1999年2月17日水曜日

ABCラジオ体験


  • 2月15日にABCラジオの朝の番組「アベクジラ」に生出演した。以前にNHKラジオに出たことがあるが、その時は研究室で録音したから、スタジオで生というのは初めての体験だった。
  • DJの安部さんはプロ野球の実況で独特の浪花節的な味を出して人気のあるアナウンサーだが、立て板に水のように喋る人とうまく話がができるのか、実は非常に不安で、朝家を出るときから緊張していた。
  • 放送は10時20分頃から20分間ほどだから、10時までにABCまでお越しくださいという。放送作家の奥村さんと何度かメールをやりとりして、話しの内容をきめ、原稿もいただいていたのだが、直前の打ち合わせはしなくていいのかと、心配になった。で、遅れてはいけないと早めに出たのだが、放送局に着いたのは約束よりも30分ぐらい早い9時半。

    番組は9時からはじまっていて館内にはその音が流されている。奥村さんとディレクターの魚谷さんの二人が迎えてくれて、控え室でうち合わせというよりは雑談がはじまる。気になったから「番組のスタッフは何人ですか?」と聞くとスタジオ内に今3人、スタッフが5人だという。ぼくの相手をしている閑があるのだろうか、などと心配になったが、考えてみれば、ABCは関西圏をカバーする大きな放送局なのである。そんなことをあれこれ気にするぼくの緊張を和らげるために、二人が音楽のことについて気さくに話しかけてくる。あーこれも大事な仕事の一つだな、などと、初体験のぼくとしては緊張の中にも感心することが多かった。やがて10時になり15分になっても、まだ雑談が続く。ぼくはDJの安部さんとはまだ顔を合わせていない。

    20分過ぎにに一つのコーナーが終わってCMが入る。そこでスタジオ内に入って出演者の方々とあいさつ。お茶が出されたが、ほとんど飲むまもなく放送開始。ぼくは今日、ロックについての話をするために呼ばれているのである。バックにE.プレスリーの「監獄ロック」がかかると、安部さんが中学時代にプレスリーに夢中になったといった話をしはじめた。彼はちょっと前まで解説者の花井悠さんとプロ野球のキャンプの話をしていて、10時過ぎからはニュースにつきあっていたのだが、今度は音楽の話。

    話題はロックンロールとロックはどう違うのかからはじまって、ボブ・ディラン、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、さらにはパンクにレゲエ、そしてラップとロックの歴史と続いて、最後は中国の崔健(ツイ・ジエン)の話。
    正直言って、ぼくには考えて喋っているという余裕はなく、話を向けられたらそれにあまり間合いを置かずに応えるという意識しか自覚できなかった。で、あっという間の20分。ぼくのコーナーが終わっても、もちろん番組は続いている。「お疲れさま」「失礼しました」といった言葉を交わしてスタジオを出ると、放送はもう別の話題で盛り上がっている。これが「ラジオの時間」。
  • ぼくはスタッフの方々にあいさつをして放送局を出た。10時50分。まるで夢の中の出来事のような、現実とも非現実ともつかないような20分間だった。いったい何を喋ったのかと思い出しても、はっきり思い出せない。何とも頼りない実感。しかし、ぼくのラジオ初体験は、とにもかくにも、ひどい結果にならずに終了できた。

    家に帰って録音してもらったテープを聞いてみた。「あのー」が多い。おそらく20分間に50回は言っている。もちろんぼくにはそんな自覚は全くなかった。たぶん講義とか講演会の時でも「あのー」が多いんだろうなと思ったら、急に恥ずかしさに襲われた。教師は人前で喋る商売だから、自分のした話を記録して、その癖やまずいところは自覚的になおした方がいい。そんなことをあらためて思い知らされてしまった。ただ、言うべきことは一応話している。早口だが、そんなに聞きにくくもない。そのあたりは経験というか、歳の功かもしれないと思った。
    事前に何人かの学生や卒業生に出演するとメールを出しておいたのだが、その夜、何通かのメールがやってきた。月曜日の午前中だから、録音を予約して仕事から帰って聞いた人が多かったようだ。そのほかに 車の中で聞いた人、録音に失敗して聞けなかった人、忘れてしまった人、それから無反応の人.......

    ボブ・ディランのサイトを作っている西村さんからは、連絡しなかったにもかかわらず、偶然聞いてましたという返事をもらってうれしくなった。「ロイアル・アルバート・ホールの野次入りRolling Stoneが朝からAM放送で聴けるとは驚きました(しかも仕事場で)。時間は短かったですが、面白く聞かせていただきました。」ラジオに出るのは躊躇したけれど、こんな聞き手がいたことがわかって、出た甲斐があったというものである。
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    unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。