・NHKのニュースは相変わらずABEチャンネルだが、個々の番組には、面白いものや教えられるものが少なくない。特に敗戦記念日前後のものには、歴史を丹念に掘り起こし、証言を集めた番組が続いた。しかも、NHKのサイトには「戦争証言アーカイブス」が設けられていて、無料で公開されている。会長が変わって、作りたい番組が作れるようになったのだろうか。あるいは、NHKの姿勢に抵抗する制作者たちががんばっているのだろうか。
・アーカイブに公開されているのは、まずNHKスペシャルの「ドキュメント太平洋戦争」の1から6で、それぞれ「太平洋・シーレーン作戦」「ガダルカナル」「マリアナ・サイパン」「ビルマ・インパール」「レイテ・フィリピン」「一億玉砕への道」をテーマにしている。また「わたしの戦争体験」では、瀬戸内寂聴、小林桂樹、淡島千景、宝田明に話を聞き、証言記録としてはそのほかにも、「日本人の戦争1、2」「シベリア抑留」「満蒙開拓青少年義勇軍」「台湾先住民"高砂族"の20世紀」。そして巨大戦艦大和、乗組員が見つめた生と死」といった番組が列挙されている。。
・このアーカイブは他にも、1940年代から始まって映画館で上映された「日本ニュース」や戦後の「朝日ニュース」、そしてテレビが始まった1953年から現在に至るまでの膨大なニュース映像が掲載されている。あるいはSP盤レコードに保存された戦時録音資料として、「開戦時のラジオニュース」,さまざまな「演説」、戦況を伝える「勝利の記録」や「報告」そして玉音放送などもある。
・きわめて貴重な資料が大量に集められて公開されているのだが、検索についても丁寧に作られていて、「所属組織から」「地図から」「年表から」調べて見つけることができる。また、NHKがこれまでに製作した太平洋戦争をテーマにした「特集」も見ることができるようになっている。
・一気に見ることなどできない膨大な資料映像で、一体これをいつまで公開してくれるのだろうか。政府や自民党からクレームが来て削除されることはないのだろうか、と心配になる。もっともこのサイトは今年ではなく、2015年から続いていて、徐々に充実させているもののようだ。政策担当者へのインタビューによれば、学校など教育現場で利用してもらえることを心がけていて、学校向けの冊子なども作っているようだ。
・NHKにはうんざりという印象を持ってから、もうずいぶんになる。だからこそ、組織のなかで頑張っている人たちがいることには、少しだけ救われる気にもなる。けれどもまた、毎日のニュースで取りあげる出来事や、その報道の仕方の偏向とのあいだに、同じ放送局とは思えないほどの乖離を感じてしまう。NHKは前文科省次官の前川喜平にインタビューをしながら放送しなかったし、加計学園の獣医学部の建設図面が公開されても、一切放送していないようだ。そのくせ、北朝鮮のミサイルについてはくり返し流している。
・とは言え、この乖離は、もっと顕著なものになって欲しいと思う。政治的なスタンスを別にすれば、見て面白い番組を作っているのは圧倒的にNHKなのは明らかだろう。間違っても、政治力によってつぶされることがないように。民法には、みたいと思う番組自体が、ほとんどなくなっているのだから。