・街中に出かけることがほとんどないからいつの間に,という感じだったが、ハロウィンが日本でもすっかり定着したらしい。先日研究室に訪ねてきた卒業生が持ってきたお土産がハロウィンのヨックモックで、そんな季節かと思った。クリスマスは家族、バレンタインは職場の同僚の間の行事としておなじみになったが、ハロウィンはSNSで呼びかけた知らない者同士の仮装パーティやパレードになっているという。「キモカワ」の仮装祭りの聖地は渋谷が一番にぎやからしい。
・ハロウィンはケルトの祭りで、暦の最後の日を祝う行事だったと言われている。アイルランドからアメリカに移住した人たちによって収穫祭として広まったが、盛んになったのは第二次世界大戦後だったようだ。キリスト教とは無関係の祭りだが、カトリックはそれを取り込もうとし,プロテスタントは拒否したという経緯があるという。子どもたちが仮装をして地域の家々を回り、お菓子をもらう行事で、日本で話題になったのはアメリカに留学した日本人の高校生が射殺された事件だった。
・そんな異世界の怖い祭りが日本で浸透するきっかけになったのは「キティランド」とも「ディズニーランド」とも言われている。若者たちの間で流行りはじめると、100円ショップやネット通販で関連グッズが売られるようになり、お菓子のメーカーが乗って、ハロウィンを冠した商品を売り始めた。カボチャのお化けは収穫物の代表で、仮装は異界の扉が開いて悪霊や精霊がやってくるという祭りの趣旨に由来するようだ。
・SNSで拡散して渋谷などに集まってパレードやパーティをするというのは、反原発や戦争法案、あるいは憲法改悪に反対する行動と共通する、新しい動きだと思う。けれども裏に商魂たくましさがあるという点では、クリスマスやバレンタインデーのくり返しでもある。クリスマスを家族のパーティと親から子供へのプレゼントの日にしたのは,アメリカで発展した消費行動の結果だったし、赤い服を着たサンタクロースはコカコーラのキャラとして登場したものだった。バレンタインデーを日本で定着させたのがチョコレートを売るお菓子メーカーだったことは今さらいうまでもないほど有名だ。
・にぎやかになりはじめたハロウィンの市場規模が1000億円を超え,バレンタインを上回るようになったという報告もある。この祭りに好意的な人も多く,できれば仮装をして参加したいと思う人もたくさんいるようだ。外から入ってくるものには寛容で、中味には無関心で形だけ取り入れるといった特徴はハロウィンでも変わらない。それは何しろ、奈良や平安の昔から日本人が見せた大きな特徴の一つである。しかしそれはまた、本来の意味を換骨奪胎させて魅力的な商品にするという,きわめて現代的な経済行為でもある。
・若者の仮装好きはすでにコスプレで常態化していて、「クール・ジャパン」を代表する特徴にもなっている。それは逆に日本から世界に拡散してそれぞれ独自の発展をしたりもしているようだ。だとすると、なぜ若者たちはこれほど仮想に魅惑されるのかといった疑問も生じてくる。現実の世界や自己からの逃避だろうなどと言いたくなるが、それだけのことなのかどうか。今のところ説得力のある分析には出会っていない。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。