2001年7月23日月曜日

ムササビが住みついた


・今年の夏は本当に暑い。夏休み前の最後の週、東京は37度の日が続いた。僕はもう車を降りた途端に気分が悪くなり、研究室に着くとすぐに冷房をいれたが、涼しくなるまでの間に、大汗をびっしょりかいてしまった。この時期の温度差10度は体にこたえる。だから、河口湖に帰ると、ほっとする。もうここに住みはじめたら、夏はどこにも出かけたくない。けれども、今年は、河口湖も30度を超える日がつづいている。カミさんは河口湖の ハーブ祭りに共同で店を出した。20日ほどの期間を分担で店番をしたが、連日の好天でテントの中はものすごい暑さになったらしい。
・河口湖駅近くにある川津屋(ここの蒲焼きはおいしい)の85歳になるおばあちゃんが、こんな陽気は生まれて初めてだと言っていたから、たぶん異常なのだろう。僕は2階のロフトを仕事場にしているが、お昼近くになると、蒸し暑くなって、午後にはいられなくなる。森の中だから30度を越えるほどではないが、それでも、こんな暑さは去年も一昨年もめったになかった。
forest9-1.jpeg・だから、仕事は午前中にして、午後は昼寝と決めた。それに夕方からカヤック。日が沈めば、さすがに風は涼しくなって気持ちがいい。確か去年は夜になると寒くて窓を閉めたはずだが、今年は寝室も開け放したままでいる。そんな陽気のせいではないと思うが、一月ほど前からムササビが住みつくようになった。たぶん屋根と壁の小さな隙間からはいって、屋根裏で寝ているのだ。
・ムササビは夜行性で、夜の8時から9時のあいだに出かける。ご帰還は朝の4時過ぎのようだ。「ようだ」というのは、僕は寝ていてほとんど気がつかないからである。しかしこの時間は毎日ほとんど決まっていて、出かけるときも帰ってくるときも、屋根をコトコト走り回る。後は木から木へ飛び移って移動して森を徘徊しているのだ。
forest9-2.jpeg・一昨年の夏、はじめて生活したときには、この家には日本ミツバチがいて、たぶん、巣は屋根裏だった。それが去年にはスズメバチに占領されて、巣でも作られたら困るな、と心配したのだが、今年はハチを見かけなくなったかわりにムササビがやってきた。いかにも森の生活らしい、といえば何となくいい雰囲気だが、屋根に穴でも開けたのではと心配になった。今年は空梅雨で6月中旬からほとんど雨は降っていなかった。夕立でもあって雨漏りでもしたら大変だと、「be born」の宮下さんに電話をした。忙しいようでそのうちにという返事だったが、ここ数日夕立があって、さいわい雨漏りはしなかったから、屋根に穴を開けたりはしていないようだ。
・しかし、図鑑で調べると、巣はくさいと書いてあるから、何とか追いだそうと思っている。昼に隙間をふさぐ工事をすると出られなくなってしまう。だから、たたき起こして追いださなければならない。それではちょっとかわいそうかな、という気もしている。たぶん僕の家にやってきたのは、今までの住みかを追われたためなのである。
・家の周辺では、確実に森の木が少なくなっている。去年の夏は僕の家の庭でも工房を建てるために10数本切った。今年になって、春には隣の林、そして6月の末にはちょっと離れたところで300坪ほどがきれいに伐採されて更地になってしまった。両方とも家を建てるためで、一つはすでに工事が始まっている。ムササビは時期からいって先月末に伐採された森に住んでいたのだろう。安住の木を追われてわが家の屋根裏に逃げ込んだ。そう思うと、追いだすのはちょっと身勝手すぎるかなと考えてしまう。
・ この周辺は別荘地として開発されたところで、できてからもう10数年経っているから庭に植えられた木も成長していて、どの家も森の中にあるという感じになっている。たぶん最初につくったときも、伐採する木は最小限に、というポリシーがあったのだと思う。それにバブルの頃で、とりあえず土地だけと思って購入した人も多かったようだし、そのあとの不景気で、土地は買ったけど家までは建てられなくなってしまったりしたのかもしれない。だからわが家の西側には手つかずの森が広がっていたのだが、そこが変わりはじめたのである。
・もちろん、それを非難するつもりはないし、困ったことだと言える筋合いでもない。森を荒らしているのはおたがいさまなのである。だから、ムササビが住んでくれるのなら、喜んで屋根裏を提供しなければならないところなのだが、はたしてそれでいいのだろうかとも考えてしまう。くさいにおいがしたり、虫がわいたりしたらかえって面倒なことになる。木に巣箱をつくって移動してもらおうかなどとも考えるが、そううまく気にいってくれるかどうかわからない。
・そんなわけで目下思案中なのだが、毎日決まった時間にコトコト歩かれると、「ムサちゃん」などといって話題にしはじめてしまっているから、決断は早くしなければならない。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。