコットするといった問題が生じた。これは前回の日韓大会でもあったことで、国が極貧状態にあったり政情不安だったりすることが原因である。しかも、選手の多くはヨーロッパのプロ・リーグで活躍していて、母国に帰ることはほとんどないし、そもそもヨーロッパ生まれだったりもするようだ。監督や選手の要求する金額は国の財政からすれば法外なものだろうから、工面するのも大変なことだろうと思う。
・今回参加したアフリカの国は、トーゴ、ガーナ、アンゴラ、コートジボアール、そしてチュニジアの5カ国だが、どこもヨーロッパの植民地だった歴史がある。地図でそれぞれの国を調べると、トーゴ、ガーナ、それにコートジボアールは隣国で象牙海岸と呼ばれたところに位置している。
・奴隷貿易が盛んでカカオや穀物のプランテーションがつくられ、象牙や金などもとれて、ヨーロッパを潤わしたところだが、その代わりに貧しい生活と政情の不安がもたらされた。イギリスやフランスなどから60年代にあいついで独立したが、その後の政情はどこも不安定で、クーデターが何度も起きている。たとえばアンゴラは75年にポルトガルから独立した後、アメリカとソ連をそれぞれ後ろ盾にした勢力が激しい内戦を繰り返した。で現在のGDPはどこも世界で100位前後で最貧国と呼ばれる位置にいる。
・同様のことは中南米から参加する国にもいえる。ブラジルがポルトガル、トリニダードトバゴがイギリスで、ほかのアルゼンチン、パラグアイ、コスタリカ、エクアドル、そしてメキシコはスペインの植民地だった。その多くは19世紀の前半には独立しているが、アフリカほどではないにしても政情は不安で経済は破綻しているところが少なくない。
・ブラジルは経済的には比較的裕福だが、スター選手の多くは黒人で、極貧生活のなかで育った人が多い。彼らは奴隷貿易の時代にコーヒーや砂糖のプランテーションで働かすためにつれてこられた人々の子孫である。拉致され強制連行されてきた人は、カリブ海から中米、そしてもちろんアメリカ合衆国にも数多くいて、その大半は現在でも貧しい生活状況にある。ちなみに、トリニダードトバゴのGDPは世界126位でアンゴラの103位よりも低いし、コスタリカは82位だ。
・このような国々でサッカーが盛んなのは、もちろん、植民地支配をした国の影響である。だから、サッカーが文字通りの世界大のスポーツであることは、世界中のほとんどがヨーロッパの大国に支配された歴史を持つことを意味している。そして、宗主国の子孫ではない人たちにとって、サッカーやその他のプロスポーツが経済的な豊かさや社会的な地位を得る数少ない道の一つであることも共通している。同じ可能性を持っているのが音楽だが、それもまた、ヨーロッパから持ち込まれた楽器や音楽が、土着のものや奴隷によって伝えられたものと融合して生まれたものである。
・国情や国力の違いは他にもある。日本と対戦したクロアチアはユーゴスビアから凄惨な内線をへて独立した国である。人口は400万人で、 GDPは世界72位。一人当たりのGDPは12,000ドルで、日本とくらべて3分の1強、人口は30分の1である。もっとも旧ユーゴで今回出場しているセルビア・モンテネグロは6月5日にさらに分離したが、セルビア単独では人口は1000万人に近いものの、一人当たりGDPは3200ドル(日本の約1割でトーゴの2倍)にすぎない。
・こんなことに気づくと、試合を見ていて応援したくなるのは、どうしても、ヨーロッパの強国以外になってしまう。このような歴史や現状が反映して、試合以上に盛り上がるスタンドや自国での応援の熱の入れ方のすごさに圧倒されてしまう。「がんばれ、にっぽん」とはいっても、どこかにわか騒ぎで、せいぜい「感動をありがとう」程度で終わる日本の応援とは決定的に違う何かがある。
・日本はテレビの放映権に140億円もだしたそうだ。しかも、視聴率をあげるために日中の試合を2試合も組んだ。テレビは「がんばれ日本」を煽っておきながら、勝負よりは視聴率を重視したということになる。メディアは何よりビジネス大事。そのことは、もっと問題にしてもいいことだと思うが、さして話題にならないのは、勝敗より見やすい時間のほうがいいと考えた人が多かったということなのだろうか。

2006年6月19日月曜日

暑くないけど夏の朝顔の準備を

 

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forest52-2.jpg・農鳥がきれいにでない年は冷夏で凶作といわれている。ことしは先月半ば過ぎにヒヨコのような形が見えたが、あっけなく消えた。気象庁は夏は平年の暑さというけれど、昔の知恵にしたがえば、今年は暑くはならないということになる。この「森の生活」のバック・ナンバーをみると、去年は平年並みで一昨年は猛暑、そして一昨々年は冷夏と書いてある。その年は、桃も不作でろくに食べなかったが、今年はそのときによく似ている。
・とはいえ、家の周囲は日に日に緑を濃くしている。上(↑)のように、キッチンから見える森は雑草で鬱蒼としている。雨が多いから、ちょっと入っただけで体中びしょびしょになってしまうほど、露がいっぱいだ。うっかり触ると臭くてたまらないカメムシも、葉っぱの上で水を吸っている。背中の模様や前足の玉虫色にしばし見とれてしまった。

forest52-4.jpg ・近くから持ってきて植えたアイリスが毎年少しずつ増えている。今年は5本ほど花が咲いた。雨上がりで、その花にもいっぱい露がついていて、淡い色の上で少し光っている。クレマチスはもう花が落ちはじめているが、咲き始めの薄紫も美しかった。もう少しすると大きな白い花を咲かせるヤマユリがつぼみをつけている。
 


forest52-3.jpg・毎年家の南面いっぱいに朝顔を咲かせている。今年もその準備にと種をまいた。プランターで双葉がでたところで植えかえたが、雨ばかりで成長が遅い。中には葉が虫に食われたり、黄色くなってきたりしているのもある。雨の日がもっと続くと、もう一回発芽させる必要があるかもしれない。もともとはモンゴル土産の野生の品種だから、雨には弱いのだろう。周囲の自生している植物に負けないように、草取りをマメにしなければいけない。 

forest52-1.jpg ・湖畔ではもうハーブ祭りが始まっているが、ラベンダーはまだ全然花を咲かせていない。暑い年にはもう満開、なんてことがあったから開催時期を早くしたのだが、全くの肩すかしである。湖北にある大石公園のラベンダーは満開になると湖と富士を背景にした眺めがなかなかだが、今年はプランターを積んで花のナイアガラなどという妙なものをつくってしまった。蔓状の花を植えたのならともかく、ペチュニアだから、横からはプランターしか見えない。冬に続いて、原色のセルロイドでできた大きな七夕などもハデに飾ったから、何とも趣味の悪い景色になっている。このセンスのなさは天然記念物もので、何でも飾ればいいというものではないことの標本のようだ。

2006年6月12日月曜日

古い人たちの声も聴いた

 

Carole King "The Living Room Tour",Jackson Browne "Solo Acoustic Vol.1"

caroleking1.jpg・ジャクソン・ブラウンとキャロル・キングのライブ盤を買った。もちろん、名前はよく知っていてレコードは何枚か持っているのだが、CDはそれぞれ一枚しかない。嫌いではないが、どうしてもほしいというわけでもない。ふたりは僕にとってそんな存在のミュージシャンだった。とはいえ、ふたりともキャリアの長い大物であることに違いはない。
・たとえばキャロル・キングは僕が小学生の頃からのヒット・ソング・ライターで「ロコモーション」をつくっている。僕はよく聴いた覚えがあるが、そのときにはだれが作ったかなんて知らなかったし、どうでもよかった。歌っているのはリトル・エヴァだったか。しかし、今では顔も覚えていない。同じ頃にヒットしたニール・セダカの「オー・キャロル」は彼女のことを歌っているのだという。この曲もよく聴いたが、そんなことは知りもしなかった。
・キャロル・キングは1942年生まれだから、もう60代の半ばになる。ライブの「The Living Room Tour」は去年の発売だが、ジャケットの写真も若いし、声もほとんど変わっていない。会場に集まったのはおそらく長年のファンが大部分なのだろう。曲の合間のおしゃべりも気さくだし、歌の際にも会場からの歌声がよく聞こえる。ヒットした歌が中心で、アルバムタイトルのように、彼女の居間に友達を招いて歌っているという雰囲気である。アンコールはその「ロコモーション」。
・キャロル・キングというと「タペストリー」が有名だが、僕は1970年に出た「ライター」が好きだ。ソロ・デビューのアルバムなのに、若いジェームズ・テイラーを従えていて、僕はそれで初めて彼を知った。イケメンのかっこいいシンガーで声も優しかったが、その時代にしっくりくる内省的な歌だったから、僕はよく聴いた。それが「アイム・ノー・ヴァージン」なんていう当時では過激な歌をさわやかに歌ったカーリー・サイモンと結婚したから、意外な感じがして驚いてしまった。ちなみに15年ほど前に大阪で彼のライブを聴いたが、もうすっかり頭が後退していて、ステージに登場するとすぐに客席から「ハゲー」と声がかかって大爆笑。しかし彼はいつもどおりに「ハーイ」とやったから、また大爆笑。息子まで出ていて「The Living Room Tour」同様、楽しいコンサートだった。

JB1.jpg ・ジャクソン・ブラウンの「ソロ・アコースティックvol.1」もライブで2005年に出されている。キャロルのとおなじで、アットホームな感じで客とのやり取りが楽しそうだ。アンコールはやはり客席からのリクエストでイーグルスがヒットさせた「テイク・イット・イージー」で、笑いながら「ok」といって応えている。
・彼は僕よりも3ヶ月早く産まれている。だからほとんど同世代だといっていい。ジェームズ・テイラーと同様、静かで内省的な歌が多いが、政治的なメッセージのある歌もかなりある。1979年に起きたスリーマイル島の原子力発電所での放射能漏れ事故に抗議して「ノー・ニュークス」コンサートを企画したり、レーガン政権を支持するアメリカの右傾化を皮肉ったアルバムを出したり、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を批判したアルバム「サン・シティ」にも参加している。
・「ソロ・アコースティックvol.1」では、そんな初期の頃から最近のものまで幅広く歌っている。ただし、僕が知っているのは半分ほどで、80年代後半からのものははじめて聴いたものばかりだ。

僕は家を借りる 高速道路の陰だ
朝、昼飯を持って出かける 毎日仕事だ
で、夜になる頃 家に帰って横になる
でまた、朝日が照らす頃に起きて 繰り返し
アーメン で、もう一回 アーメン
"The Pretender"1976


真理の探究がウィンクとうなずきで振る舞われるところ
権力と地位が神の慈悲に等しいとされるところ
こんな時代は、感覚的には祝祭であっても 魂は大飢饉だ
この国の淵に立って 海を背にしながら 東を眺める
"Looking East"1996

・あらためて、探すとふたりともアルバムを出し続けている。それほど話題にはならないが、いいなと思う歌が少なくない。アルバムも買ってみたいし、こんなコンサートならぜひ行ってみたい。そう思うと、またあらためて、日本人にはそんな気持ちにさせるミュージシャンがいないなとつくづく感じてしまう。

2006年6月5日月曜日

最近のSpamメール

  迷惑メールが相変わらず、毎日100通以上もある。Thunderbirdを使うようになって、ほとんどが自動的にゴミ箱行きになったので、気にならなかったのだが、最近、その網をくぐり抜けるものが増え始めてきた。迷惑ながら、敵もさるものといった工夫が少なくない。
一つは、個人メールを装ったもので、よくある苗字の送信者名で、題名は「こんにちは」とか「謹啓、はじめまして」、あるいは「お久しぶりです」「この前の件です」といったよくあるものだ。うっかりあけると裸の写真で「普段婦人警官として現場で働いています。なかなかまとまった時間は取れませんが、少ない時間でも一緒に居て下さる方を募集しています。」などと書いてあったりする。
迷惑メールの半分は、このようなH系のもので、最近目立つのは学校ものである。「県立白姫女子校保険室」「専門学校実習授業についてのお願い」といったものは題名からして怪しいが、送信者が「事務局」「情報課」だったりすると、大学の事務からのメールかと思ってしまう。実際、ぼくの大学では、そんな題名の学内メールがよくあるからだ。
「ギフト券、締め切り間近」「おめでとうございます」「採用のご報告」「【親展】当選通知在中」「初日招待券」といった題名はいかにもフィッシングくさい。しかし送信者が女の子の名前ではなくSupportだったりすると、引っかかる人がいるのかもしれない。ネットで買い物をすれば、そのサイトから、ギフト券や賞品や賞金の応募の知らせが来る。だからAmazonや楽天のサイトを真似たものであれば、引っかかる可能性は十分だ。
題名や送信者欄に何もなかったり、「"」や「?」だけだったりというメールが目立ってふえていて、それが迷惑メールの網をぬけるようだ。内容は相変わらずの「出会い系」や「欲求不満の女性の紹介」といったもので、先にあげた「個人メール」を装ったものと内容はほとんど変わらない。とにかく、棄てられずにあけてもらうことを狙った工夫で、確実に何%かはひっかかっているということなのかもしれない。ちなみに、詳しい人に聞くと「?」になるのは、判読不能な文字なのだそうである。アラビア文字、あるいは中国の略字等々といったもので、Spamかどうかの判断をさせない工夫としては、なかなかのものだと感心してしまう。

最近、ニュースを伝えるメーリングリストが何種類かはいるようになった。
「ニュースストリート」は「freeMLオフィシャルメールマガジン」で
 ◇トップニュース 【訃報】岡田真澄さん死去 70歳 他
 ◇芸能      マイケル・ジャクソンが都内の児童養護施設を訪問 … 他
 ◇スポーツ    ゴルフ 三菱ダイヤモンドカップ最終日 横尾要がパ… 他
 ◇ビジネス・経済 トヨタ、SUV「ランドクルーザー」を愛知・田原工… 他
といった内容のもので、特にいかがわしいところはないのだが、こんなニュースならわざわざ送ってもらう必要もない。だから、迷惑マークをつけて次回からはゴミ箱に直行にした。

「核はいらない—テヘラン大学で反核学生暴動」という題名のメーリングリストは、聞き慣れない話だったので、全部読んでしまった。ただし、危ないから、どこにもクリックはしなかった。そうすると、ライブドアのサイトに「反核運動かたる スパムメール横行」という記事を見つけた。

「今日、日本は平和と調和の中で生きています。世界の政治に我々の声を伝えることにより、過去のひどい事件を繰り返さないよう防ぐのは、我々のいまの権利と義務です」という文面で始まり、反核運動への賛同を求める内容だ。メールはHTML形式で配信されており、メールの最後には「全世界の請願書の全文はこちらで読めます。あなたのサインもお残しください」と、別サイトに移動するように促される。
促されるがままに、サイトに移動してみた。そうすると、意味不明のウィンドウが何度も立ち上がり、しまいにはブラウザがフリーズしてしまった。だが、それに懲りず、パソコンの設定を変えて、もう一度アクセスしてみた。
そうすると、ブッシュ大統領を始めとする各国首脳への嘆願書が英文で掲載されており、賛同者の中には、秋葉忠利・広島市長の名前もある。だが、その他にはこれといった内容はなく、自分の連絡先を記入する欄が設けられているだけだ。サイトを設置したのが何者なのかも分からない。
発信元は個人情報などを盗み取ろうとするサイトのようだ。つまり、うっかり署名をするとそれが迷惑メールの発信元などに使われてしまい、自分のメール・アドレスがブラック・リストに載ってしまったりする。そう言えば、ぼくのところには、自分が差出人で同時に受取人でもある変なメールがとどいたことがある。メールのアドレスを公開している人は、署名などしなくても悪用される危険性があるわけで、これは大量に受け取って不愉快、だけではすまない問題になりかねない。「悪質メールお断り」などといった抗議のメールが届いたら、何ともやっかいな話で、そうならないことを祈るばかりである。