2025年2月10日月曜日

マリアンヌ・フェイスフルについて


この欄では死んだ人を取り上げることが定着してしまったようだ。で、今度はマリアンヌ・フェイスフルである。僕は彼女のライブを大阪で聴いている。1997年のことで、会場はバナナホールだった。その時の感想についてはこの欄でも書いたことがある。(→)

marianne2.jpgマリアンヌは何よりミック・ジャガーの恋人として有名で、デビュー曲はミックの作った「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」だった。オーストリア貴族の血を引く名家の生まれで清純派のイメージだったから、僕はほとんど興味がなかったが、彼女の歌を聴くきっかけになったのは、カナダ人の友達から教えてもらった一枚のCDだった。CDのタイトルは「ブロークン・イングリッシュ」だったと思う。このアルバムは1979年にリリースされているが、僕が知ったのは90年代の初めで、何よりそのしわがれた声におどろいたのだった。声が変わった理由は流産や自殺未遂、アルコールやタバコ、それにドラッグ中毒などで苦しむ時期を過ごしたことによるのだった。

marianne1.jpgその声や歌い方に魅了されて何枚もアルバムを買ったが、ロックというよりはシャンソンのような歌が多かった。好きな曲に「ストレンジ・ウェザー」がある。これはトム・ウェイツが彼女ために作った歌で、同じ曲で二人ともガラガラ声なのに、歌の感じが違っていて、どちらも面白いと思った。マリアンヌの歌はけだるくて、トムのはうら寂しい。
世界中、どこへ行っても見知らぬ者同士はお天気の話だけをする
どこへ行っても、同じ、同じ、同じ
それがはじまりで、それが終わり
見知らぬ者たちが離れると
そこに霧が立ちこめた(Strange Weather)
とは言え、彼女の歌をよく聴いたのは90年代で、2000年代になってからは14年に出た『ロンドンによろしく』しか買っていない。理由は97年に出かけたライブでの印象がものすごく悪かったからだった。その年に出したばかりの『シングス・クルト・ワイル - ワイマールの夜』からの歌だけを1時間ほど歌って終わってしまったのだった。そのサービス精神やる気のなさは、彼女にしてみれば地の果ての場末のホールで歌う阿呆らしさだったのかもしれない。

マリアンヌ・フェイスフルは享年78歳である。僕と二つしか違わないんだと改めて認識した。というわけで、例によって 彼女のCDを引っ張り出して久しぶりに聴いている。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。