・トヨタのエスティマのCMにザ・バーズのミスター・タンブリンマンが使われている。ボブ・ディランの曲で、僕が高校生のときにロックに夢中になるきっかけになったものだ。だから当然懐かしいが、思い入れがあるから、安っぽい使われ方をされると腹も立つ。ほかにも自動車のCMにはよく古いロックが使われるが、うまい使い方をしていると思えるものはきわめて少ない。
・なぜ古いロックがCMに使われるのか。CMを作っている人の趣味か、スポンサーの意向か。どうやら中年世代の男を消費のターゲットしているからのようである。たとえば車でいえば、最近のヒット商品は日産のフェアレディZ。これは60年代にデビューしたスポーツカーで、今50代の男たちにとっては憧れの車だった。若い頃には手が出なかったスポーツカーがリバイバルされて、それを中年世代が買っている。月産2000台というから、この勢いはかなりのものだろう。後を追ってマツダもロータリー・エンジンのRX7を8にして発売しはじめた。
・車はここ10年以上ワゴンやワンボックスが主流だった。セダンと違って人も荷物もたくさん積める実用重視なのだが、バンのように商用の安っぽくはない。それに最初に注目したのは今の50代で、家族みんなで出かけられる車を求めたからだった。買い物や食事、あるいは小旅行やキャンプ。「車に乗って感じる家族の繋がり」。僕の乗っているレガシーがその典型だが、テレビのCMはやっぱりロッド・スチュアートなどのロックが多かった。
・その50代が今、不景気をうち破る消費層としてあらためて注目されている。そんなコメントを最近よく聞くし、BSジャパン(東京12チャンネル系)は50代の男だけに限定した会員募集をしていて、その世代をターゲットにした番組も作っている。いわく「今、50代が一番格好いい」。その50
代のまん中にいる僕としては「へー、そうなの」という感じだが、そう、持ち上げられる理由も何となく分かる気がする。
・可処分所得、つまり比較的自由に使えるお金をもっているのは、独身の30代と子どもにお金がかからなくなった50代なのだそうである。
20代は薄給だし、40代は子育てで精一杯、そして60代になれば老後のためにと無駄づかいはしなくなる。確かにそうで、僕ももうすぐ子どもへの仕送りや学費の負担から自由になる。
・音楽がテーマなのに話が妙な方向にそれてしまった。5月20日の朝日新聞で、売れないCDについての特集記事が掲載されたが、演歌が売れはじめたことなど、やはり中年世代の購買力が指摘されていた。そういえば、50年代のロックンロールや洋楽のヒット曲、あるいは60年代、70年代のロックなどを集めた「〜全集」といったCDの新聞広告も目立つし、テレビの通販などもよく見かける。もちろん、日本のフォークやニューミュージック、あるいはJポップなどをまとめたものも多い。NHKのBSでは戦後の時代をヒット曲と映像でふりかえる番組を毎週やっている。僕と同世代のフォーク・シンガーなども、外見はすっかり変わってしまっているのに、まったく昔のままの歌を歌って、客席のおじさんやおばさんを懐かしがらせている。
・なるほど、そういう傾向なのかと思う。50代の消費が増えて不景気が少しでも改善されるのなら、それはそれで悪いことではない。「〜全集」がセットで何万円もしても、ほしいと思う人が多ければ、売上げはかなりのものになるに違いない。けれども、僕は首を傾げてしまう。その種のCDはちょっと前まで街頭の出店なんかで数千円、あるいは数百円で売られていたはずで、ぼくもそんなCDを何枚ももっているからだ。今でも探せばあるはずだ。それは著作権を払わない違法のCDだったのだろうか。それとも、レコード会社が考えた商品価値を高めるためにした工夫の結果なのだろうか。懐かしさにつられて財布の紐をゆるめるのは、あまり賢い買い物ではないと思うのだが………。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。