・以前は、夏休みというと長期の旅行をしたものだが、ここ数年は、ほとんどどこにも出かけないでいる。理由の第一は、子どもが大きくなったことだ。クラブ活動が忙しくて時間がとれないのだが、本音は親と一緒にどこかへ行くのが嫌なのだ。で、親たちだけで一泊のキャンプ旅行に行った。実はテントを広げるのは2年ぶりである。ルートは名神を小牧で降りて、高山、白川郷か五箇山あたりでキャンプして、翌日、日本海へ抜け、富山か金沢から北陸道で帰るというもの。
・結構いろんなところへ行って慣れているつもりだが、高速道路を離れてからの道は時間がかかる。朝5時半に京都を出て、小牧インターまでは2時間、そこから高山までが3時間、オークビレッジで昼食をとって、白川郷までがさらに2時間、そして五箇山のキャンプ場についたらもう4時に近かった。時間から言えば、高山に着く頃には、高速だけなら東京まで行ってしまっているし、夕方には仙台あたりまで行けているかもしれない。
・今さらながらに遠いと思ったが、キャンプ場に並ぶ車のナンバープレートを見て驚いた。多摩、名古屋、いわき(福島)とバラバラなのである。しかし、五箇山には名古屋は京都よりも近いし、東京だって松本まで中央道を使って高山に抜ければ、時間的にはほとんど変わらない。あるいは福島だって、北陸道に出れば、後は数時間の行程である。一泊ではちょっと強行だが、二泊なら十分ゆとりをもった日程になる。高速道路が整備されてくると、こんな集まり方ができるのだと、あらためて感心してしまった。もっとも現在、岐阜から高岡までの東海北陸自動車道が建設中である。これができると、一泊だけのキャンプでも、もっと遠くからやってくることができるようになる。
・白川郷や五箇山の合掌作りの家はほとんどが、みやげ物屋や食べ物屋、あるいは民宿だった。ダムに沈むはずの家を移築してまとめたのだから、考えてみれば当たり前だが、山間の一軒家というイメージからはほど遠い感じがした。その人工的な集落には、大きな駐車場があって観光バスが何台も停まっていた。実は僕たちが停まったキャンプ場にも移築された合掌作りの家がたくさんあって、宿舎や陶芸などの教室、あるいはトイレとして利用されていた。公営の施設だから、このかやぶき屋根の家の宿泊費は2000円、ちなみにキャンプ場の使用料は一人250円だった。
・道路が整備されれば大勢の人がやってくる。そのための投資の大きさは日本中どこへ行っても感じる。言うまでもなく補助金行政の結果だが、ただ道や建物があればいいというものではない。白川郷や五箇山は世界遺産・合掌作りの村がうたい文句である。次の日に富山に抜ける途中には和紙の里や木工の村があった。利賀村は芸術(演劇)村だし、山田村は全戸にマックがある電脳村である。ホームページも出していて、8月には全国各地から大学生が集まってイベントが開催されたようだ(URL=http://www/yamada-mura)。小さな村がその特色をだそうと一生懸命に知恵を絞っている。そんな様子が道々よくわかった。
・僕らがキャンプに行くのは、ふだんとはちがう、自然に近い場所や歴史のある空間、あるいは非日常的な時間を求めるからだ。けれども、長い時間は使えないし、労力も節約したい。食料の調達などは便利なほうがいいし、トイレや炊事場などの設備はきれいにこしたことはない。木や土や紙、演劇、祭り、情報ネットワーク...........。そんな特色があって、手軽にふれられれば、なお結構。しかし、どこにでもあるようなものや、とってつけたようなちゃちなものでは満足できない。そんな横着でわがまま者たちをどうやって呼び込むか。交通と情報が便利になれば、それだけ特色を出して、なおかつ持続させるのはむずかしい。一泊だけの短い旅行だったが、そんなことを強く感じた。
1997年8月26日火曜日
ぼくの夏休み 白川郷、五箇山
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。