・サンフランシスコは18年ぶりだ。ただし今回は、友人を訪ねてオークランドに滞在した。アラメダにあるボートハウスで、当たり前だが船上だからいつでも揺れている。大きな船が通ると揺れは激しくなるから船酔いを心配したが、何とか大丈夫だった。家の窓からはヨットやカヌー、それにカヤックなどが見える。なんと言っても夜景がすばらしい。おもしろいところだと思ったが、こんな環境を家にするのは落ち着かないのではという気にもなった。
・サンフランシスコの AT&Tパークでジャイアンツの試合を見た。相手はシカゴ・カブスで福留が出ていた。ジャイアンツは久しぶりのプレイオフ進出の可能性があって、ウィークデイのデイゲームなのに球場は満員で、ものすごい熱気だった。老若男女が入り交じって、思い思いに楽しく応援をする。そんな雰囲気を久しぶりに満喫した。ゲームも最高の展開で、海に落ちる名物のホームランに満塁ホームラン、七対七のシーソーゲームで九回裏にジャイアンツがサヨナラ勝ちという絵に描いたような結果だった。
・試合開始の前に球場の外で偶然見かけた福留は二本のヒットを打ったが、敵地だから「ファック・ドゥ・ミー」と野次られていた。今年は、日本人選手の成績がそろって悪い。川上はローテーションから外されたし、松井稼頭央は解雇の後でロッキーズのマイナー暮らし。上原と斉藤、それに松坂はケガがちだし、黒田は勝ち星から見放されている。何と言っても心配なのは、期待されて移籍した松井秀喜の不調だろう。イチローだけが今年も何とか200安打に届きそうだが、マリナーズは例によって早々脱落した。
・サンフランシスコで同性同士の入籍が認められたというニュースをテレビで見た。街を歩いてもたしかによく見かけるが、どういうわけか、これ見よがしに仲良さそうに振る舞っているのは男同士ばかりだ。しかし、知人や知人の知人といった人たちの中に同性のカップルがいるから、かなりの割合であるのは確かだろう。球場にも砂浜にも子連れの家族がたくさんいた。テレビでは裁判所前で「家族を守れ」と書いたプラカードを掲げて抗議する人たちを映していたが、いろんな人がいて、それが目に見える形で共存している。サンフランシスコの街には、まだそんなリベラルな雰囲気が感じられた。
・けれどもまた、ホームレスや物乞いをする人の数が多いのも気になった。モントリオールではあまり見かけなかったから、アメリカとカナダの経済状態の違いをあらわしているのかもしれない。成田でカナダとアメリカのドルに両替したときに、カナダドルの方が高くてびっくりした。1ドルが80円台などというのはバブルの頃以来のレートだろう。テレビのコマーシャルも、安い、お得の連呼といったものばかりで、しばらく見ているとうんざりして腹立たしくなるほどだ。
・土日にゴールデンゲート公園でコンサートがあると聞いたので出かけてみた。バートや市電で乗り継いでいくと、若い人ばかりで、これはちょっと違うかなと思ったが、とりあえず会場まで行ってみた。しかし、登場するミュージシャンで知っていたのはザ・ストロークスとエイモス・リーぐらいだったから、聴くのはやめにして、公園を散策し、街を歩き、インド料理を食べて帰った。二日通し券が150ドルと安くはないのに、大勢の若者たちが詰めかけてきていた。持つ者と持たざる者。ロックは明らかに持つ者だけが聴ける音楽になったような気がした。