2009年3月16日月曜日

イラク戦争とは何だったのか?

・NHKのBSが続けて、イラク戦争や9.11をテーマにしたドキュメンタリーを放映した。大半は当事国のアメリカとイギリスが制作したもので、事実を突きとめながら、流れを検証するといった姿勢をとっていた。イラクへの侵攻はサダム・フセインが核兵器や化学兵器、あるいは生物爆弾を隠し持っていて、それが他国に脅威を与えていることが理由だった。結局、そのような兵器は何も見つからず、アメリカがイラクに侵攻するために捏造したものであったことが明らかにされた。

・そのことが明白になると、ブッシュは侵攻の目的を「イラクの民主化」に変更した。かつての日本を例に上げて、イラクも同じように西欧的な民主主義の国にするのだと言った。それはすぐに現実化しはじめるかのように予測されたのだが、イラクの現状は混迷するばかりで、民主化どころか国としての体をなしていないのが現状だ。そのブッシュは、最後にイラクを訪れた時の記者会見で靴を投げつけられ、オバマへの期待に隠れるようにホワイトハウスを離れた。

・何本も見たドキュメンタリーに共通しているのは、9,11以後に示したブッシュの政策のことごとくが失敗であったこと、根拠のない理由によって強引に進められたこと、それを多くのアメリカ人が信用して積極的に支持したことの検証である。もちろん、そんなことはアメリカ人以外には最初からわかっていたことで、ただアメリカだけが自分の主張を強行しただけのことだが、それが今やっと、アメリカ人にもわかって、冷静にふり返る余地が見えるようになったのである。

・自分たちがいいと思ってやったことでも、後からふり返ってその判断の是非を問う、という姿勢は評価できると思う。けれども、外から見れば、間違った判断であることはわかっているのに、そのような意見に聞く耳を持たないという姿勢は、これを反省にして改まるのだろうか。ヴェトナム戦争で負けて、その後遺症に悩まされたたこと、政治的、経済的、そして軍事的に介入してめちゃくちゃにされた国が数知れないことを見れば、これからも同じことを繰りかえすだけだと思わざるをえない。次々とドキュメンタリーを見続けながら思ったのは、そのことだけだった。

chomsky.jpg ・とは言え、アメリカにもずっと、自国の行為を暴挙として批判しつづけた人たちはいる。たとえば、ノーム・チョムスキーだ。彼の『すばらしきアメリカ帝国主義』(集英社)は2005年にアメリカで出版されたインタビュー集だが、9.11直後から、アメリカ政府とそれを熱狂的に支持するアメリカ人を強く批判してきた。彼は「生成文法」で有名な言語学者だが、9.11以降に出したアメリカやメディアを批判した本は数多い。彼は、アメリカのイラク侵略を「国際法に根拠のかけらさえもない予防戦争」だと言う。


つまり、軍事力によって世界を支配しようとするアメリカに挑戦しようとするものがあらわれた場合__それがさし迫っていなくても、あるいは捏造や空想であっても__それが脅威に発展する前に消滅させる権利がアメリカにはあるというのです。

・いくつも見たドキュメンタリーの多くは去年(2008)の後半に作られたものが多かった。それはブッシュが辞めて政権が交代する時期と無関係ではないだろう。で、さまざまに問いなおし検証して、事実を明らかにしようとする。けれども、そこで確かめられることは、外から見れば最初から自明だったことだ。世界中の国や人が反対するのに、自分の考えをごり押しして、それが正当だと主張する。チョムスキーはイランや北朝鮮ではなく、アメリカこそが「ならず者国家」だと言う。あるいは、そんな国にリードされる人類は「絶滅危惧種」だとも。

・アメリカは今、オバマに期待をしているが、チョムスキーは最近のインタビューで、ブッシュと基本的にはほとんど変わらないと切り捨てている。強い国家と大企業が、政治的にも経済的にも社会的にも世界をめちゃくちゃにした。だから、その解決策をまた強い国家や企業に託すべきではない。もっともな意見だと思う。

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