"Another Day Another Time: Celebrating the Music of Llewyn Davis"
The Milk Carton Kids"The Ash & Clay"
・コーエン兄弟の『名もなき男の歌』(Inside Llewyn Davis)は、1961年のニューヨーク・グリニッジヴィレッジで音楽活動をしていた男の一週間を描いた物語である。売れないフォーク・シンガーで彼女に子どもができてしまう。その堕胎の費用を工面したり、預かった猫を逃がしてしまったりと、やっかいなことばかりが続く。仕事を求めてシカゴに行っても、いいことは何もなかった。船乗りというもとの仕事に戻ろうとしたが、免許証は姉に捨てられた。どうしようもない、散々な一週間で、見ている方も憂鬱になった。
・コーエン兄弟の映画で60年代初めのグリニッジ・ヴィレッジが舞台だからと、アマゾンで見たが、ちょっとがっかり。デイヴ・ヴァン・ロンクの自伝をもとにしたにしては、主人公が惨めすぎる。おまけにラストシーンでは、ボブ・ディランとおぼしき若いミュージシャンがステージで歌っていた。まるでニューヨークにおけるフォークシーンの夜明けを暗示するような終わり方だった。
・ネットで調べると案の定、当時を知っているミュージシャンには評判が良くなかったようだ。しかし、この映画を祝ってコンサートが開かれていて、そのライブ盤が出ていた。知っている名前はジョーン・バエズとエルビス・コステロ、そしてパティ・ズミスぐらいで、後は知らないミュージシャンばかりだった。当時の歌もあり、映画の挿入歌もあり、また若いシンガーの歌もありでなかなかおもしろかった。
・60年代のフォーク・シーンを彷彿といった感じだが、アメリカには今でも、フォークソングを歌う若いミュージシャンがたくさんいる。しかも新しいだけでなく、また懐メロみたいでもない。そんなことを再発見するアルバムだった。中にはもっと聞いてみたいと思うミュージシャンもいた。このコンサートはYouTubeでも見ることができる。
・ミルク・カートン・キッズはデュオのバンドで、サイモンとガーファンクルを連想させる。その"The Ash & Clay"は3枚目のアルバムで、生ギターだけの歌が12曲入っている。こんなシンプルなサウンドで演奏する若者が今もいて、それが多くの人に支持されている。原点帰りのリバイバルなのか、それとも、ずっとこのスタイルが続いてきているのか。内容的には、プロテストの要素はなく、内省的なものが多くてジェームズ・テイラーに近いと言えるかもしれない。
・ところでバンド名だが、アメリカではかつて行方不明になった子どもの顔写真を牛乳パックに貼っていたところに由来する。そう言えば確かに、聞いていて「喪失感」を思い起こさせる。なお、彼らのデビューと二作目のアルバムは次のサイトから無料でダウンロードできる。The MIlk Carton Kids
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。