・「美しい日本」「強い日本」が安倍首相の持論で、占領軍に押しつけられた憲法を改正し、自衛隊を国防軍にして、真の独立国家にしなければというのである。しかし、押しつけられたものではないことは専門家の間では自明だし、世界中見渡してもこれほどに良くできた憲法は二つとないのだから、どう変えても改悪にしかならないのは火を見るよりも明らかである。第一、押しつけられたというのなら、未だに米軍のやり放題が通ってしまう「地位協定」こそ見直すべきなのに、このことを強く言う政治家は与党には見当たらない。
・円安になりインフレになって得をするのは輸出に頼る大企業だけである。株価が上がって儲かるのは、集めた資金を運用して利益を上げる機関投資家やグローバルに資金を運用するヘッジファンドだけである。富士山が世界文化遺産として認められそうだというニュースが流れると、地元の観光会社の株がストップ高になったそうだ。余り上下しなかった株が半年前の3倍にもなっている。観光客増に対する期待感からだろうが、こんな上がり方をするのはもう、バブルとしか言いようのない事態だろう。
・日銀が大量に発行する円は、国債として国の借金になる。その額がもうすぐ1千兆円を越えるという。この数字は国民一人あたりに換算すると800万円にもなる額で、空恐ろしい気がする。21世紀に入って倍増した借金が「アベノミクス」によってさらに急激に膨らんでいるのである。景気浮揚のカンフル剤は効き目がなければ劇薬として作用してしまう。その危険性を批判する声は、国会からもメディアからもあまり聞こえてこない。
・重要なのは目先のことであって、将来や未来にまで目を向けるのは理想論に過ぎない。こんな論調が今の日本の空気であるようだ。だから原発は再稼働が必要だし、TPPにも参加しなければならないし、原発をトルコやヴェトナム、そしてアラブ諸国にも売り込んでいく必要がある。もう醜悪としか言いようがない政策だが、安倍首相はさらに「主権回復の日」などというグロテスクなアイデアを実行した。それが沖縄にとって「屈辱の日」であることはまるで念頭になかったかのようであった。ちなみに僕は4.28というと「沖縄反戦デー」を思い出す。この日は大きな集会やデモが行われてきたのである。
・陳腐でグロテスクなものをもう一つ。「国民栄誉賞」は王貞治がホームランの世界記録を塗り替えたことを理由に設けられた。この賞は首相が独自に決めることができるもので、これまでスポーツ選手や芸能人が数多く受賞している。選考の基準が曖昧で選考委員会などが常設されているわけではないから、きわめていい加減に、その時々の空気や人気取りの狙いで決められてきた。
・安倍首相は今年すでに、死去した大鵬に授け、さらに長嶋と松井を表彰した。長島についてはなぜ今という理由がわからないし、松井については受賞そのものに疑問符をつけたくなる。特に二人が最近大きな話題になったわけではないし、記録で言うなら長島や松井以上の選手はたくさんいる。とりわけ松井については、メジャー・リーグでの活躍と言うなら、その道を切り開いた野茂や記録を残しているイチローの足下にも及ばない。
・首相の気まぐれかと思っていたら、受賞祝いの会席に読売新聞の渡辺恒夫が同席したというニュースが入ってきた。これぞ醜悪の局地。政府と財界とメディアが結託し、足並みをそろえて進む道の先にあるのは、地獄でしかないように思えてきた。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。