1998年9月9日水曜日

スポーツとメディアについての外国文献


・井上俊さんと亀山佳明さんが編者になって『スポーツ文化を学ぶ人のために』という本を世界思想社から出版する計画を立てた。で、ぼくのところに、「スポーツとメディア」というお題目がまわってきた。執筆者は日本スポーツ社会学会の会員が中心で、ぼくも所属しているのだが、実は今まで一本もスポーツ論を書いたことがない。編集委員をやったりして多少申し訳ない気もあったから引き受けたが、書くあてがあるわけではなかった。

・話は1年前に来て、締め切りが夏休み明け。最近一番関心をもっているメジャー・リーグのことでも書こうと考えて、夏休みに入ってから文献を探しはじめた。ところが役に立ちそうな本は日本語ではほとんどない。あわてて研究室の本棚を探し、大学の図書館で検索し、あるいはAmazon comで注文し、井上さんからも1冊お借りして読み始めた。そうしたら、今年の夏は蒸し暑い。じっと寝転がっていても、体中から汗が噴き出してくる。とても本など読む状態じゃなかったが、1ケ月で一応目を通しておかなければならない。そんなわけで、今年の夏休みは、ぼくにとってはちょっとつらい日々になった。などと、ついつい愚痴っぽくなる前置きはともかくとして、読んだ本の紹介をしよう。

・おもしろかったのは次の2冊。どちらも、第二次大戦後に急変するアメリカのプロ・スポーツの歴史を内容にしている。最初はラジオ、そしてテレビ、そこに人種の問題とお金の話が絡まってくる。それらによってスポーツがいかに変わったか。読んでいて「へー」と思うことの連続だった。

*Benjamin G.Reader, "In Its Own Game ; How Television has Transformed Sports", Free Press, 1984
*Randy Roberts and James Olson "Winning is the only thing; Sports in America since 1945" The John Hopkins U.P. 1989 あと、アメリカにおける人種とスポーツをテーマにしたもの
*Richrd Lapchick,"Five minutes to midnight; Race and sport in the 1990s, Madison Books, 1991.

・大金が動くアメリカのカレッジ・スポーツ、特にフットボール(NCAA)を批判したもの
*Kenneth L. Shropshire, "Agents of opportunity; Sports agents and corruption in collegiate sports", Univercity of Pennsylvania Press, 1990.

・同じ著者が、サンフランシスコ、オークランド、そしてワシントンDCなどのいくつかの都市を取り上げて、野球やフットボールのチームとその本拠地の関係を扱っている
*Kenneth L. Shropshire, "The sports franchise game; Cities pursuit of sports franchises, events,stadiums, and arena",Univercity of Pennsylvania Press, 1995.

・イギリスのスポーツとメディア、特にテレビとの関係を分析した次の本にはアメリカとはちがうイギリスのお国事情がはっきりあらわれている。
*Garry Whannel, "Fields in Vision ; Television Sport and cultural Transformation", Routledge, 1992

・ぼくはここ数年、ロック音楽を材料に20世紀の文化的な変容を調べてきたが、スポーツについての文献を読んで、両者の間に多くの類似点があることに気がついた。考えてみれば、どちらもポピュラー文化の大きな柱であることははっきりしているのだが、スポーツについては本気で考えたことがなかったのだとあらためて実感した。

・で、その類似点だが、メディアとの関係が非常に強いこと、成立の基盤に生活の豊かさと余暇(余裕の時間)が必要だったこと、若者という世代の出現、そしてアメリカの黒人の存在などがあげられる。
・原稿はもうほとんどできたのだが、これ以上のことについては、本が出たらぜひ買って読んでほしいと思う。どうぞよろしく。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。