パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』
朝日新聞社編『コロナ後の世界を語る』
大野和基編『コロナ後の世界』
・コロナ禍はもちろん終息してはいない。それどころか、次の冬こそが感染爆発を抑えられるかどうかの正念場だと思う。しかしそれにしては、日本の政府は「Go
to~」とオリンピックにばかり勢力を注いで、感染対策には本腰を入れていないように見える。高をくくっているとしか思えないが、コロナ慣れは多くの人びとにも蔓延しているかのようである。他方で「コロナ後」を予測する新聞記事や書籍も目につくようになった。で、いくつか読んでみた。 ・ヒトゲノム(遺伝子)の4割がウィルス由来だと言う。しかもその多くは何の役に立っているのかわからない。養老は、わからないけれども、組み込まれていることには何らかの理由があるはずだと言う。一方福岡は、ウィルスは高等生物の遺伝子の一部が外に飛び出したものだと考える。それがまた宿主を求めて入り込む。悪さをすることもあるが、親から子へといった垂直だけでない水平方向への遺伝子の伝達に役だっている。「長い時間軸を持って、リスクを受容しつつウィルスとの動的平衡を目指すしかない」というのである。 ・とは言え、やはり明日明後日をどうするかといった問いかけも必要だろう。『サイエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリはウィルス禍を「国際的な連帯か孤立か」「民主主義か独裁か」、そして「経済についての政治判断」の三点を指摘して、重要な岐路に立っていると言う。そして、この本に登場する他の人たちの意見は、この三つの対立や選択をめぐって書かれたものが多い。 ・それでは個人レベルではどうか。リンダ・グラットンの「ロック・ダウンで生まれた新しい働き方」には、在宅勤務の増加や、人生における仕事以外、つまり家庭生活や趣味や遊びに重きを置く傾向が、好ましいものとして指摘されている。当然そうなるだろうと思うが、同時に、リモートでは仕事にならない職種や、コロナ禍で職をなくした人たちとの間に生まれる格差はますます大きくなる。企業にしても個人にしてもコロナはその格差をますます肥大化させてしまう。この二冊を読んで感じたのは、何よりその点だった。 ・そんなところに魅力を感じて『素数たちの孤独』も読んでみた。幼い頃に事故でけがをした少女と、双子の妹を自分のせいで亡くしてしまった少年の恋愛物語だ。それぞれ深い傷をもって成長した二人が、それゆえに引かれ合うが、またそれゆえに傷つけ合って別れてしまう。ちょっとつらい話だったが、最後まで一気に読んだ。なお、この小説はイタリアでストレーガ賞を獲得している。 |
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。