・昨年夏の韓国に続き、今度は台湾を訪れた。いずれもはじめてで、韓国ではハングル文字と食事の辛さや味の濃さにめげたが、台湾は漢字の国だから、空港に降りたときから、第一印象は韓国とはずいぶん違った。最初の日に食べた餃子は種類も多くておいしかったうえに値段も安い。日本語が通じることも多いから、異国にいることをほとんど意識しなかったりもした。
・道路を走る自動車の多くは日本車で、まるで軍団のようにして走っているバイクもほとんどはホンダやヤマハのカブやスクーターだ。セブンイレブンやファミリーマートがやけに多いし、デパートは三越やSOGOだから、日本資本や商品に占拠されているかのようだが、台湾の家電や電子機器メーカーは、今や日本の大手を脅かす存在になってもいる。
・台湾は韓国とは対照的に親日的だと言われている。たしかにその通りで、道できょろきょろしていたり、駅で切符の買い方を迷っていたりすると、すぐに日本語で助けてくれる人がいる。もっとも親切なのは韓国でも一緒だった。どちらも儒教の国だから白髪頭の老人には親切なのである。
・ただ明らかに違うのは、占領時代に作られた建物や鉄道が今でも大事に使われていて、占領時代の産物であることが善悪抜きに紹介されていることだ。台北の国立博物館では鉄道展をやっていて、新橋横浜間を走った蒸気機関車が展示されていた。また、今は事故があって一部しか運転していない阿里山森林鉄道は、占領時代に赤檜を切り出して日本に運ぶために作られたものだが、観光客で満員の盛況だった。
・歩いた場所にもよるのだろうが、いわゆるレストランや料理屋と言った店が少なく、屋台のような店が軒を連ねる食堂街が多いのが気になった。テイクアウトする人もいるし、簡易テーブルで食べていく人もいる。焼売、餃子、肉まん、麺やスープなど中華料理がほとんどで、ハンバーグやイタリアンの店はほとんどない。道行く人も買う人も、その多くは若者たちだから、食べ物については保守的なのかもしれないと思ったりした。
・それは韓国でも感じたことだったが、大きな違いは何を食べても薄味だった点だ。携行している『地球の歩き方』には、薄味が日本の占領時代からの影響であると書かれていた。そういえば、焼き餃子は大陸にはない日本独特のものらしいし、セブンイレブンには「関東煮」と名がついたおでんが、日本の店と同じようにして売られていた。そんなわけで、食べ物についても何の違和感もなかったのだが、3日も経つと中華料理に飽きが来てしまった。
・今回の旅程は台北を起点にして左回りで一回りするというもので、訪れたのは、台北→鶯歌→阿里山→高雄で、この文章は高雄から乗って台東まで行く特急「自強号」で書いている。高雄では超高層ビルの展望台に上がって高雄の街を見下ろした。港町で再開発が盛んに行われている。老街と高層ビルが混在していて何ともちぐはぐで、新幹線が届いていない高雄駅はノスタルジックだったが、数年のうちには新幹線の開通に伴って大改装されるようだ。ちなみに中国語ではホームのことを月台という。注意は細心ではなく小心、徐行は慢、弁当は便當と漢字の意味が異なるのも戸惑いというよりはおもしろい発見だった。
・といわけで、旅も前半が終了した。これから東海岸を北上して台北に戻る予定だ。雨続きだったが今日は晴れ。これからもずっとそうあって欲しい。<続く>
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。