・大学の仕事から解放されるのを待って、今年も東北小旅行に出かけた。東北にしたのはごく単純な理由で、あまり行ったことがないからだ。去年は会津と磐梯山まで行ったから、今年は山形まで。山に登るわけではないが、鳥海山と月山をみたいと思った。できればどこかでカヤックもやりたい。日本海の魚も食べたいし山形の牛肉も食べたい。
・ルートは関越道で新潟まで行って、日本海沿いを酒田まで北上する。次に新庄から尾花沢、寒河江、山形と南下。あとは東北道を戻ってくるというもの。およそ1500kmの行程。河口湖を出発した時には霧雨で肌寒かったが、関越の清水トンネルを抜けると夏の空と雲が広がっていた。トンネルを抜けると雪国ではなくて夏国。日本海側から先に梅雨明けするとは、今年はやっぱり天候がおかしい。
・新潟は去年、マスコミ学会で来ているから今回は素通り。中条で高速は終わり。海沿いを走ろうとバイパスの国道7号を外れると、すぐに「屋根瓦」屋さんの看板が目に入った。裏山は削られて粘土層が露出している。陶芸をやるパートナーの指示で停車。土をもらい、所蔵の高価な骨董や木製品などまで見せてもらった。これは間違いなく「お宝」。屋根瓦は今は造っていない。新潟地震で登り窯が壊れたのを機会にやめたのだそうだ。
・村上から北への海岸線は素晴らしい。磯もあれば砂浜もある。ここで、塩を作って売る店を発見。「Salt
&Cafe」。海水を釜ゆでにして塩にする。注文した珈琲に苦汁を数滴入れる。ちょっとしょっぱくて磯の香りがする。パートナーはここでも、不純物として出る石膏(硫酸カルシウム)を袋一杯もらった。
・鶴岡から酒田へ。630km、10時間の行程だった。土門拳記念館によってから宿を目指す。筑豊に広島に室生寺。彼の写真は良くも悪くもリアリズムの迫力。真面目、真剣。筑豊の炭坑の子どもたちの写真をみて、今はもう、はるか彼方に行ってしまった世界のように感じた。夕食は居酒屋で刺身の盛り合わせとノドグロの煮付け、それに岩牡蠣。美味。
・二日目は最上川沿いに新庄から尾花沢へ。川幅が広くてゆったり流れている。日本海に注ぐ川の特徴なのかも知れないと思う。信濃川、由良川………。船での川下りがあったが、カヤックは徳良湖で。銀山温泉を経由し、サクランボ畑を抜けて月山へ。どこかでキャンプをするつもりだったが、雨が降り始めたので中止にして山形市内で宿泊。ホテルにはお相撲さんの一行がいて、夕食を食べた焼き肉屋にも鉄板を囲む大男たち。最近相撲を見ないが雅山だけはわかった。
・三日目は宇都宮まで南下して大谷石資料館を見学。ここでもパートナーは石を切り出すときに出る粉を採取する。その後Uターンをして那須高原へ。ニキ美術館を見学し、温泉の強烈な臭いのする殺生石で湯ノ花(ミョウバン)を採取する。車の中はもう石や土だらけ。宿泊したリゾート・ホテルには子連れの家族が一杯。最近ほとんど見ない風景で、子どもを連れて旅行をした頃を思い出してしまった。大変だけど、一番おもしろかった時期。などと考えている自分に気づいて、年取ったことをあらためて実感する。
・四日目は千葉から都内を抜けて帰路。梅雨が明けたようで暑い。車の温度計は33度。やっと夏。河口湖に着くと猛烈な雨。ところが家の周辺の道は乾いている。梅雨の雨ではなくて夏の夕立。気温は22度。避暑地の夏がやっと始まった。