2003年9月15日月曜日

ナチとユダヤの物語

 

・時折、地元に一軒だけある映画館に出かけるが、そこで「戦場のピアニスト」と「めぐりあう時間たち」を見た。どちらもよかったからレビューを書こうと思ったのだが、その機会を逸してそのままにしてしまっていた。
・映画はBSで毎日のように見ているが、映画館で見るとやはり、ちょっと印象が違う。画面も音も大きいし、途中で席を外すこともない。何よりお金を払ってみようと思ったものだから、期待度も大きい。当然、その善し悪しについて考えたくなる。「めぐりあう時間たち」は特に書こうと思ったのだが、その前に原作を読んでからと考えて、時間が過ぎてしまった。もちろん原作もまだ読み終えてはいない。
・「戦場のピアニスト」はロマン・ポランスキーが監督している。好きな監督の一人だから期待して見た。素直な話で彼らしくないなと思ったが、悪くはない。そんな感じだった。ワルシャワの街が占領されると、突然バリケードができて、ユダヤ人が集められる。その街の様子がもつすごさは大きな画面ならばこそだし、連合軍との戦いで廃墟になった街の光景もすごかった。そこで生き延びた一人のピアニスト。それにしてもナチとユダヤをテーマにした物語は尽きることがない。
・夏休みに入ってBSで音楽とナチとユダヤをテーマにした映画を見た。「暗い日曜日」。シャンソンとして有名な曲の題名でもある。映画はその曲の誕生と作者やその友人たちとの数奇な運命を描きだしていた。舞台はハンガリーのブタペストで、登場人物はレストラン「サボー」を経営するユダヤ人のラズロとその恋人兼共同経営者のイロナ、その店に雇われるピアニストのアンドラーシュ、それに常連客のドイツ人のハンスだ。
・レストランはピアノが人気を呼んで繁盛する。ラズロは喜ぶがイロナとアンドラーシュの仲が気にもなる。奇妙な三角関係がはじまる。アンドラーシュがイロナに曲をプレゼントする。それが「暗い日曜日」。店で演奏されるこの曲がさらに評判になって、店はますます繁盛する。ラズロは三人の関係を受けいれることにする。男同士の嫉妬と友情。しかしイロナは二人を同時に愛せると思う。ここに常連客のハンスが加わって、イロナに求愛するが彼女ははっきりと拒絶する。断られたハンスは自殺を図って川に飛びこむが、ラズロに助けられる。
・「暗い日曜日」は曲の良さというだけでなく、聞いた人が死に誘われるといおうことでさらに評判になる。ハンスが川に飛びこんだのも、店でこの曲を聴いた直後だった。曲がレコードになってヨーロッパに広がると、自殺者の数も増えて、それが大きなニュースになって報じられるようになる。店はますます有名になって繁盛する。しかし、ドイツ軍のハンガリー侵攻とユダヤ人狩りもはじまる。ドイツ軍の司令官としてハンスが戻ってくる。彼はイロナへの思いを断ち切れないままで、ラズロとアンドラーシュの抹殺を画策する。ラズロは強制収容所送り、アンドラーシュは自殺………。
・この映画にリアリティをもたせているのは第一に、ユダヤとナチの物語だが、イロナを演じたエリカ・マロジャーンの魅力も大きい。彼女はハンガリーの女優でほとんど知られていないが、マドンナにちょっと感じが似ていて、妖艶さと心の強さをもっている。彼女に夢中になる三人の男たちが、そのたがいの関係のなかでくり広げる心理劇が真に迫っているのは、イロナの魅力があればこそだと思った。
・映画を見てすぐに「暗い日曜日」のサントラ盤を注文した。同時に「暗い日曜日」が入ったCDの検索もしたら、以前に見た「耳に残るは君の歌声」も見つけた。ジョニー・デップがパリに住むロマの集団のリーダーで登場する映画で、やはりナチの侵略とユダヤやロマの弾圧が絡んでいる。ナチはロマ(→)をユダヤ以上に嫌ったのだが、それはユダヤ人の優秀さに対する恐れとは違って、漂泊の民族を軽蔑し忌み嫌ったからだ。
・しかし、この映画に登場するロマは、パリの街を馬に乗って走り去るジョニー・デップに象徴されるように気高くて格好いい。彼はアメリカ・インディアンの血を受け継いでいるが、ロマの役もいい。デップの映画をはじめて見たのはジム・ジャームッシュの「Dead Man」で、その無口で無表情のところが妙に気に入ったのだが、最近は売れすぎて、ちょっと食傷気味だ。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。