・我が家は地デジの難視聴地域にあります。昨年7月に面倒な交渉や手続きをして、BS経由でNHK2局と民放2局を受信することができるようになりました。しかしそれは暫定的な措置で、2月末をもって受信ができなくなるという手紙が届きました。半年間はケーブルテレビなどで見られるようにするための猶予期間だったわけですが、ケーブルテレビと契約したり、高感度のUHFアンテナを設置する気などないことは昨年7月の交渉時にお話をしたはずです。いかにもお役所的な一方的やり方に、しばらく収まっていた腹の虫がまた騒ぎ始めました。
・そもそも地デジ化は誰のためにどういう理由でおこなったものだったのでしょうか。素直な国民はアンテナの付け替え、テレビの買い換え、ケーブルテレビとの契約といった余計な出費を言われるがままにしたのですが、それによって何か恩恵やメリットがあったのでしょうか。もちろん地デジ化にかかった費用はそれだけではありません、日本全国に新しいアンテナをいくつも立て、広報活動にも巨額のお金を使いました。総額では1兆円にもなると言われています。しかも地デジ化はほぼ達成されたと言いながら、他方で今後もさらに2000億円もの税金が使われるというのです。
・地上波のデジタル放送ははBSでも見ることができます。BS用のアンテナを立てれば誰でも視聴できるはずなのですが、総務省はあくまで難視聴地域対策だとして、スクランブルをかけて視聴制限をしています。しかも、見ることができる場合でも、既存の地方局数にあわせて地域ごとの制限を設けていますから、たとえば山梨県では民放は2局だけということになっています。理由は、テレビ放送の既得権を守るためにあります。
・こういった制限はB-CASカードによっておこなわれています。このカードを発行しているのは「ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ」という民間会社ですが、社長は2代続けてNHKからの天下りですし、この会社と連携して発行や運営に関わっている「デジタル放送推進協会(Dpa)」は総務省の天下り機関です。またこのカードにはコピー制御の機能もあって、それについては「電波産業会(ARIB)」という社団法人が存在しています。
・電波行政はことごとく失敗をしているのが実情です。ケーブル・テレビはアメリカではテレビ放送網の基本になって、CNNやFOXなど新しい放送局と形態を生み出しましたが、日本では既存の地上波を垂れ流すだけの役割しか持てませんでした。BSはヨーロッパではデジタル放送の中心に使っている国がいくつもありますが、日本では、これも既存の放送局がテレビショッピングや韓流ドラマで埋め合わせるだけのもので、使っていないチャンネルがたくさんあります。テレビ放送のデジタル化は、それによってあいた電波帯域をケータイやネットなどのために多様に使える可能性を作り出すものです。しかし、ここでも既得権が主張されて、あいた帯域の積極的な活用という方向にはいくつもの障害があるようです。
・国が抱える借金がもうすぐ国民一人あたり1000万円にもなる日が近づいています。だから消費税で増税をというのですが、地デジ化に対する総務省の方針を見れば、無駄遣いというより、お金をどぶに捨てるような政策を続けてきて、それを根本から改める必要性を感じていないことは明らかです。これが総務省に限ったことではなく、原発に対する経産省の対応を見れば、あらゆる省庁に蔓延したものであることは言うまでもありません。
・スカイツリーが完成間近になりました。東京の新名所として期待を持って受け取られていることが報道されていますが、スカイツリーはいったい何のために作られたのでしょうか。地デジの電波発信は東京タワーからおこなわれていて、何の問題もないのですから、新しい電波塔を作る必要はなかったことははっきりしています。僕にはスカイツリーは無駄使いのシンボルにしか見えないのですが、そんな意見を言う新聞やテレビが皆無です。
・話を地デジに戻しましょう。BS衛星からの地デジ受信が見えなくなっても、僕は何も不便を感じません。この半年、ニュースや一部の報道番組を除けば、地デジにチャンネルを合わせることはほとんどありませんでした。反対に、相変わらずのバラエティ番組ばかりの放送に、その行く末を見る思いだけを感じました。日本独自のケータイがガラパゴス化(ガラケー)してあっという間にスマートフォン(iPhone)に席巻されしまったように、近い将来、テレビはパソコンと一体化した大型画面のiTVに淘汰されるかもしれません。その時私たちが見るのは、既存の地デジやBS放送ではなく、ネットを介した多様なコンテンツから選択したものになるはずです。そんな地デジ放送がガラデジとでも呼ばれるようになったときの責任はいったい誰がとるのか、総務大臣にお聞きしたいものだと思います。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。