・『ポツンと一軒家』についてはすでに、見かけた人に「おとうさん」「おかあさん」と呼びかけることについての違和感を書いた。今回は内容について感じたことを書こうと思う。
・この番組はお金がかかっていないと思う。何しろ、登場するのは現地に出かけるディレクターとカメラマンなど、数名だけなのである。もちろん、スタジオでコメントをつける所ジョージと林修、それに二人のゲストの出演料はかかるが、同時間帯で人気を二分する「世界の果てまで行ってQ」に比べたら、製作費用は一桁、あるいは二桁も違うかもしれない。うまいところに目をつけたものだと感心する。
・人里離れたところに住むのは、どんな人だろうか。この番組の人気は先ずそこにある。田舎に住む人を紹介する人気番組は、他にも『人生の楽園』などがあって、都会人にとっては憧れの対象なのだと思う。確かに、何かやりたいことがあって、山奥に移り住んだ人もいる。そこで自力で家を作ったり、農作業をしたりする人もいる。しかし、多くは限界集落に残った一軒であることが多いし、すでに誰も住んでいない消滅集落である場合が少なくない。
・しかも、住んでいる人の多くは70代、80代で、時には90歳を超えていたりする。かつては集落にいくつもの家族が住み、学校もあったり、寺や神社、そしてもちろんお墓もあったのだが、今では老人が二人、あるいは一人で生活していたりするのである。それを見ていて思うのは、かつては山奥に住んで、生活していた人が多かったこと、そんな集落が、ほとんど消滅しかかっている現状の再認識である。農業や林業では生活できないから、そこで生まれ育った人の多くは家を離れて別の暮らしをするようになった。そして年老いた人たちも、山を下りてしまった。
・そういった事例を積み重ねていけば、これが大きな社会問題であることがはっきりする。しかしこの番組には、そんな指摘をして、番組の視点をそこに置こうという発想はない。これはあくまで娯楽番組で、おもしろおかしく、時にロマンや怖い面を見せる番組なのである。日本中いたる所に限界集落や消滅集落がある。そんな現状をくり返し見せられれば、そのうち飽きて、視聴率が下がってしまうかもしれない。そうなれば、大きな問題になどならずに、忘れられてしまうに違いない。そして山間部の集落は次々と消滅していくことになる。
・尋ねた人や住んでいる人が「やさしい」などといっている場合ではないのである。しかし、尋ねたり、訪ねた人の多くは、この番組を見ていて、過剰なほどに番組に協力している。テレビだといわれれば、どこまでも親切にする。世間体や評判を気にしてのことだろうか。他方で現状を社会問題として認識し、訴えようなどとは決してしない。日本人の特徴がよく現れた対応の仕方だとつくづく感じてしまった。最近の気候の変化で山が崩れ、川が氾濫して、山道や林道も荒廃している。杉や檜の森も、林業の停滞で荒れ果てている。この番組が教えてくれるのは、何よりそんな、日本の現状だが、番組の出演者はもちろん、登場する現地の人たちからも、そんな声は聞かれない。
・ところで、テレビ朝日は一軒家の住人や、道を尋ねた人、道案内をした人などに、出演料や謝礼を払っているのだろうか。払って当然だと思うが、さてどうだろう。無償だとしたら、それこそ丸儲けの番組だというほかはない。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。