2021年2月1日月曜日

感染より世間が怖い

 年々減り続けていた自殺者数が、昨年は増加に転じました。今までは比較的少なかった若い女性の数が増えているのが、大きな特徴のようです。原因はやはりコロナ禍で、もともと女性はパートなどの低賃金で働く割合が多かったのに、仕事を減らされたり首を切られたりして困窮してしまっているのです。東京新聞によれば、全国では推計で90万人がそんな状況にあるようです。

「自助・共助・公助」を相変わらず言い続けている首相は、そう言った休業補償のない人たちへの援助については「生活保護」があるからそれを使えと言いました。しかし、この制度を使うのには、大きな壁があるようです。まず、自力で生活してきた人には、コロナ禍がなければ縁のない制度だったという点です。次に申請をすれば、親族に対して援助ができるかどうかを確認する「扶養照会」が送られることにあります。

「生活保護」を受けること自体が自尊心を傷つける要因になるでしょうし、親や子どもに知られたのでは、その気持ちはますます大きくなってしまいます。それなら死んだほうがましと考えたとしても、不思議ではない気がします。要するに「生活保護」は 生活できなければ国が恵んでやるから、そのつもりで申し出ろという態度の制度なのです。

コロナ禍での特別支援を渋る国は、自殺まで考え、実行してしまう人が急増していることに、何の責任も感じていないかのようです。生活が困窮した時に国や自治体の支援を受けるのは、憲法に定められた国民が人間として生きるための権利です。しかし恥を忍んでお恵みを頂戴するという仕組みになっていることを、政治家はもちろん、世間一般にも常識化されてしまっている気がします。

コロナ禍で感じる不安について朝日新聞が行った調査では、「感染したら、健康不安より近所や職場など世間の目の方が心配」と答えた人が7割近くあったという記事がありました。感染したら後ろ指を指される、ネットに晒され自警団にひどい目に遭う。そんな恐怖の方が、感染して苦しむよりも辛いというのです。感染者は日ごろの行動が悪いせい、ウィルスをまき散らす迷惑な奴。そんな意識の蔓延が「世間」という形でのさばっているのです。

政府は感染者の入院拒否に罰金と懲役を科す法律を提案しました。国会で懲役の部分は削除されましたが、ひどい政権だとつくづく思いました。施行されたら、積極的にPCR 検査を受けようと思う人は少なくなるでしょう。そもそも、陽性だと判定されても、多くの人は入院できずに、自宅で療養するしかないのです。

自宅や施設、あるいは路上で容体が悪化して死んだ人が12月以降急増しています。その半数以上は、死後に陽性であることがわかった人たちでした。自覚症状があってもなかなか検査が受けられないことが未だにあるようです。けれども、感染していることを恐れて検査を受けようとしない人が増えているとしたら、コロナ禍は、それこそ「世間」の中に沈み込んで、やがて大爆発ということにもなりかねないのです。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。