2015年10月19日月曜日

ラグビーと難民

・ラグビーのワールドカップで,日本が強豪の南アフリカに勝った。番狂わせと大騒ぎになって,日本でもにわかラグビー・ファンが急増したようだ。僕もほとんど注目しなかったのに,試合の再放送を見て久しぶりに興奮した。その後のスコットランド戦、サモア戦、そしてアメリカ戦はライブで見たが、日本の強さに驚くやら,感心するやら,改めてラグビーのおもしろさを堪能した

・僕がラグビーを見なくなってずいぶんになる。見はじめたのは高校生の頃で、大学選手権は暮れから正月にかけてテレビで見る人気番組だったし、その後の社会人との日本選手権まで、冬のスポーツはラグビー一色だったように記憶している。明治大学、新日鉄釜石の黄金時代を築いた松尾雄治や、同志社大学と神戸製鋼を強豪にした平尾や大八木が活躍したのは、70年代から80年代にかけての頃だった。

・そのラグビーの人気が衰えたのはサッカーのJリーグの発足が原因だと言われている。平尾や大八木に続くスター・プレイヤーが生まれなかったし、早稲田や明治、あるいは同志社といった大学の力が落ちて,大東文化大学や関東学院大学、そして帝京大学などが台頭したこともあげられるだろう。サッカーのJリーグが軌道に乗り,ワールドカップにも出場したのに比べ、ラグビーは徐々にマイナー・スポーツになり,ワールドカップ自体ももほとんど注目されなかった。

・ラグビーのワールドカップは1987年から始まっている。日本は第1回から連続して出場しているが、前回大会まではわずかに一勝で、ほとんどニュースにもならなかった。そんな成績だったから,次回の東京大会もあまり話題にならなかったのだが、今回の活躍で、急に期待感が出てきたようだ。それはそれで結構だが,ひとつ気になることがある。それは日本チームに外国人が多く含まれていることに対して,違和感をもつ意見が多く聞かれた点である。

・ラグビーの代表チームは国籍で制限されていない。条件としては出生地が日本であること、両親、祖父母のうち一人が日本人、日本で3年以上継続して居住していることの三つである。国籍に囚われないことには,ラグビーの発展の歴史が関係している。ここでは省略するが、たとえばアイルランドは北アイルランドとの混成チームだから,ふたつの国が一緒になっている。紛争が続いた国がひとつになっているのである。

・日本チームに所属している外国人選手のほとんどは社会人リーグのチームに所属している。大学から,あるいは高校から日本に居続けている人もいるし,日本人の女性と結婚している人もいて,日本国籍を取得した人もいる。野球やサッカーにいる助っ人とは違う人たちであるのは、詳しく見ればすぐにわかることである。

・もっとも、国を代表する選手が、必ずしもその国固有の民族や人種に限らないことは,アメリカはもちろん、EUの国でも当たり前のことである。それはロンドンやパリの町を歩いた時に出会う人たちの肌の色や衣服が多様であることからすれば,当然のことのように思われる。旧植民地からの移住、移民、そして難民など、多様な人たちがひとつの国を構成する。その当たり前の傾向が,日本ではまだ不自然なこととして思われている。

・安倍首相が国連での記者会見で,シリアの難民問題に答えて、「難民」と「移民」を混同するような発言をした。信じられない、的外れで陳腐な発言として受け止められたようだ。しかしその発想はまた,多くの日本人に共通するもののようにも思われる。外人、異人はどこまで行っても,どんなになっても日本人ではない。だから弱い者には排除や差別の意識が向けられるし、強い者はお別火(同じ釜の飯を食わせない)扱いする。

・シリアを初めとして世界の各所で生じている難民問題に知らぬふりを決めこむかぎり、そんなガラパゴス的風土はいつまでたっても改まらない。その意味で,ラグビーのチーム編成が、難民を受け入れるきっかけになれば,と思ったのだが、そんな意見はほとんど聞こえてこない。

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