2011年9月19日月曜日

韓流ドラマ批判よりずっと大事なこと

 ・フジテレビが韓流ドラマばかり放映しているという理由で批判され、お台場でデモまで行われたそうである。地上波を見ないのでわからないが、BSではどのチャンネルでも韓国のドラマをたくさん放映している。僕はほとんど見ないが、番組が多いということは見る人がたくさんいるわけで、それ自体を理由にテレビ局に対してデモをする理由が僕にはよくわからない。批判するのなら、韓流ドラマにかなわない日本のテレビドラマの貧困や、バラエティで埋めるしか脳のない番組編成の方にあって、それはしかも、文化批判として行われるべきもののように思った。

・夏に韓国を旅行して、明らかに韓流ドラマの影響と思われる日本人旅行者を見かけることがあったし、観光地での案内で、「日本でも見られている〜のドラマで登場した」などと、風景や建物などを説明することも多かった。僕はそう言われてもほとんどわからなかったが、それを見たり、体験したりすることを目的に来る日本人旅行者がかなりたくさんいることはよくわかった。

・韓流ドラマの人気やテレビ局の依存体制は、言ってみればそんな程度のことに過ぎない。ただし、お台場でのデモが千人規模の大きなものだったのに、フジテレビはもちろん、他のテレビ局もまったく報道しなかったのは、おかしなことと思った。原発事故以来、テレビや新聞の報道がいかに作為的なものであるかがあからさまになった。しかし、マス・メディアはそのことをあらためるどころか、一層露骨に続けるようになった。その好例は反原発のデモだろう。9.11には新宿で15000人集まって、警察の規制が厳しくて逮捕者も出たようだが、テレビのニュースはほとんど無視で、新聞でも大半がごく小さく扱われたに過ぎなかった。

一方で、政治家の発言に過剰なほどに反応して辞職に追い込むケースが続いている。所属を名乗らずに大臣を罵声する記者の存在にはあきれるが、問題になった大臣の発言の文脈もわからないし、どの記者に対してなのかもわからない。「放射能をつける」は明らかにオフレコで大臣と記者との間のプライベートなやりとりのはずで、そんなことが記事になること自体がおかしな話なのだから、問われるべきは一斉に報道して問題視したメディアの方なのである。

・「死の街」発言も、何が問題なのかよくわからない。どのような文脈の中で出てきたものかがはっきりしなければならないのに、ただ「死」と言ったことが悪いとされている。本当の理由は辞任した大臣が脱原発を推し進めたり、経産省の人事の刷新を考えていたところにある。こんな裏情報に接すると、メディアに対する批判を強め、そのことを理由にテレビ局や新聞社にデモを仕掛けなければいけないという思いを強くしてしまう。

・それにしても、新聞もテレビも、もうどうしようもないほどダメなところに来てしまっている。それは、政治家(政党)、官僚、そして電力業界のひどさと同レベルで、個々の出来事や人間を非難してすむようなものではなく、制度の根幹に原因があることが自明になっている。誰もがどこもが、保身にしか意識が向かなくて、既得権の確保にばかり精を出している。目を向けるべきものは、けっして韓流ドラマなどではなく、この国が陥っている現実そのものなのである。

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