2003年7月21日月曜日

Madonna "American Life"

 

madonna1.jpeg・マドンナのニュー・アルバム『アメリカン・ライフ』がアメリカでアルバムの1位になったそうだ。彼女のデビューは1982年だから、もう20年以上、トップ・ミュージシャンの位置に居つづけていることになる。今さらながらに、すごい人だと思う。
・デビューの頃はマリリン・モンローの音楽版と言われたり、その歌詞の内容や言動から、道徳的、倫理的、あるいは宗教的な意味で反発を買ったりしてきた。僕はそんな彼女に興味を持ちつづけてきたが、そのアルバムを買ったのはずっと後になってからだった。
・理由は、聴くよりも踊るための音楽だったこと。マイケル・ジャクソンとほとんど同時期にブレイクして、音楽状況は完全に一変されてしまった。MTVがミュージック・ビデオ専門のケーブル・テレビ局として人気を集めて、ビデオがおもしろくなければCDが売れないという状況になった。多くのミュージシャンがそのような状況を批判したが、僕もあほらしい感じがして、一時期、ポピュラー音楽自体に関心をなくした。再び聴き始めたのはU2やスティングなどに興味を持ちはじめた80年代の終わり頃からである。
・そんなことがあったから、マドンナの歌自体にはほとんど興味をもたなかったのだが、マドンナのファンが若い女性で、「ウォナビー」(マドンナのようになりたい)というのだという話を耳にしたあたりから、どんなことを歌っているのか、興味をもつようになった。
・魅力的な女になるのは、男のためではなく、自分のため。自分を表現し、自己実現するため。マドンナはセクシーさを舞台でパフォーマンスしながら、同時にジョギングをやり、フィットネスをして体を鍛えた。男を誘惑しながら、男に頼らない。男中心で保守的なものへのあからさまな反発。若い女の子たちが憧れるのはごく自然なことだが、それは男にはもちろん、頭でっかちのフェミニストにも予測のつかない現象で、フェミニズム以上に、女の子たちの意識を変える役割を果たした。
・マドンナはその後映画にも出演し、女優としても才能のあるところを見せたし、出すアルバムはほとんど大ヒットした。しかし、グラミー賞はいまだにとれていない。これはスピルバーグがなかなかアカデミー賞を取れなかったのと似ているが、エスタブリッシュメント(体制)にとって受け入れがたい存在であったことは、スピルバーグ以上だといえるかもしれない。
・彼女は常に戦う人だったし、今でもそうだという評価をする人がいる。音楽業界の慣行に対して、男たちの好色的な目に対して、女たちの嫌悪や嫉妬の目に対して、社会の保守的な意識に対して、あるいはポップ音楽の世界のトップに君臨するために、自分をセクシーで美しく、なおかつ強い存在にするために………。
・前置きが長くなった。『アメリカン・ライフ』だが、なかなかいい。ビデオクリップでは、マドンナは女兵士になってブッシュ大統領にそっくりな男に手榴弾を投げるというシーンがあったそうだ。これはイラン侵攻の時期と重なって修正されたようだが、それでも、ビデオは放送自粛となっているらしい。マドンナの反戦!の意思表示。ただし彼女は、アメリカやアメリカ軍の批判ではなく、もっと本質的な意味での反戦と反物質主義がテーマだという。そのあたりは微妙で、マドンナも誤解をされないように苦労しているようだが、僕からすれば、それは同じことにすぎない。アメリカ軍に所属する若者たちが、無益な戦争にかりだされたことはまちがいないのだから。
・もっとも、アルバムにおさめられた歌のなかには、もっと素直に現代人の心を表現したものもある。アコースティック・ギターの弾き語りで、マドンナの新しい側面を聴いた気がした。マドンナはその持ち歌のほとんどを自作しているが、そのことを知っている人は意外と少ない。ただ歌い行動する人ではなく、彼女は思索する人でもある。


あなたのそばにいると、私は私でなくなる
あなたが話してくれないと、私は私でなくなる
夜一人でいても、人混みのなかにいても
私は私でないから、どうしたらいいかもわからない "X-Static Process"

・マドンナは『アメリカン・ライフ』で当然、グラミー賞を取るはずだと思う。こんなに不作の状態が続く音楽業界のなかで取れないとしたら、もうグラミー賞など存在価値はないに等しいのだから。ところが音楽批評家の評判はきわめて悪いという。サイトで探したら次のようなコメントが見つかった。やっぱり………。音楽批評家というのは米国でも日本でもしょうもない存在で、まったく救いがたいが、マドンナはそんな悪評をバネにさらに飛躍する。

グラミー賞関連の著作があるトーマス・オニール氏は、マドンナはこれまで真面目なシンガーやアーティストとしての評価を受けておらず、今後も受けることはない、としたうえで「マドンナはポップミュージック界で、吸血鬼に等しい不死身の存在。(アーティストとして)既に終わっているとする悪評や予測を超越しているようだ」と述べている。(ロイター)

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。