・衆議院選挙を巡ってはドタバタが続いている。政策そっちのけの数あわせにばかり注目するテレビなど見る気もない。しかし、多くの人たちの情報源がテレビであることを思うと、そのはしゃぎようには腹が立つばかりである。「森友・加計」などなかったかのように選挙動向を報じたのでは、選挙はイメージ作りと人気取りに終始してしまう。ワイドショーやバラエティ番組は論外として、ニュース番組だって、変わらない。だから夕飯時に見るテレビでNHKのニュースにチャンネルを合わせることはほとんどなかった。
・「バリバラ」はNHK教育テレビで毎週日曜日の午後7時から30分間放送されている。見始めて2年ほどだが、最近では欠かさずに見る番組になっている。さまざまな障害者が登場してバリアフリーをテーマに訴え、議論し、行動するバラエティ番組である。僕が見る唯一のバラエティ番組だと言っていい。
・この番組のコンセプトは「恋愛、仕事から、スポーツ、アートにいたるまで、日常生活のあらゆるジャンルについて、障害者が “本当に必要な情報” を楽しくお届けする番組。モットーは “No Limits(限界無し)”」である。2012年からから放送されているが、大きな話題になったのは、昨年の日本TV「24時間テレビ」の放送時間に「笑いは地球を救う」というテーマをぶつけて、障害者の感動物語を放送する「24時間テレビ」をお涙ちょうだいの「感動ポルノ」だと批判したことだった。
・障害者を感動的に描く姿勢には、得てして健常者からの視点が強調されがちになる。それは障害者にとってはしばしば、意に反する、不快な描き方として受けとられる。「バリバラ」は「24時間テレビ」に対してそのことを訴える番組をぶつけたのである。その姿勢は今年の「24時間テレビ」に対しても行われていて、この番組があくまで障害者の立場から明るいバラエティとして健常者に訴えるものであることを主張している。
・障害者にとってのバリアは、その障害によって多様に存在する。たとえば公共の場にあるトイレの問題。9月24日と10月1日の2回にわたって、主に多目的トイレについて、その使い勝手を検証していた。目が見えない、手が言うことを聞かない、車いすからトイレへの移動が難しいといった問題に、既存の多目的トイレがどの程度配慮しているかを、何人かの人たちが実際に使って報告したのである。現状は使いにくいものが多いというものだった。
・この番組の面白いのは、そういったことを福祉番組にありがちな真面目すぎるトーンで作っていないことだ。検証したのは全盲の「見えんジャー」と脳性麻痺の「揺れんジャー」で、あわせて「オベンジャース」。この二人がトイレで格闘するさまには、思わず笑ってしまったが、同時に、どれだけ大変なことかがよくわかりもした。あるいは男と女に別れたトイレに戸惑いを感じるLGBTの人たちの気持ちなども、言われなければ気づかないことだった。
・バラエティ番組は、政治や社会の問題を軽く扱って、事の本質を見えなくしてしまうことがよくある。その意味で、大事なことから目をそむけたり、無関心になったりする傾向を広げる役割を果たすことが多い。けれども「バリバラ」は、障害を抱える人たちがもつ多様な困難や問題を、バラエティとして面白く、明るく、しかし切実さを持った訴えを説得力のあるものにしている。裏番組の「ザ!鉄腕!DASH!!」とは大違いなのである。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。