2016年4月11日月曜日

Bob Dylan at Orchard Hall

 

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2016_tour.jpg・ボブ・ディランのコンサートは6度目で,前回は1997年だったから20年ぶりということになる。最初のコンサートは1978年で、僕は20代でディランは30代、20年前はぼくは40代で彼は50代。本当に長いつきあいだとつくづく思う。
・今回は彼はもう70代の半ばだが,相変わらずエンドレス・ツアーを実践している。日本にも頻繁に来ていて、2010年と2014年に長期のツアーをしている。ただしオール・スタンディングの会場だったから行く気にはならなかった。今回はここのところ何度も行っている渋谷のオーチャード・ホールだったし、もう最後になるかも,と思ったから行くことにした。

・ディランはけっして懐メロ歌手ではない。レジェンドだのレガシーなどと言われるが、積極的にアルバムを出し続けていて、あっと驚くものが少なくない。たとえばクリスマス・ソングを集めた『クリスマス・イン・ザ・ハート』やフランク・シナトラのナンバーを歌った『シャドウ・イン・ザ・ナイト』があって、その意外性に戸惑ったりしたが、聴き慣れればなかなかいいという印象だった。
・もちろんその他にも自作を集めたアルバムも出していて、不思議なのは評判だけでなく、売り上げも最近の方が多いことだ。ディランは日本では名前ほどには売れないミュージシャンの代表だったのにである。2012年の『テンペスト』はアメリカとイギリスでともに3位になり、2009年の『トゥゲザー・スルー・ライフ』は米英で1位になっている。こんな傾向は1997年の『タイム・アウト・オブ・マインド』からで、2001年の『ラブ・アンド・セフト』、2006年の『モダン・タイムズ』も1位やそれに近い数字を出している。もっとも日本でも売れたかどうかはわからなかった。

・コンサート会場にはあらゆる世代の人が集まっていて、若い人に関心を持たれていることに,今さらながら驚いた。ディランのライブはほとんどおしゃべりがない。次から次へと曲を連ねて,終わったらさっさと帰っていく。そのサービス精神のなさは今回も一緒だったが,前半の最後に「アリガトウ」と日本語で言った。僕がはじめて聴いたディランの話す日本語だった。
・歌っているのが何なのかがよくわからない。これも毎回のことで、前半の最後の「タングルド・アップ・イン・ブルー」もこの歌詞が聞こえて初めて気づいたほどだった。もっとも、セットリストを見ると、多くは最近のアルバムからで、とりわけ『シャドウ・イン・ザ・ナイト』のものが多かった。何しろ後半の最後が「枯れ葉」だったのである。

・アンコールの1曲目は「風に吹かれて」で,これも見事にわからないようにアレンジされていたが、僕にとっては思いの深い曲だったせいか、すぐにわかって、とてもよく聞こえた。ただしピアノの前で座ってのもので,今日彼はギターを一度も手にしなかった。ハーモニカを2曲。曲にあわせて舞台の背後に映し出される照明は落ち着いたもので良かったが、ディランの顔はいつも影になっていて,よくわからなかった。
・何をとってもディランらしいいいコンサートだった。ただし、懐かしさを捨てきれない僕には今ひとつもの足りない感じもした。ダメだね、古い地図に囚われている僕の方がずっと老けていて,ディランの方がずっと若い。今の自分を演じる楽しさに徹底しているディランに、改めて敬意を払いたくなった。コンサートに来た若い人たちは,もちろん、最近のディランがお目当てだったのだろう。最後まで立ち上がる人のいない静かな客席だったが、満足顔の人が多かった気がした。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。