人の話がちっとも面白くない。………得心する、その通りだと心から納得する、なるほどと心から唸る、黙って聞いているだけで心地よい、そんな納得の仕方がなくなった。しかしそれでも、人の話を聞いている時は、うんうんと相槌を打って解ったような顔をしている。実はこれがいけない。こちらがそんなふうに相槌を打つものだから、相手はますます熱心に話してくる。
自己の同一性、自己の存在感情というのは、日常的にはむしろ、(眼の前にいるかいないかとは直接関係なしに)他者によって、あるいは他者を経由してあたえられるものであって、自己のうちに閉じこもり、他者からじぶんを隔離することで得られるものではない。他者から隔離されたところでは、ひとは<自己>を求めて堂々めぐりに陥ってゆく。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。