・父親が体調を崩して寝たきり状態になったのが一昨年の夏でした。母親が元気でしたから、主な面倒は彼女が見てきました。しかしそれでは大変なので、介護付きの老人ホームにショート・ステイをしたり、介護認定を受けて、リハビリの訪問介護やお医者さんの往診をしてもらうようにしてきましました。いろいろなことがありましたが、リハビリの甲斐もあって、父も昨年の暮れ頃から家の中での車椅子の使用をやめて、歩くようになり、最近では近くに買い物に行ったりするようにもなりました。
・ところが4月はじめに母が体調不良を訴え、診察をした結果、脳内出血と診断され、即入院となってしまいました。不幸中の幸いで症状は比較的軽度で、身体に麻痺やしびれが出ることもなかったのですが、今までのように、父と母二人で日常生活を送るということが難しくなりました。母の入院は一週間程で、戻った後の生活のサポートをどうするか、弟や妹と話をし、世話になっているケア・マネージャーさんに相談をして、急いで受け入れ準備をしなければなりませんでした。
・介護制度にはそれを受ける人の必要度に合わせて「要支援」1・2、「要介護」1〜5の7つの段階があります。それに応じて多様なサービスが用意され、それそれが点数化されて、段階によって受けられるサービスの量と負担額が決められています。介護保険は65歳になると誰もが加入しなければならない制度です。元気であれば、そして急な死を迎えたりすれば、この制度を利用することもないのですが、現実には、この制度を利用して日常生活を送っている高齢者の数は、年々増えるばかりのようです。
・上野千鶴子の『ケアの社会学』を紹介したコラムでも書きましたが、父親が体調を崩した時から、一応必要なことは勉強したつもりでした。しかし、母が倒れて、二人では日常生活がおくれないという状況になった時には、さらにいろいろなサービスが用意されていることを知りました。そこで、今まで父が在宅で受けていた週2回のリハビリと2週に一回の往診のほかに、週に4日、1時間前後、ヘルバーさんに来ていただいて、掃除、洗濯、調理、買い物などを必要に応じてやってもらうことにしました。
・もう一つ手続きをしたのは、夜間の緊急連絡と対応を可能にするサービスです。何かあった際にボタンを押せば、「どうしました?」という返事がすぐに来て、用件を言えば30分以内に対応してくれるというサービスです。最悪しばらくは、兄弟の誰かが泊まりこんで父母の様子を見なければと思っていましたから、このようなサービスがあるのは助かりました。父は現在「要介護1」ですが、母も同様の認定を受ければ、二人そろって、リハビリ施設への長期(1〜3ヶ月)入院のサービスもあるようです。
・高齢者を基本にした介護保険制度が施行されてまだ12年しか経っていません。これから団塊の世代が高齢者になってまもなく「超高齢社会」がやってきます。僕はその世代に属しますから、このような社会保険制度ができていることをありがたいことだと、つくづく思いました。しかし、老後の生活が経済力によって格差が生じる状況も現実化しているようです。
・庭に畑を作って野菜の栽培を楽しみにしていた母にとって、住み慣れた家でこれからも生活するのは、あきらめきれないことのようです。しかし、実際に多くのサービスを受け、多くの人に助けられなければ生活できない状況を長続きさせることは難しいです。そこで、家の周辺や都内などを中心に「介護付き老人ホーム」について調べたのですが、入居金や毎月の費用がかなり高額なことと、空き部屋がきわめて少ないことに驚かされました。
・父母が持つ資産で、そういった施設に入居して生活をしていくことが可能かどうか。二人が入居を前向きに受け入れてくれるかどうか。空き状況や二人が気に入る場所の選択も含めて、しばらくはじっくりと検討する必要が出てきました。しかし、そうしながら思うのは、自分たちの番になった時にどうするかという点です。
・「介護付き老人ホーム」は現在でもかなりの数があるように思えますし、次々と新しい施設ができているようです。しかし、需要がこれからますます増えルのは確実です。おそらくさまざまな施設やサービスが生まれ、お金さえあれば、その選択に迷うような状況が訪れるでしょう。けれども、そんな余裕のない人はどうするか。そう考えると、現在の介護制度はまだまだ不十分だと言わざるをえない気もします。若い世代に過重な負担を負わせることなくこの制度を整えるにはどうしたらいいか。大変な問題に直面した経験でもありました。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。