・奄美大島は初めてだ。これも初めての静岡空港から飛び立って、鹿児島で乗り継いでやって来た。さっそくレンタカーに乗り島内を巡り始めた。天気はあいにくの雨。この時期は雨が多いのだそうだ。それでも珊瑚礁は青く見える。時季外れか、誰もいない浜辺で海を眺めて過ごした。最初の宿は土盛海岸近くだったが、泊まり客は僕らだけ。地元の料理を並べた奄美御膳を食した。
・ 二日目は田中一村美術館に行った。子どもの頃の作品から晩年まで、多くの作品があって見応えがあった。一村が好んで描いたアダンの実はどこにでもあったが、食べてもおいしくないようだ。大島名物の鶏飯を食べ、名瀬まで移動して一村の終焉の住処を探した。移築されたものだが、質素な暮らしがわかる家だった。極貧の暮らしの中で描いた作品が、今、立派な美術館に陳列されている。そんな対照が印象深かった。
・ 三日目は名瀬から瀬戸内町まで。マングローブの群生地に寄って、ほのほし海岸へ行った。火野正平が自転車で走った道路は、上り下りの連続で、本当に走ったのか疑わしくなった。奄美大島は山がちで、道路は上り下りを繰り返す。下った入り江に小さな集落があるのだが、集落間の交流は山越えよりは海からだったのかも、などと思った。瀬戸内町は魚の養殖が盛んで、クロマグロは日本一だそうだ。そのほかにも鯛や車エビなどがあった。
・ 四日目はフェリーで加計呂麻島へ。すぐに東端の戦跡公園に行き、大戦中の弾薬庫などが残る一帯を歩いた。高台から海が眺められるが、ここで米軍の船や潜水艇を待ち構えていたのだが、その装備はひどく貧弱なものだったようだ。ここから諸鈍デイゴ並木へ。寅さんシリーズがここでロケをしたという。リリー(浅丘ルリ子)が出ていたというが、見た記憶がなかった。その後、また上り下りして西端の実久まで移動した。入り江はコバルトブルーできれいだが、実久は特にきれいだった。その後、島尾敏雄の記念碑と墓に行った。
・ 五日目はまたフェリーに乗って瀬戸内町にもどり、宇検まで。奄美最高峰の湯湾岳(694m)に行ったが、あいにくの雨で何も見えず。マテリアの滝まで山道を走って、宇検に引き返した。有名ではないが、宇検の手前にあったアランガチの滝の方が滝としてはよかった。宿にチェックインした後、黒糖焼酎を造る工場を見学した。サトウキビの果汁や黒糖、そして焼酎を試飲して、気に入ったものを二本買った。宿はコテージで広々として快適だった。焼酎のメーカー直営のようで、さぞ儲かっているんだろうなと思った。よる風雨が強くなる。
・ 六日目は名瀬に戻る。宇検から東岸沿いを北上して奄美野生生物保護センターに寄った。残念ながら生きた動物は見られなかったが、黒ウサギやアカショウビンなどの剥製は見ることができた。生態的には固有種が多い島のようだ。その後、山に入って金作原(きんさくばる)の原生林を目指した。細い山道で、時折対向車もあって大変だったが、最後は未舗装で岩のごつごつした道になった。車を止めるところも少ないので、そのまま別の道で名瀬を目指した。そうすると、どこまで行ってもでこぼこ道で、時折、水たまりもあって緊張しっぱなしの運転をしなければならなかった。ガソリンスタンドで車の汚れを洗ってもらうと、ただでいいという。それでは申し訳ないので、ガソリンを入れることにした。返却する前に近くのスタンドで入れるつもりだったが、対応したのが明るい青年でお礼をしなければと思った。