2014年1月27日月曜日

都知事選に期待?

・猪瀬前知事の辞職によって、政治が動き始めた。これで安倍政権の暴走に歯止めがかかるかもしれない。そんな希望が生まれてきた。ここは何としても、選挙を盛り上げて、できれば、脱原発を強く掲げる候補者に勝って欲しいと思う。

・脱原発を全面に掲げる候補者は二人いる。前回の知事選に出馬した弁護士の宇都宮健二と総理大臣経験者の細川護煕だ。宇都宮候補は真っ先に手を挙げて、前回とほぼ同じ政策を掲げているようだ。サラ金問題などで被害者側に立った地道な活動をしてきた人で、人間的にも行動力から言っても、知事として適任だと思う。ただし、前回の選挙では大差で負けているから、今回も勝つのは難しいかもしれない。

・一方細川の出馬の噂を聞いたときには唐突な気がした。政界から遠のいて、絵を描いたり陶芸をしたりして、悠々自適な生活をしている。何と言っても高齢で76歳になる人に知事の仕事が勤まるのだろうかと疑問を感じた。ただし、細川を担ぎ出したのは小泉元総理で、彼はしばらく前から原発の怖さを訴えていたから、二人がタッグを組んで本気で戦えば、勝てるかもしれない。そんな印象を持った。

・危機感を持った自民党はさっそく、原発問題は都知事選になじまないとか、佐川急便からの借金問題を蒸し返したりして、躍起になっている。世論調査では自公が推薦する桝添候補が圧倒的にリードしているというニュースもある。脱原発を支持する人たちの中には、細川に一本化をすべきだと動いた人もいたようだが、うまくいかなかった。選挙戦に突入してからだって、その可能性が消えたわけではないが、少なくとも、お互いの中傷合戦だけはして欲しくないと思う。

・細川候補の演説を聞いて、まるで大学の講義のようだと思った。静かで、考えながら、訥々と話す。対照的に応援弁士の小泉は時に絶叫し、派手な身振り手振りで人を引きつける。小泉が候補になった方がメディアも注目して確実に票が集まるだろう。しかし、僕は細川の演説に、日本の政治家にはほとんど伺うことができない政治哲学を聞いた。現実をしっかり見据えた上での将来に向けた理想やビジョンがある。そのことに感心した。

・細川候補は「脱原発」を第一に掲げる。それを「ワン・イッシュー」だと批判する声がある。東京都にはもっとさまざまな問題があるから、脱原発だけでは知事の公約にはならないというのだが、彼にとって「脱原発」は、掲げる政策の出発点にあるもので、そこから、脱原発後の経済や社会の仕組みを考えるという発想だ。それは、100年後には人口が半減すると予測されている日本の将来像を、それに沿ったものに組み変えようという提案である。

・経済発展や物質的な豊かさをさらに求めるのではなく、経済や生活の質を重視する。そんな政策を本気になって訴えて立候補しているところに、僕は彼の本気さを感じ取った。それは、冷静に考えれば至極当たり前な考えだと言える。男の平均寿命に達しようかという彼が、50年後、100年後、あるいはもっと先を見据えた社会のあり方、そして個々人の生き方や生活の仕方といった「ライフスタイル」の変革の提案を政治の方針として掲げているのである。

・もっとも、そんな主張は悠々自適に暮らしてきた趣味人の考える絵空事だと思われているのかもしれない。しかし、景気をよくする、社会保障を充実させるといった口先だけの、目先の公約こそが、絵に描いた餅であることを、もういい加減に気づいて欲しいものだと思う。今日本の政治に必要なものは哲学と倫理を置いてほかにはない。それは、自分の生き方や生活の仕方に関わるものでもあると同時に、グローバルな問題にも関係することでもある。

・さて、こんな提案を都民はどれほど本気になって受け止めるのだろうか。

2014年1月20日月曜日

今年の卒論(2013年度)

 

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・今年の卒論集のタイトルは「学級崩壊」です。4年生はわずか6人でしたが、ゼミらしいゼミはほとんどできませんでした。数が少なかったことやまとまりに欠けたのは、学部長をやったために、このゼミが2年生からではなく、3年生から始まったことにあります。留年生が3人でそのうちの一人は12年生でした。他の3人も授業をサボっていて2年次にゼミをとらなかった者、取ったけれども追い出された者などでした。

・それでも3年生の時は毎週出席して、基礎の基礎からやりましたが、熱心さに欠けるのはいかんともしがたい感じで、学生同士の関係も少しも近くならないままに1年が過ぎてしまいました。こんな経験は、長い教員生活の中で初めてのことでした。正直言ってうんざりもしましたし、今年こそ、卒論集はやめとこうと思いましたが、何とか全員が論文を書いたので、やっぱり出すことにしました。

・来年は一転して16名という大人数です。おもしろい論文が生まれることを期待したいものです。

1.カフェの昔と今‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥栗原 晴子
2.女性誌『CanCam』の実態‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥田中涼子
3.~振り込め詐欺~‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥熊谷友佑
4.沖縄戦でのひめゆり学徒隊について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥後藤駿一
5.ザスパクサツ群馬と群馬県のつながり‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥高橋和希
6.若者に広がるうつ病の真実‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥佐藤雄哉

2014年1月13日月曜日

アムネスティ『Human Rights Concerts 1986-1998』

 

amnesty.jpg・ロック音楽とアムネスティの関係にはずいぶん長い歴史がある。その活動の記録が何種類ものCDやDVDになって発売された。収録されているのは1986年から1998年までのものである。僕はその中の一つを買ったが、若いスプリングスティーンやスティング、ルー・リード、ジャクソン・ブラウン、シニード・オコーナー、ジョニ・ミッチェル、アラニス・モリセット、トレーシー・チャップマン、そしてU2などの元気のいい歌を聴いて、20年、30年前の音楽状況を思い出してしまった。

アムネスティは軍事政権下のポルトガルで逮捕され、7年間も投獄された二人の学生を支援する目的で1961年に結成された。「アムネスティ」には「恩赦」の意味があり、国際法に則って死刑の廃止、人権擁護、難民救済、良心の囚人の支援などの活動をしてきた。現在ではその活動はさらに広範囲になり、女性の権利、子どもの権利、難民と移民の権利、テロとの戦いにおける人権侵害、そして企業の社会的責任などに及んでいる。1977年にはノーベル平和賞、78年に国連人権章を受賞した。

・アムネスティ主催した"Human Rights Concerts"は1986年にアメリカの6都市で開催された。その後88年には世界中を回るツアーに発展し、日本でも東京ドームで公演が行われ、1990年、そして1998年と続けられた。今回発売されたCDやDVDは、86年のニュージャージー、88年のブエノスアイレス、90年のサンチアゴ、98年のパリの単独のものと、その中からピック・アップされたものである。当然ながら、この売り上げはアムネスティの活動資金に使われる。

journal2-126-1.jpg・以前にこのコラムでも取り上げたことがあるが、アムネスティの50周年を記念してボブ・ディランのトリビュート・アルバムが出された。『自由の鐘』(Chimes of Freedom)と題された4枚組のアルバムで、80組のミュージシャン達がディランの曲をカバーしていた。今回のCDにはディラン自身は登場しない。このコンサートにはまったく出なかったのかもしれないが、アンコールでみんなが歌うのは「自由の鐘」であり、また「我、釈放さるべき」(I Shall be Releasd)だった。どちらにしても、アムネスティのテーマ・ソングとしてはぴったりすぎるぐらいの歌だから、彼がいなくても、最後はこの曲以外にはないのだろうと思う。

・そのディランが3月末から日本でツアーをやるようだ。見に行きたい気もするが、スタンディングのZeppだから迷っている。コンサートは東京で6回、札幌で2回、名古屋で3回、そして大阪で3回行われる。73歳になったが、ディランはけっして過去の人ではなく、12年に新しいアルバムを出している。今世紀に入ってから出したアルバムには"Love & Theft"(2001)、"Modern Times"(2006)、"Together through Life"(2009)、"Christmas in the Heart"(2009)があり、そのほかに、伝記映画の "I'm not There"やドキュメントの "No Direction Home"、あるいはいくつもの海賊版シリーズが出されてきた。だから同世代ばかりではなく、若い人たちにも多くのファンがいるのだろうと思う。

・アムネスティのコンサートに登場したミュージシャンの中でルー・リードは昨年死んでしまったが、スティングやスプリングスティーンは、最近新しいアルバムを出している。古い歌も懐かしくていいけど、新しい歌も聴きたい。このアルバムに登場するミュージシャン全員に対する思いである。

2014年1月6日月曜日

正月休みに読んだ本

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』文藝春秋
若杉冽『原発ホワイトアウト』講談社
輪島裕介『創られた「日本の心」神話』光文社新書

haruki4.jpg・クリスマスから正月にかけて、何冊かの本を読んだ。今まで気にはなっていたけど後回しにしていたものだ。その一番は村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。
・ストーリーとしてはよくできていると思う。けれども、60代の半ばになった村上春樹がなぜ、30代の男の自分探しの巡礼の旅を書いたのかがぴんとこなかった。もちろん、彼の小説の主人公はこれまでもずっと10代から20代の若者だったから、むしろ少しだけ年長になったと言うことができるかもしれない。ただし、前作の『1Q84』や『ねじ巻き鳥』、あるいは『海辺のカフカ』と違って、『ノルウェイの森』の焼き直しのような感じがしたから、物語に引き込まれることも、主人公に同一化することもなかった。

・そう思った原因は、ポール・オースターの最近の小説を夏に読んで、自分と同じ歳の男を主人公にして、老いに伴う「消失感」をテーマにしていた点に共感したことにある。アイデンティティを模索する、あるいは確立させないままにするといった話ではなく、アイデンティティの荷をおろす物語。高齢者と言われる歳になったのだから、村上春樹も老人を主人公にした小説を書くべきだ。同世代の読者として、そんな不満を持った。

whiteout.jpg・『原発ホワイトアウト』は霞ヶ関で働く現役の官僚が書いたもののようだ。自民党が政権を奪い返して、原発政策が再稼働に大きく舵を切った。福島原発事故の現状を矮小化して原発の存続を画策する政権と経産省の官僚の動きやメディア操作の仕方、そして警察や検察の操り方がうんざりするほど詳細に描かれている。おそらく実際に、そんなことが行われているのだろうと思いながら読んだ。
・で、その結果が、新潟の柏崎原発のメルダウンとなる。原因は送電線の爆破と強い寒波の襲来によるのだが、反原発のデモを力によってねじ伏せ、知事を汚職の疑いで逮捕して、柏崎原発の再稼働を強行した報いでもあった。事故が起きたのは12月28日で、メルトダウンはこの正月中に進行した。まさにリアルタイムで読んだわけで、その意味でもおもしろかった。

・福島原発事故は「アンダー・コントロール」されているなどと言った嘘を世界に向けて公言し、原発の再稼働を政策に盛り込もうとする。その内実を暴露したこの本は、ずいぶん話題になったが、もう話題にされることもない。この本のように、もう一回原発事故が起こらないと、本気になって反省して方針展開することはないのかもしれない。最近の情勢を見ているとそんな気持ちになるが、この本の最後では、とてつもない事故に発展する危険性のなかでおろおろしながらもなお、原発の存続を考える政治家や官僚のつぶやきが描写されている。

enka.jpg・『創られた「日本の心」神話』は演歌に代表される日本の流行歌が、伝統的なものなどではなく、海外から輸入されたポピュラー音楽との融合で出来上がった「創られた伝統」であることを解き明かしている。それはちょうど「柔道」が、それ以前にあった柔術などをもとに、西欧のスポーツと合体させて「伝統」と称したことと、奇妙なほどに符合する。
・演歌は戦後に形作られた音楽である。ブルースやジャズ、そしてクラシック音楽やロックにいたるあらゆる要素を採り入れて、日本人の心の歌として流行らせてきた。この本を読むとその過程が、あの歌手、あの作詞家、作曲家によるこの歌と、事細かに紹介され分析されている。

・演歌は「和洋折衷」「和魂洋才」の産物だが、それこそが「日本人の心」なのだと言える。つまり、外からどれほど異質なものが入りこんでも、それを自分の口に合うよう味つけを変えてしまう。その意味では、ニュー・ミュージックだろうがJ・ポップだろうが、日本人は何でも「演歌」にしてしまうと言ってしまってもいいかもしれない。

2014年1月2日木曜日

厳冬の時代へ

 

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この冬はいつになく寒い日が続きます
しかし、寒々しいのは天気よりは、政治や社会の情勢でしょう
安倍自民党の暴走は、時間を逆行して
戦前の時代にまっしぐらのように思えます
新年に際して、とてもおめでとうなどと言えない時代になりました

もっとも、そう感じない人たちが多いのも事実です
安倍内閣の支持率は「特定秘密保護法」の強行採決で下がりましたが
それも一時的で、すぐに回復したと言われています
本当にそうでしょうか

マスメディアが信用できないことは3.11以降、自明のことですが
最近の、特にNHKの報道姿勢には、世論の操作という意図があからさまです
天皇陛下が誕生日に際しておこなった「平和憲法の大切さ」についての発言を
NHKはカットしてしまいました
反対に、安倍の靖国参拝は突然だったにもかかわらず、長々と報じました
こんなあからさまな情報操作が、平然と行われているのです

4月には消費税があがります
増税の理由は、国の財政の改善と社会保険制度の充実だったはすですが
国の予算は借金上積みのばらまきの復活ですし
社会保険は充実どころか削減されるものばかりです

財政の破綻、民主主義の崩壊、放射能による汚染
そして近隣諸国との緊張関係等々
一触即発の危うい状況が現実味を帯びてきています
日本政府はアメポチと言われるほどにアメリカの言うなりですが
安倍の言動を、アメリカは「失望」と批判しました
まるで、買い主の言うことを聞かずに吠えまくる「バカ犬」扱いです

日本は厳冬の時代に向かって加速するばかりです
景気回復を唱えるアベノミクスや東京オリンピックの開催など
暖かくて明るいイメージが一方にありますが
それは氷山にぶつかる直前のタイタニック号の船内のようにも思えます
その豪華客船の船底には、飢饉を逃れてアメリカに向かう
多くのアイルランド難民の人たちがいました

冬はこれから厳しくなります
厳冬の時代には
春ははるかかなたに遠ざかるばかりです