Razia Said"Zebu Nation"
Youssou N'Dour"Egypt"
・アフリカのマダガスカル島は行ってみたいところの一つだ。バオバブの木やキツネザルなど、島独特の動植物があるし、アフリカとはちょっと違う島だからだ。しかし、現状はかなり違っている。そんなことを歌うアルバムを見つけた。教えてくれたのは「インターFM(76.1)」の「バラカン・モーニング」だ。
・ラジア・サイードの"Zebu Nation"はマダガスカル島の環境破壊を告発することをテーマにしたアルバムだ。稲作と牧畜、コーヒー、そしてバニラといった農業の発展で森林が伐採され、土壌の浸食と砂漠化が深刻な環境破壊を招いている。ラジアの歌はアフリカの音楽そのままに明るく軽快に聞こえるが、彼女が伝えるメッセージは切実だ。現地のことばの他に英語とフランス語が混じる歌詞で直接聞き取ることはできないが、ジャケットには収録された曲の内容が、それぞれ説明されている。
・たとえば、"Yoyoyo"は貧困や悲惨、そして部族紛争に苦悩するマダガスカルへの応援歌だし、"Ny
Alantsika"は植物や動物の泣き叫ぶ声に耳を傾けろという訴えだ。そのほか、このアルバムには、焼き畑農法で森がたった1割になったと歌う"Slash
and Burn"や、自然の回復の大切さを訴える"Tsy Tara"、この地に伝わる雨乞いの歌"Lalike"、と太陽と会話をする"Tiako
Ro"、そして、目を覚まして立ち上がれと人びとを鼓舞する"Mifohaza"などが収められている。
・歌の内容を説明するというのは、メッセージをできるだけ遠くに、多くの人に届けたいという気持ちのあらわれで、ジャケットには、このアルバムが、しばらくぶりに帰ったマダガスカルで出会ったミュージシャンと、改めて気づいた故郷の現状のひどさ、そして、母語で歌われた歌がもたらしたインスピレーションの産物であることも書かれている。聴きながら、レゲエというあたらしリズムに乗せて軽快に歌い、ジャマイカの惨状を告発したボブ・マーレーを思い浮かべた。
・アフリカのさまざまな問題を世界に向けて訴えるアフリカ出身のミュージシャンは、もちろん、彼女がはじめてではない。というよりは、注目された人たちは例外なく、優れた音楽性だけではなく、その政治的な主張や明確な立場の表明によっても評価されてきたと言っていい。その代表的存在であるユッスー・ウンドゥールの"Egypt"は、これまで出したアルバムとは違って、エジプト人のミュージシャンをバックにして、イスラム教をテーマにしている。この作品がアフリカで物議を醸したことはNHKのBSで放送されたが、それは、イスラム教が偶像を禁止し、神について語ることも戒めているからだ。つまり、イスラム教やアラーの神については、それが批判でなくても、歌になどしてはいけないとされているのである。
・彼が宗教を歌にしたのはイスラム教に対する誤解をただすという狙いがあったようだ。彼の故郷であるセネガルでは、アラーの神は自分自身の運命と日々の生活を律する唯一の神として信仰されている。それはセネガルのことばで歌われているようだが、どれにも英語の対訳がついている。前記した"Zebu Nation"とあわせて、"Egypt"は歌が何よりメッセージを伝えるアートであることを思い出させてくれる。このコラムで何度も繰りかえしているが、日本人が歌う歌には、こういったメッセージという要素はほとんどない。
・ところで「バラカン・モーニング」だが、月曜日から金曜日の朝7時から10時の放送で、僕は家にいるときはほぼ毎日、そして仕事に出かける日もカー・ラジオで聴いている。カー・ラジオでは、雑音がずいぶん入って聴きにくいことが多いのだが、どういうわけか奇跡的に、我が家ではこの番組が雑音なしに聴けるのだ。毎朝かかる曲には、すでに持っているものが多いし、話題にするミュージシャンにもなじみの人がよく出てくる。イギリス人だが、同年齢で、同じような経験をして、同じような音楽を聴いてきた人で、僕にとっては、自分で選曲しているかのように思うことが少なくない。その分、ipodを聴く時間が減った。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。