1997年9月15日月曜日
『NIXON』オリヴァー・ストーン(監) アンソニー・ホプキンス(主)
1997年9月8日月曜日
Brian Eno "The Drop"
・イーノは車を運転しながら聴くにかぎる。何年か前に京都の北山に紅葉を見に出かけた。空が真っ青で、山が緑と黄色と赤。その鮮やかなコントラストに見とれながら山道を運転している時に、イーノの『ミュージック・フォー・フィルムズ』をかけた。かけたというよりは、たまたまそのカセットが入っていたのだが、目の前の風景にぴったりあって、ぞくっとしたことを覚えている。それからは、どこかへドライブするときにはイーノのアルバムを必ず何枚か持っていくようになった。
・ブライアン・イーノの出発点は『ロキシー・ミュージック』のキーボード奏者である。だからプログレッシブなロック・ミュージシャンという一面を持つが、同時に「アンビエント」と呼ばれる新しいジャンル(環境音楽)を代表する人という側面もある。あるいは、さまざまなミュージシャンとの共作も多い。たとえば、デビッド・ボーイ、デビッド・バーン(トーキング・ヘッズ)、ジョン・ケイル(ベルベット・アンダーグラウンド)、ロバート・フィリップ(キング・クリムゾン)、そしてU2.........。もちろん、どれもなかなかいい。
・イーノは自らをミュージシャンではなくてエンジニアと呼ぶ。彼は楽譜が読めないし、楽器を演奏することはしても、音楽作りの大半は時間もエネルギーもスタジオでのミキシングに費やすからである。ロックに限らず現代の音楽は、単に楽器だけで作り出されるものではない。というよりは、音は機械的な処理をすればどのようにでも変化させることが可能だ。その音をモザイクやコラージュのように組み立てて作る音楽。イーノの作り出すサウンドは一言でいえばそのようなものである。
・『ブライアン・イーノ』(水声社)を書いたエリック・タムはイーノのアンビエントを「音の水彩画」と言っている。とてもうまい表現だと思う。ただし、彼の音は最初に書いたように、現実の風景の中で聴いた方がより印象的になる。経験的な感覚から言えば、イーノの音楽には現実の風景を水彩画に変える力があるような気がする。まるで絵のような景色、と言うよりは、比喩ではなく、現実が絵そのものになるのである。
・もちろん、彼の作品のどれもが紅葉にあうというわけではない。硬質の感じの音は、街中の渋滞にぴったりという場合もあるし、何も見えない高速道路をすっ飛ばしているときにちょうどいいサウンドというのもある。けれども、彼の作る音は、基本的にはどんな風景も拒絶しない。つまり基本的には、いつどこで聴いていてもさほど違和感は感じない。これは、映画のサウンドトラックが場面やストーリーの展開、あるいは登場人物の心理描写を補強するかたちで使われるのとは、ちょっと違う意味あいがあるように感じられる。
・で、新作の『The
Drop』だが、なかなかいい。ライナー・ノートによれば、このアルバムはタイトルが何度も変更になったそうである。「Outsider
Jazz」→「Swanky」→「Today on Earth」→「This Hup!」→「Hup」→「Neo」→「Drop」→「The
Drop」。つまり、イーノの作る音楽にはタイトルなどはいらないということなのだと思う。実際ぼくは「The
Drop」というタイトルに近づけてこのサウンドを聴いているわけではない。やっぱり車で聴くことが多いから、音によってイメージされる水彩画は、そのときどきの現実の風景である場合が多い。彼の作る音はちょうど水のように、透明で臭いもなく、それでいていつどこにもなじんでしまう。けれども、決してイージー・リスニングではない。
1997年9月3日水曜日
高校野球について
・今年の夏一番時間をつぶしたのは、何といっても野球だろう。メジャー・リーグの野茂の試合はずっと欠かさず見てきたが、7月からは伊良部が加わった。ドジャーズもヤンキースもプレイ・オフに出場可能な位置にいるから、二人の登板以外の試合結果も気にかかる。ヤクルト・ファンだから、日本の野球も気にはなる。特に横浜が急追しはじめた8月は、こちらの試合もついつい見ることになった。それに甲子園。今年は京都の代表校が平安で、ピッチャーがNo.1の川口だったから、とうとう決勝戦までつきあってしまった。こんなわけで、日によっては、朝はメジャーリーグ、昼は高校野球、そして夜がプロ野球なんていう日が続く夏休みになった。もちろん、これは過去形の話ではなく、現在進行形である。
・高校生のぼくの子どもにはあきれられてしまったが、彼は野球部の練習に一日も休まず行って、メジャー・リーグも甲子園も、プロ野球もほとんど見ることはなかった。朝早くから出ていって、夜暗くなってから帰ってくる。顔の日焼けは黒光りという状態で、頬もげっそりこけてしまった。どうせ、地区予選で初戦敗退だったくせに、何もこのクソ暑い時期に一日中外で練習しなくたっていいものを、などと皮肉を言いつつ、ぼくはカウチポテトでテレビの前に寝転がってばかりいた。もちろん、ひと夏、がんばり続けた子どもの努力には感心したし、ぼくのぐうたらな生活にはちょっぴり罪悪感を感じないでもなかったが、それでも、高校野球やプロ野球には、言いたいことをいくつか感じた。
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・ 今年のエンジェルスは出だしから快調だった。昨年ほどというわけには行かないが、大谷もそれなりに投げ、また打った。それが5月の後半からおかしくなり14連敗ということになった。それまで機能していた勝ちパターンが崩れ、勝っていても逆転される、点を取ればそれ以上に取られる、投手が...