1998年5月13日水曜日

ゼミから生まれた二つの成果


「メディア文化研究報告書」 中京大学加藤ゼミ
『大学生の見たメディアのアントレプレナ』 東京経済大学田村ゼミ(NTT出版)


ぼくはゼミの学生の卒論を毎年、文集にしている。おもしろい年もあれば、面倒なときもある。学生たちも、楽しがる学生のいる年もあれば、渋々という感じの学生ばかりの時もある。つづけるのは簡単ではないが、学生たちのしたことが形になって残るのは、意味のあることだと思ってやめないでいる。


もちろん、形にして残すのは卒論集に限らない。ゼミで共同研究などをして、その結果を印刷物にしたりすることもできるだろう。けれども、興味関心がバラバラな学生たちに共通のテーマを与えることは難しい。で、ぼくは今まで、共通のテーマで何か持続して調べたり考えたりしたということはなかった。

 最近、つづけてゼミの研究成果をいただいた。一つは中京大学社会学部の加藤ゼミナールが発行した「メディア文化研究報告書」。もう一つは東京経済大学の田村ゼミが出した『大学生の見たメディアのアントレプレナ』。後者はNTT出版で発行され市販されている。どちらも、そのできの良さに感心してしまった。

 「メディア文化研究報告書」は電話をテーマにしている。「若者はなぜ電話をするのか」という副題のとおり、内容は電話好きの若者という最近の傾向について、あるいは、電話が作り出す独特の世界について、イタズラ電話や、テレクラについて、さらにはポケベルなど、さまざまな面を分担して調査し、また分析している。詳細についてはぜひ直接問い合わせてほしいが、一つのゼミがこれだけの成果を上げられるというのは、正直驚きである。電話研究は最近過剰なほどに出回っているが、ぼくは、そのような専門家たちの研究に少しも引けを取っていないと思った。


『大学生の見たメディアのアントレプレナ』は主に東京周辺で発行されている『タウン誌』の発行人を直接訪ねてインタビューをしたものである。これはゼミの先生である田村紀雄さんの得意の分野であり、また得意の取材方法だが、学生たちはそのノウハウを実際の体験をもとにしっかり習得してしまっている。


最近の学生は本を読まない、勉強しない、まとまりがないとよく批判される。実際ぼくもつくづくそう思うことが多い。けれども、このような成果を手にすると、やり方次第、動機づけの仕方によって学生たちは意外な力を発揮するものだとつくづく感じさせられてしまう。

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