1998年9月2日水曜日

ハイビジョンについて

  • ちょっと前に10年間見てきたテレビの調子がおかしくなった。テレビのない生活は一日でも耐えられない。そんな気分でスーパーのカタログを見ていると、格安のハイビジョン・テレビが目玉商品として載っていた。そろそろハイビジョンもおもしろくなったかもしれない。そんな期待を込めて買うことにした。
  • まず最初に感心したのはワールド・カップ。日本の試合はBSの7チャンネルでも同時放送していたから、珍しがって画面の比較をしながら見た。画像が横長だから、当然、画面に映る範囲は広くなる。画像が鮮明だから、細かなところがわかりやすい。だからだろうか、アップの画面が比較的少ない。ぼくはあまりサッカーに詳しくないが、ボールのまわりに集まる選手の動きや陣形がよくわかって、今までとは違う見方ができた気がした。
  • 同じことは、高校野球でも感じた。今までよりもグラウンドが幅広く見える。だから、バントやダブル・プレーの守備位置がよくわかる。もちろんまだ、実験放送の段階だが、ハイビジョンはスポーツの見方をかなり変えそうだというという感想を持った。
  • テレビが放送され始めた頃は、画面は小さくモノクロだった。だから野球の中継は球を追いきれずに、訳の分からない画像を映し出すことが多かったようだ。テレビカメラも、今とは違って、1台とか2台しかなかったから、アメリカでは、人びとはテレビよりはラジオの中継の方を好んで聞いたそうだ。だから、テレビのスポーツ中継は、まず、1台のカメラで映せて、しかも迫力を感じさせるボクシングとプロレスで人気を集めることになった。そういう肉体のぶつかり合いの印象が強かったせいか、アメリカでは、その次に人気を集めたのは、アメリカン・フットボールだった。
  • 100年の歴史を持つメジャー・リーグ(MLB)が、60年代にスタートしたプロのアメリカン・フットボール(NFL)にあっという間に人気をさらわれて、70年代からすでに斜陽だといわれ続けている。そしてその原因は、何よりテレビによるところが大きい。さらに最近では、やっぱり格闘技的な魅力を強調するバスケット(NBA)がものすごい人気になっている。乱闘でもなければ接触プレーなどない野球は、考えてみればきわめて静かで単調なゲームだが、ひょっとしたらハイビジョンが、そのおもしろさを見つけだしてくれるかもしれない。そんな期待を感じた。
  • ハイビジョンで見られるのは、もちろんスポーツに限らない。たとえば、動植物、あるいは海や山、砂漠や氷河といった自然を描くドキュメント。絵画や彫刻などを詳細に映し出す番組。また衛星から日本列島を生で映し出すといった時間も毎日ある。実験放送のためか、時間をたっぷり使い、ことばよりは映像で見せようとする番組が少なくない。バラエティや歌番組のようにやかましくないから、窓から見える風景のつもりでつけっぱなしにしておくことが多くなった。
  • JR京都駅から関西空港まで「はるか」という特急が走っている。その出発から終点までを映した番組を見た。ぼくは電車に乗ると先頭に座って運転席越しに前方の風景を見ることが好きだったが、ついつい最後まで。見入ってしまった。もう一つ感激したのは、秋田県の大曲で行われた「全国花火選手権」の中継。ぼくの住んでいるところでも、花火は何度か見ることができる。しかしそれは、音のない小さなものだったり、逆に音だけしか聞こえないものだったりして、今ひとつもの足りない。その点、ハイビジョンでの花火見物は、きれいで、迫力も十分だった。もちろん首が疲れることもなかった。
  • テレビが多チャンネル化して、見る番組の選択肢が増え始めた。そしてこの傾向は、近いうちにもっともっと強まっていく。料金を払って見るテレビ番組も、当然増えるわけだが、いったい人は何を見たがっているのかを見極めるのはなかなか難しいだろう。けれども、全国ネットはされないスポーツやイベントの中継や、地道なドキュメント、あるいは、案外見ることのできない日常の風景など、おもしろい素材はいくらでもあるのではないかとも思った。
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    unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。