Sheryl Crow "Be My Self"
Ryley Walker "Primrose Green"
Jim Kweskin "Penny's Farm"
・シェリル・クロウは1992年にデビューしているから、もう25年になる。そのデビュー・アルバムは鮮烈で、僕はそれ以降に彼女が出したアルバムのほとんどを持っている。しかし、最初の頃のはねっ返りとも言える威勢の良さが薄れていて、最近の彼女については、あまり印象に残るものはなかった。
・新作の"Be Myself"は2013年の"Feels Like Home"以来だから4年ぶりだ。製作スタッフに初期のメンバーを使っていて、もう一度初めに戻るといった思いがあったようだ。そんなインタビュー記事を読んだが、そのことは何より"Be Myself"(私自身であれ)というアルバム・タイトルに現れている。
・昨年のアメリカ大統領選挙以降、アメリカの政治は混乱状態にある。金持ちが金を隠す「タックス・ヘイブン」やひどい格差などといった経済的な問題も多い。そんな話題にストレートに怒り、「電話をしまってローラー・スケートに行け!」といった子どもに向けた忠告のような歌もある。それなりに頑張ったアルバムだと思うが、今ひとつ響いてこない。
・ライリー・ウォーカーは今もっとも注目されているミュージシャンの一人のようだ。日本にも来てライブをやって話題になったから、聴いてみたいと思った。毎年のようにアルバムを出していて、最近の三枚のCD "All Kinds of You" "Primrose Green" "Golden Sings That Have Been Sung"を買った。
・ギターがうまいし、音楽ジャンルを超えて多様なサウンド作りをしているところが評価されているようだ。確かに、曲によっていろいろな人を連想させる。ジェームズ・コバーンだったり、サンタナだったり、ニール・ヤングだったり。レビューを読むと、デヴィッド・クロスビー〔ザ・バーズ〕やジェリー・ガルシア〔グレイトフル・デッド)を彷彿とさせるといったコメントもある。それだけ可能性があるのかもしれないが、器用貧乏に終わらなければいいがという感想も持った。
・ジム・クウェスキンはボブ・ディランと同年齢のフォーク・ミュージシャンだ。60年代からずっと一貫してフォーク・ソングをジャグ・バンドとして歌い演奏し続けてきた。と言っても僕は彼のことを全く知らなかった。"Penny's Farm"はジェフ・マルダーとのコラボレーションである。二人はずっとジャグバンドを一緒にやってきていて、一時的にはマリア・マルダーも参加していたようだ。
・昔ながらの古い歌を、同じ調子で歌い続けている。アメリカにはガスリーの頃から変わらないサウンドがずっと流れている。伝統のない国だからこそ、自分たちの土地から生まれたものを大事にし、折に触れて初心に返る。今回紹介したCDには、そんな点で一貫したところがありそうだ。