2020年10月5日月曜日

テレビは政権の広報機関になった

 

・菅内閣の支持率が異常に高い。3割しかなかった安倍政権の支持率も、辞めると倍増して6割を超えた。この現象をどう説明するか、多くの識者や評論家の頭を悩ましている。病気で辞めるという同情票だけでは説明がつかないことだからだ。しかし、安倍辞任から菅首相誕生までのメディア、とりわけテレビの放送姿勢を見ていれば、露骨なまでの情報操作があったことがよくわかる。

・菅首相は秋田の農家出身で、東京に出て苦学して政治家になった。2代目3代目が多い政治家の中で、たたき上げでのし上がってきた。それがテレビで繰り返し流されたようだ。そして一気に支持率が上がった。反面で、7年続いた安倍政権を検証することはなく、そこで官房長官を務めた菅の役割や功罪についても、ほとんど話題にしてこなかった。菅を首相にといったテレビ各局の意図はありありで、NHKはもちろん、全テレビ局が政権の広報機関と化してしまったのである。

・安倍政権がやってきた悪は数多い。その中でメディアに対する圧力は露骨ですらあった。民主党政権下で11位だった報道自由度ランキンが、今年は66位まで降下したことをみれば、そのことは明らかだろう。しかし、菅はこんな評価は無視して、さらにメディアに対する圧力を強めようとしている。それはテレビにかぎらず、新聞に対しても同様で、最近では、政権や政治家のスキャンダルについての暴露記事が出るのは、週刊誌のみになっているのである。

・民放局はCMを経済的な基盤にしている。その局とスポンサーの間に入って代理業務をしているのは電通である。当然、番組内容について意見をする立場にある。それはもちろん、スポンサーの声を伝えるためだが、電通は安倍政権と強くて深いつながりを持った会社でもある。国が主催するオリンピックや万博といった巨大イベントはもちろん、最近批判された給付金配布など、国の業務も代行しているし、政権の広報活動や情報操作にも強く関わっていると言われている。

・そんな状態だから、民放局が萎縮し、政権や電通に忖度するのは当たり前だが、民放の弱みはそれだけではない。今、テレビ番組で一番活躍し、重宝がられているのはお笑いタレントだろう。その人たちがバラエティ番組はもちろん、情報・ワイドショーにも登場し、もちろん、CMにも使われている。彼や彼女たちの多くは政権支持の意見を発しているのだが、その所属先は吉本興業が多く、吉本もまた、安倍政権以来、その関係の強さが目立っているのである。

・吉本興業のタレントの多くは、安倍や菅、あるいは大阪維新の応援団である。そして彼や彼女たちがどんな発言をしても、それを理由に番組を降ろされたりはしない。逆に政権に批判的な発言をすれば、番組を降ろされたり、政治に関わるななどと批判を受けてしまう。今は、政治的とは、政権に批判的な姿勢や発言だけに向けられるのである。

・テレビはまた、来年の東京オリンピックが当然開かれるという前提でニュースを流し、話題作りをしている。しかし開催の可能性について、コロナ禍の動向を世界に目を向けて判断したり、ワクチンの開発状況を検討して考えるといった話題は皆無である。何が何でもやるといった大会関係者の発言に忖度してるとしか思えない姿勢である。ここにはもちろん、放送局とつながりのある有力な新聞社がこぞって、オリンピックのスポンサーになっているという理由もある。これまではなかったことだが、これでは、批判などはできるはずもないのである。

・テレビがこれほど政権の意のままになってしまっているのに、その影響力は依然として強いままである。それを自省する姿勢はテレビにはもちろんないし、わずかにある批判の声にも、政権は目をとがらせている。中国や北朝鮮とどこが違うかと言いたくなるような状況である。テレビを使えば、世論などは簡単に、意のままに操れる。そんな驕った態度に腹が立つが、国民は、本当に騙されているのだろうか。あるいは、騙されたふりをしているのだろうか。どちらにしても、放ってはおけないことだと思う。

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