2010年5月17日月曜日

地デジという無駄

・我が家は地デジの難視聴地域にある。地デジのアンテナは富士山の中腹にあるが、間にある山が邪魔して電波が届かないのだ。アナログの地上波も弱くて、天気や風向きによって見えたり見えなかったりする。しかし、ふだん見るのはBSが中心だから、放送の停止と言っても、特に困るという気にもならなかった。もちろん、ケーブル・テレビと契約するといった気も全然ない。要するに、どうでもいいのだが、最近、BSのリモコンをいじっていて、見たことのないチャンネルがあることに気がついた。

・画面には「地デジ難視対策衛星放送」と題字されている。そう言えば、ちょっと前に新聞で、地デジの難視聴地域の視聴者のために、BSを使って放送するという記事があったことを思い出した。画面に表示されている総務省のページをチェックすると、難視聴地域の特定はまだ一部しかできていないようで、山梨県はまだ対象外になっていた。しかし対象地域に特定されて、届け出れば、Bキャスカードが送られてくるようだ。つまり、スクランブルをかけて見られなくしてある放送が、カードを使うことによって見えるようになるというわけだ。

・そんな説明を読みながら、何か腑に落ちない奇妙さを感じた。これは難視聴地域にかぎった対策のように思えるが、BSアンテナをつければどこでも受信可能なわけで、それを、わざわざスクランブルをかけて特定地域の人以外には見られないようにしているということだ。つまり、地上波のアナログからデジタルへの移行は、既存のBSやCSの衛星放送を使っても、実用化できたのである。で、関連する記事や意見がないかネットで調べてみた。

・池田信夫の「サイバーリバタリアン」によれば、欧州のデジタル放送は衛星を使っているようだ。日本でもそうしていれば200億円ほどでできたのに、わざわざ新しいネットワークを1兆円の費用と10年の年月をかけて作ろうとしているのだと言う。50倍の出費とは何という無駄遣いとあきれるが、その理由は全国にある既存の地方民放局を守るためにあるようだ。つまり、衛星放送でカバーすれば、放送は全国一律になって、地方局の存在意味はなくなってしまうからというのである。だから当然、難視聴地域用のBS放送も、地域ごとに見えるチャンネルを制限して、わざわざ全部が見えないようにしているのだ。

・ちなみに山梨県には山梨放送テレビとテレビ山梨の2局だけだから、見ることができるのはそのキイ局であるNTVとTBSだけだということになる。僕の家ではUHFのアンテナは立てずに、東京からの電波でアナログの地上波を受信している。映りは悪いがNHKからテレビ東京まで7局見えているのに、デジタル化されたら民放の3局は見られなくなってしまうことになる。いろいろわかってくるにつれて無性に腹が立ってきた。

・衛星放送は全国をカバーするが、多チャンネル化できるのだから、地方の放送局もそれぞれチャンネルを持つことは可能なはずである。それは地域を限定してカバーするわけではないが、内容を充実させて、限定した地域にとって必要不可欠なチャンネルとして、地域の受信者に認識されればいいのである。そうしてもらえる自信はないから、従来通り県域に限定するというのは、新しいメディアの特性を無視した、既得権の行使以外の何ものでもない。

・日本では電波の利用は国によって管理されてきたから、ラジオもテレビもまったくと言っていいほど自由さのない状況で発展してきた。インターネットはそんな管理の及びにくいメディアとして、まるで黒船のように日本にやってきたから、自由度の大きいメディアとして急速に発展した。ラジオやテレビ放送のデジタル化も、インターネットと同様の発展のさせ方ができる可能性を持っていて、アメリカなどでは自由な発想の元にさまざまな放送が実現されている。そんな現状には目を向けずに、既得権第一で進める地デジ化など税金の無駄遣い以外の何ものでもないこ。これもまた、世界では例のない「ガラパゴス的」発想の一つである。

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