2003年5月19日月曜日

相変わらずのジャンク・メール

  相変わらずジャンク・メールが多い。とはいえ、傾向は少しずつ変わっている。今、毎日数十通も舞いこむのは英語のダイレクト・メールで、その3分の1はヴァイアグラのセールス。アメリカではこの薬がすっかり定着したようで、メジャー・リーグの試合を見ていると、バックネットに大きく宣伝されている。NHKはイニング毎の交代時には中継とは別の映像を流しているが、試合中に何時間もヴァイアグラの宣伝なんかしていていいのだろうかと首を傾げてしまう。特に松井一辺倒の番組編成に頭に来ている僕としては、「ヤンキースタジアムのヴァイアグラの広告を映しっぱなしでいいのか!!」と文句を言いたくなってしまう。


ヴァイアグラは男の性器を勃起させるための薬で、僕も興味がないわけではないが、そんなもの使ってまで無理することはないと思う。しかし球場のバックネットに広告されるくらいだから、アメリカ人はセックス好きというか、セックスに強いことに強迫観念的に囚われているんじゃないか、とあらためて感じてしまう。ご苦労なことだが、同じような意識で日本人にセールスのメールを送ってきても、いったいどれほどの効果があるのだろうか。


もっともアダルトサイトの広告メールは日本語でやってくるものも多い。一頃の出会い系サイトは減ったし、携帯向けのものも来なくなった。これは規制が入ったせいだと思う。また、時々やってくるものにはタイトルに「未承認広告」ということばが入っていて、文面には「当配信は送信に関する特定商表示義務規定に則り送信しています。」と書いてある。送信を請け負う業者が代行するという形式をとっている。規制がかかるとその網の目をくぐり抜ける方法が見つけだされて、今度はそれが問題化する。ジャンクメールの動向を見ていると、そんないたちごっこがよくわかる。


現在のインターネットは、ほとんど無修正のハードコアの画像や映像が見放題の状態で、ヴィデオやDVDのネット販売も簡単のようだ。男にとって結構な世の中になったと言えるかも知れないが、男の性に対する関心は「隠されている」ものに向かうから、こんなにさらけ出されてしまっては、かえって意欲を削がれてしまうのではないか、とも思う。


だからこそのヴァイアグラ。ということなら納得がいく。そうすると日本での市場の担い手は若い世代なのだろうか。「過剰な発情装置」→「欲望の発散」→「マンネリズム」→「ヴァイアグラ」→「欲望の捏造」。まさに欲望のゲームである。最近目立ちはじめたメールにドラッグのセールスがある。これにも性の媚薬などといった誘い文句があるから、やっぱり欲望を捏造<する道具のひとつにいれてもいいのかも知れない。


もっとも、このような仕組みは何も性に限るわけではない。「『消費文化』は 、欲望を抑えるのではなく、欲望をでっち上げ、拡大し、飾り立てねばならない。………資本主義が実現するものは、幻想と快楽の商品化である。」(B.S.ターナー『身体と文化』文化書房博文社)。このような仕組みのなかで重要な役割を果たしたのが広告であることは言うまでもないが、ジャンクメールはそのことをあまりに端的に、露骨にさらけ出している。


メールによる広告は新聞やテレビによるものとちがって、いかがわしくて、卑猥で暗い世界だ。当然、いまだに市民権は得ていない。これをこれから成長可能な広告メディアとして考えることはまだまだ難しいけれども、逆に形式を整え、制度化された既存の広告機構が本質的には、「欲望の捏造」システムであることを暴露する材料としては有効なのかも知れないと思う。


ジャンクメールはほっておけば、パソコンはもちろんサーバーにもたまるばかりだから、ほとんど読みもしないでどちらからも削除しているが、残らずためたら「広告メールの記号論」ができるんじゃないか。時折そんなことも考えるが、やっぱり、毎日何十通も入ってくると、興味よりは腹立ちの方が先に立ってしまう。誰か、こんな研究やっている人はいないのだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。