2005年1月11日火曜日

詐欺メールにご用心!

 ジャンクメールはじゃまくさいが、害があるというほどのものではなかった。ところが、去年の後半から、いかがわしい、危なそうなものが目につきはじめた。「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」などが話題になって、携帯や固定電話に注意が促されたが、ネットのメールでも結構ある。


一つは相変わらずの「出会い系」や「アダルト」サイトからのものだ。ただし、一見、パーソナルなメールのようにしてやってくる。「ホームページ更新しました」「ご無沙汰してます」「この前は楽しかった!」といったタイトルだと、ついつい開いてしまいがちになる。即削除とならないための工夫で、敵も然る者だが、そんなことでおもしろがってばかりはいられない。


僕のメールには、学生からのレポートや論文の貼付メールがしょっちゅう来る。特に年末から1月にかけては数が多い。それをうっかり削除できないから注意するのだが、中にはタイトルなしで差出人も不明瞭なものが少なくない。とりわけ困ってしまうのが留学生からのもので、海外からのジャンクメールと見分けがつけにくい。だから、それがホットメールだったりすれば、確実に即削除!ということになってしまう。


実は、暮れにやった大学院の集中講義でも、事前に提出を求めたレポートがなかなかそろわなかった。大学院には韓国や中国、台湾、そしてヴェトナムからの留学生がいて、学生の半数以上に達している。学生には大学からアドレスが交付されていて、それを使って出してくれたらほとんど問題はないのだが、自分のパソコンを持たない学生は、どうしてもインターネット・カフェを利用することになる。


届いたレポートには受けとり確認の返事を出すから、それがない学生は、ぼくのところに再送しなければならない。しかし、その問い合わせのメール自体がまた削除されてしまうから、今度は大学院担当の職員さんのメールを経由して提出ということになる。タイトルをきちんと書き(できれば日本語)、差出人が相手にわかるように明確にして、自分のパソコンがなければ、できれば大学内から出す。学生たちにはメールの現状を説明して気をつけるように言うけれども、それですぐ改善されるわけではない。


ところが、そういう無自覚な学生からのメールがある一方で、知人や友人を装ったメールが頻繁にやってくる。あけると「30代の独身女性です。あなたにセックス・フレンドになってほしいと思い、メールを差し上げました」などといった文面が出てくる。会社の社長だったり、裕福な主婦だったりして、お金も提供するなどと書いてある。うっかり返事を出すと、どうなるのか。やったことがないからわからないが、メール当てに金銭の請求書が届いたりするのかもしれない。


「2ch」の詐欺対策のスレッドをみると、届いたメールにあったサイトに接続した途端に「会員の手続」完了、などと表示されたりするものがあるようだ。放っておけばどうということもないものだが、そこで慌てて、「会員などになるつもりはない」とか「入会手続の解約」などを申し出るメールを出すと、まんまと敵の罠にはまってしまうことになる。


「詐欺」はコミュニケーション的にはきわめておもしろいという行為だと思う。「フィクション」を作りあげて、相手には、それが「現実」だと思いこませる行為で、嘘とバレないためには、できるだけ相手をその気にさせたり、パニック状態にする状況を用意しなければならない。「娘さんが交通事故を起こして、示談金をすぐに被害者に払う必要がある」などと不意に言われれば、誰でもドキッとして冷静さを保てなくなってしまう。そこにつけ込んでますます不安を増幅させる。「不倫」の誘いや「Hビデオ」に代表される「欲望」のくすぐりとあわせて、「詐欺」には「欲望」と「不安」の喚起が必須なのである。


こんな「詐欺行為」がたとえば中越地震の被害者にも襲いかかったというニュースがあった。あるいはスマトラ沖地震・津波で家族を失った子どもたちを、騙して売り飛ばす事件も頻発しているようだ。泣きっ面に蜂どころではない、ひどい行為だと思う。「倫理」も「ヒューマニズム」もあったものではない。そんな風潮に「いやーな世の中になった」とうんざりしてしまう。だから余計に、毎日飛びこんでくるジャンクメールには、必要以上に嫌悪感を持ってしまうのかもしれない。


けれどもまた、最近つくづく思うのは、テレビでくりかえし流されるCMも、「欲望」と「不安」の喚起を目的にしていて、しかもそれが大手を振って行われ続けているということだ。特に保険会社のCMはしつこくてひどい。CMが詐欺と思われないのは、単にそれが合法のものとして認められているにすぎないからであって、やっていることはコミュニケーション的には同じことなのである。きっと、あくどい詐欺が横行する現状は、毎日テレビを見て、そんな合法的な詐欺に毎日晒されている状況と深いつながりがある。そんな広告論を書いてみたいのだが、残念ながら忙しくて、いろいろ調べたり、考えたりする余裕が全然ない。

日時:2005年1月11日

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。