・7月になったら、急にBSの映りが悪くなった。特にNHKがちらちらするし、声もとぎれがちだ。天気が悪いときに出る症状だが、雲一つない日でもそうなる。原因は衛星に向けたアンテナを邪魔するように茂った栗の木だ。森の木は毎年成長する。冬は明るい家の中が、今の季節になると薄暗いというより、真っ暗になる。森の外はまぶしいほどだから、その対照が余計に目立つのだ。枝打ちをした方がいいのだが、大木になった枝は、2階の屋根よりもはるかに高いところにある。梯子を使ってもとても届く高さではない。
・地デジも受信できないから、やっぱり、ケーブル・テレビにしなけれなばならないのか、と諦めかけたが、ものは試しと、木にへばりついているツタを切ってみた。上の写真のように、この森ではどの木にもツタが幹一杯にからみついている。それが森をいっそう緑にし、また薄暗くしているのだが、ひょっとしたら電波も妨害しているのではないか。そんなことをふと思いついた。
・ツタは切ったからといってすぐに枯れるわけではない。しかし葉が枯れて、風や雨で落ち始めると、テレビの映りがよくなった。葉の生い茂った枝にわずかの隙間ができて、そこを電波が通りぬけるようになったのである。もちろん、ちょっとした天気の変化で映りは悪くなるし、風が吹けば画面も揺れる。
・これでしばらくはテレビも見られそうだが、応急処置であることに代わりはない。庭にもう少し光を入れるためにも、伐採を頼もうかと思っている。ソーラーの庭園灯がバッテリー不足でつかないし、朝顔の生育も悪い。第一に、家の中がいつもよりも増してじめじめするようになった。とは言え、森の中はやっぱり涼しい。森の外は30度でも、中に入れば、冷気が心地いい。その環境を壊さずにおくためには、かなり微妙で頻繁な手入れが必要だということになる。自然を心地よく味わうためには自然のままにしておいてはだめなのである。
・「自然」といえばもうひとつ。去年あたりから猿軍団が頻繁に現れるようになった。今年は、サクランボや桑の実が食べ頃の時に来て、枝を揺らし、糞をして帰って行った。近くの畑では、キュウリもトウモロコシもブルーベリーも大きな被害を受けている。毎朝散歩をするパートナーは、その様子を何度も見かけたようだ。もちろん、猿たちは彼女が近づいたからといって逃げるわけではない。あるいは、畑で作業をしている人がいても、お構いなしのようだ。山に近い畑は、もうどうしようもない状態らしい。
・周囲の山には数グループの猿がいて、町ではその動向を把握しているようだ。観光客が来るあたりには餌をやらないようにと書いた看板がいくつもある。猿を見つけて、「かわいい!」なんて嬌声を上げて、袋菓子を与える。野性の生き物を知らないのだから、仕方がないといえばそれまでだが、襲われてから、「ウソー?!」では遅いのである。こんな状態が続けば、必ず猿の駆除という話になる。実際、この数年で、熊はずいぶん撃ち殺された。山に野生の生き物がいなくなれば、自然は自然でなくなってしまう。うまく棲み分けをして、自然らしさを壊さないようにする。それもやっぱり、ものすごく難しいことなのだと、つくづく思う。