2012年12月3日月曜日

テレビと選挙

 ・衆議院選挙と東京都知事選挙が同じ日に行われる。都知事候補に弁護士の宇都宮健児が立候補し、衆議院では「卒原発」というスローガンで反原発を明確にした「(日本)未来の党」が旗揚げをした。自民や維新よりは民主の方がちょっとましと思っていたが、ここに来てかなりおもしろくなってきた。僕は都民ではないから都知事選には投票できないし、衆議院選の選挙区に投票したいと思う候補者はいそうもないが、これから投票日までの間に、大きな流れが生まれそうな気配が感じられて、希望が少しだけ見えてきた。

・で、メディアの対応だが、橋下と石原ばかり追いかけてきたテレビも、ここに来て、「未来の党」の嘉田滋賀県知事に時間を割くようになった。反原発の声を受け止める新しい党として注目するが、小沢一郎の存在をマイナス要素としてあげる説明が必ずある。「未来」の政策は「国民の生活」とほとんど同じで、それはまた「民主党」が3年前に掲げたマニフェストとあまり変わらない。だから嘉田知事は小沢一郎の傀儡で、失敗した民主党の政策の焼き直しに過ぎないといった批判だ。

・小沢一郎は前回の衆院選の直前に「西松建設疑惑」で党代表を辞任し、民主党が政権を取って幹事長になった後、「政治資金規正法違反」や「陸山会事件」の容疑で起訴されて、剛腕、壊し屋の上にダークな政治家としてのイメージが定着したが、起訴されたことはすべて無罪になっている。
・その小沢に対するイメージはマスコミによって強化されたものだから、メディアは自らがしてきた報道の中身について検証して反省や謝罪をして当然のはずだが、そんなことをしたところはほとんどない。そして、「未来の党」の黒幕としての小沢の危険性を強調して、「卒原発」という政策の持つ意味を軽くしようとしている。

・3.11以降、特に原発問題について、新聞やテレビの報道が政府の発表の垂れ流しであったり、各社の立ち位置に基づいて意図的に操作されることがあからさまになってきた。デモの無視や経済への影響をくり返してきたことがその好例だ。テレビはさらに、派手な話題に飛びつく傾向を強めていて、いちばん大事な問題が何であるかを見失わせる役割ばかりを果たしてきている。

・一方で、原発の廃止に賛成する世論を大きな政治勢力にする動きは進んでこなかった。やっと生まれた「緑の党」の活動は地味で、しかもいくつも乱立している感がある。小異にこだわってオリーブの木の苗も植えられない状態だった。そんな閉塞感に囚われたところでの「未来の党」だったから、テレビも新聞も、大きく取り上げざるを得なかった。ただし、テレビのニュースは各党党首の街頭演説や、ぶら下がりのインタビューを編集して短く放送しているだけだし、各党の代表を呼んで議論をさせる番組にしても、論点がはっきりするというよりは、かえってわかりにくいままで終わってしまうことが多い。

・安部自民党総裁の呼びかけで、ニコニコ動画で党首討論会が開かれた。大勢集まれば、それは「朝まで生テレビ」と一緒で、大きな声ばかりが目立つしかないが、ネットではおもしろい中継がいくつも見られた。山本太郎の出馬宣言、嘉田知事と小沢一郎の公開対談、そして宇都宮都知事候補の高円寺での応援会、あるいはkinkintvには小出裕章が出たし、「未来」の代表代行になった飯田哲也も、卒原発政策の説明に大活躍だ。選挙の規制で、公示された後はネットの動きは制限されるが、知りたいことをじっくり確認するのは、テレビではだめだということがよくわかる数日だった。

・今度の選挙は、「反原発」のシングル・イシューでやるべきだ。経済の後退や電気代の値上がりなどといった主張は原発をなくしたくない電力会社の弁護でしかないし、核兵器をもつ可能性を手放したくない人たちの隠れ蓑だ。原発事故と放射能の拡散という事実の重さは、風化させたり、なかったことにしたりすることができないことなのである。
・そのことをはっきりさせるためにはテレビや新聞よりはネットの方がいい。にもかかわらず、選挙が始まると、候補者はブログはもちろん、フェイスブックやツイッターの更新もできなくなる。法律を変えたくないのは政治家よりもマス・メディアであることは言うまでもないだろう。

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