1997年12月2日火曜日

やっと見つけた!!

  • ホームページを毎週更新していると、たいていの人にはあきれられる。「まー好きなんです。」とか「自己満足の気がありますから」とか応えるようにしているが、本当は読んでくれる人、見てくれる人を捜している。ベル友やメール友がほしいわけではない。差し障りのないおしゃべりをして時間をつぶすのは大嫌いだ。けれども、何か共有できる人との出会いを求めている。
  • で、ホームページを介して、そんな出会いが時折ある。最近来た二人のメールを紹介してみよう。一人は東京の大学の夜間部に在学のNさん。彼女のメールは次のように始まっている。
      「ホームページを拝見しました。やっと見つけた!というのが正直な感想です。12月に卒業論文提出を控えていますが、いまひとつCultural Backgroundに欠けていると悩んでいます。私のテーマは「The Image and Lyrics of Black Sabbath」です。Image、Lyricsとはいっても1970年代前半のロックカルチャーとコマーシャリズムの中でBlack Sabbathのイメージがどのように作り上げられたのかが、私の論文の核にしたいところなのです。」
  • 「やっと見つけた!」の一言に参ってしまった。それに、勤労学生だと言うから、これは、親身になって助けてあげなければいけない。さっそく文献をあげて、いくつかアドバイスもした。すると11月の末に「大体できました」というメールが舞い込んできた。よかった、よかった。翻訳会社で昼間働いていると書いてあったから、卒業後もつづけるのかとゼミの教師のような質問もしたりした。こんな風にホームページを公開してから、他大学の学生からの卒論の相談が時折舞い込んでくるが、ゼミの学生とつきあうのと一緒で不思議と違和感がない。インターネットは「〜大学」などという狭い垣根を簡単に飛び越えてしまう。そんな思いがきわめて自然に実感できる。N さんの卒論ができあがったらぜひ読んで、返事を出したいと思う。

  • もう一つのメールのはじまりは、もっと感激的だ。岐阜のある研究所でプラズマの研究をしているというYさん。
      「先日ふとしたことから渡辺さんのホームページにたどり着き、万感の思いで拝見いたしました。実は、私は中学生の頃から中山ラビさんのファンでした。」
  • このホームページに気をとめさせたのは題名の「珈琲をもう一杯」だった。これはボブ・ディランの曲名"One more cup of coffee"を使ってつけたのだが、ディラン好きにはこれだけで十分なようだ。で、僕のページを読んでいくと「中山容さんを偲ぶ会の報告」に出会ったというわけである。
      「私もラビさんの影響か、ボブ・ディランのファンでもあります。ラビさんが深夜放送でかけてくれた『One More Cup of Coffee』を今でも忘れることはありません。最初に買ったディランのアルバムはDesireでした。10年前ディランが来日した時はコンサートへも行きました。学生時代、いつもこの『コーヒーをもう一杯』や『風に吹かれて』を口ずさみながら、日本中を旅した時のことも思い出されます。私、この20年の間、ずっと、ラビさんにもろもろの感謝の意をお伝えしたく、一度でよいからファンレターを出すことを、諦めながら、それでも、探しておりました。」
  • こんなメールをもらったら、さっそくファン・レターの仲介役をしなければいけない。しかし、それにしても、歌の影響力はすごい、と、今さらながらに感心してしまった。ホームページにはもちろん、こんな歌が人に与えるような影響力はない。できる関係も距離があるようなないような、きわめて曖昧なものである。けれども、ほんのちょっとした手がかりから、経験や思い、あるいは考え方が共有できる人たちがつながりをもつことができる。しかもそれは一度できたら持続させなければいけない、といったものでもない。「一瞬の共感」。そんなおもしろさが、ホームページには確かにあるようだ。
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    unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。