・今年も50枚ほどのCDを買った。去年の暮れのこのコラムを読むと、復刻版が多くて、新しいものが少なかったと書いてある。ディランをモデルにした"I'm
not
there"、自分にとって思い出深い曲をカバーしたパティ・スミスの"twelve"。ジョニ・ミッチェルへのトリビュートやジョン・ケールやジェームズ・テイラーのライブ版、それにニール・ヤングの伝説のライブなどなど………。
・それでは今年はどうだったか。これはあくまで個人的なことだが、新しいミュージシャンとの出会いがいくつもあった。レイ・ラモンターニュ、ジェームズ・モリソン、グレイソン・ギャップス、ジェームズ・ブラント。エイモス・リー、さらに、デイブ・メイソン、J.D.サウザーなど、忘れていた人の復活もあって、あたらしいだけでなく、古いアルバムを買ったりもした。
・もうおなじみで、アルバムが出れば買ってしまう人たちが、続々新しいものを出した年でもあった。ボブ・ディランの"Tell Tale Signs"、ブルース・スプリングスティーンの"Magic"、ヴァン・モリソンの"Keep It Simple"、ジャクソン・ブラウンの"Time The Conqueror"、R.E.M.の"Accelerate"、エミルー・ハリスの"All I Intended To Be"、アラニス・モリセットの"Flavors Of Entanglement"、マドンナの"Hard Candy"、シェリル・クロウの"Detours"、一番最近買ったのはデビッド・バーンがブライアン・イーノと共作した"Everything That Happens Will Happen Today"だ。もう、こういった人たちには、聴いてがっかりといった駄作はない。
・比較的若いミュージシャンの新作も多かった。去年出したばかりのトラビスが出した"Ode To J. Smith"とスノウ・パトロールの"A Hundred Million Suns"、それにジェイコブ・ディランがソロで出した"Seeing Things"は力作揃いでどれも聴きごたえがある。対照的に、話題になったコールド・プレイの"Viva La Vida"は、もう結構という感じだった。同じような印象を受けたのはエンヤの"And Winter Came..."。いかにもクリスマスに合わせて出しましたという感じだが、「きよしこの夜」以外には、古いものと区別がつかないほどのマンネリぶりだ。
・CDの売れ行きはさっぱりのようで、とりわけ洋楽はひどいらしい。大学生を見渡しても、洋楽好きはめったにお目にかかれないほどだから、意外な感じは受けないが、ごく一部のミュージシャンのコンサートだけは活況だという。映画も洋画よりは邦画に注目が集まっている。内容が充実しているというなら理解できるが、果たしてどうなのだろうか。良質な小品を上映してきたミニシアターがどこも存続の危機に瀕しているといったニュースも目にした。内向きで、みんなと一緒といった発想の結果だとしたら、文化的な貧困としか言いようがないのかもしれない。ちなみに、僕が今年買った日本人のアルバムは、一枚もない。