2003年6月23日月曜日

料理とリフォーム

 平日の昼。家にいる時には食後の昼寝と決めている。気持ちがいい。食後には横になる。これがほとんど習慣になっているから、仕事の日は眠い。外食が嫌いな第一の理由だ。だから大学に出校している日も食事は研究室でとることにしている。で、昼休みはやっぱり、ついうとうと………。


平日、家にいるのは火曜と水曜日だが、食後のうとうと時に、ついているテレビはTBSのワイドショー。これもほぼ決まっている。半分寝ながら見ているのは、料理とリフォーム。毎週あまり変わり映えしないが、うつらうつらしながら見るにはちょうどいい。


番組では何人かのリフォーム専門家(すべて女性)が、主婦の悩みを解決するために改造を計画して実行する。実際の作業は旦那さん。うまくリフォームできると、奥さんが戻ってきて、涙を流すほどに感激する。で亭主を見直して感謝、感謝。毎週このパターンだが、和気あいあいとしてわざとらしくはない。


毎週リフォームされる家を見ていて気づくのは、日本の家屋のこまごまとした間取りだ。どんなに小さな家にも床の間があって、これが余計なのだ。他にも押入がうまく使えていない、畳の部屋に絨毯を敷いて洋間にしているなど、生活スタイルの変化にうまくあわせることができないでいる。日本の家屋における最大の欠点は、台所の軽視。狭い、暗い、使いにくい。そこにシステムキッチンや大型冷蔵庫、電子レンジ、それにテーブルまでいれようとするから、それこそごちゃごちゃして収拾がつかなくなってしまう。


だからリフォームのパターンは、畳を取り除いて床張りにする、居間と台所の壁をぶち抜いてLDKにする、押入を壊して部屋を広くしたり、クローゼットにする、襖や障子を外す、といったことになる。収納スペースのためにはホームセンターで売っている組み立て用の白のボードがお決まりだ。それに、すでにあるテーブルやこたつや食器棚などを思いきって改造する。30分ほどの放送時間で見る見る変わっていくから、見ていても、気持ちがいい。時にはお見事!といいたくなるケースもある。


けれどもまた、見ていていつでも思ってしまう。「このぐらいの改造なら、自分でできるんじゃない?」って。何しろ出演する主婦は口を揃えて、「不便でどうしようもなかったから、長年の念願が叶って幸せ!」と言うのである。使いやすく工夫するためには使う人があれこれ考えるのが一番で、何も専門家に頼る必要はない。僕なら自分が使う部屋のデザインを人任せになどしたくない。


そんなふうにぶつぶつ言いつつまた思うこともある。毎回のリフォームにかかる費用は20万から30万円。これで見違えるほど変わるのだが、テレビで放送するからもちろん出費は0。出演する人たちには、何よりそれが魅力なのだ。それに、かかる費用はあくまで材料費であって、リフォームを専門家に頼めば、大工さんの手間賃やデザイン料がかかるから、費用はおそらく100万円を軽く超えてしまうだろう。


この番組を見ていてわかったのは、リフォームはそれほど難しくない、ということ。壁だってちゃちにできているから、壊すのも簡単だという発見。材料も道具も、今では、ホームセンターに行けば豊富に取り揃えられている。いっぺんに大がかりにしなければ、費用だって少しずつで済む。だからこそ、と思ったのだが、残った問題は、いったいどう直すか。そのためのデザインと、手順と、材料の調達をどう考えるかということになる。登場する主婦や旦那たちには、ここがまったくわからない。


同じ番組の別の曜日では、きざな板前さんが家庭に出張して料理を指南している。これもスーパーでの買い物から始まって、包丁の使い方、出汁の取り方、味の付け方、皿への盛りつけ方とていねいに教えている。もちろん登場する主婦は毎日食事を作っているから、基本的なことはほとんどの人ができる。で、問題はというと、やっぱりアイデアとちょっとした工夫、それに手間を厭わないこと。そんなことえらそうに教えてもらわなくたって、当たり前じゃん!と思ってしまうが、出演する主婦には、自分のアイデア、とか工夫といった発想がほとんどない。


自分の生活する空間をどう使いやすく、住みやすくするか。毎日の食事をどうおいしくするか。そんな気があれば、だれだって自分で工夫をしはじめる。そこを面倒くさがる。あるいは考えたくても、時間的にも精神的にも余裕がない。だからこそ、スロー・ライフ、スロー・フードといったことばが流行るのだが、本当は、それは流行にとらわれないところに存在するもののはずで、教えられて、あるいは勧められてできるものではない。もちろん、お金を払って買うものでもないはずである。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。