2014年9月15日月曜日

今度はテニスで大はしゃぎ

・全米オープンテニス大会で錦織選手が決勝戦まで勝ち残った。ベスト8ぐらいまではほとんどニュースにもならなかったのに、ランキング上位の選手を2戦続けてフルセットの末に破ると、突然メデイアが大きく報じはじめた。で決勝戦はということになったのだが、衛星放送のWowowが独占中継していて既存の地上波はどこも中継しないことがわかった。Wowowには対応できないほどの申し込みが殺到したようだ。

・当然のごとく、日本人選手が海外で活躍するたびに現れる「ニッポン」「日本人」が連呼された。一番目立ったのは錦織選手が小学生の時にコーチしたという松岡修造である。まるで自分の愛弟子であるかのような入れ込みぶりは、彼の日頃のハイテンションを考慮してもうんざりするばかりだった。実際、錦織選手は中学生からアメリカに留学して、日本とは関係ないところで強くなったのである。おそらく彼には、日本人だとかアジア人だと言った意識はそれほど多くはないのだろうと思う。

・そんなメディアのはしゃぎぶりに負けなかったのは、彼が契約しているスポンサー企業と、そこに注目する株式市場の動向だった。準決勝に勝った後、ユニクロや日清食品、アディダスなどの株価が高騰したが、決勝で負けると逆に急落したようだ。彼が試合に着ているユニクロのテニスウエアーも完売したようで、ユニクロは1億円のボーナスを出すようだし、彼が所属するカップヌードルの日清食品も5000万円のボーナスをだすと発表した。今回の活躍が経済に与える効果は300億円だと試算するところもあった。

・テニスそのもののおもしろさはそっちのけにして「プチナショナリズム」と「お金」の話で大はしゃぎする。それは7月のサッカー・ワールドカップでうんざりしたばかりだったし、メジャーリーグのヤンキースと高額年俸で契約し、期待にたがわぬ活躍をした田中将大投手に対する声援にも「いい加減にしろ」と言ったばかりだったから、今回の大騒ぎには、またかという呆れと、もう救いようのない「空気」を感じてしまった。

・僕は野球はもちろん、サッカーにもテニスにも興味がある。そして、海外に出て活躍した選手がほとんど例外なく、日本のメディアや日本人が「プチナショナリズム」や経済効果を理由に「がんばれ」と声援する風潮に批判的だったことに、関心と共感と同情を寄せてきた。それは野茂や中田の時代からくり返されてきていることだが、にもかかわらず、反省して改めるといった「空気」はまるでない。この内向き志向は、一度日本という社会(世間)から出て、外から見つめないとわからないのかもしれない。

・ニューヨーク・タイムズが錦織の決勝戦を前にして、「日本人離れした特質」が快挙に繋がったという記事を掲載した。日本人には過度に協調性を重んじる傾向があって、それはスポーツにも及んでいるが、中学生からアメリカで生活している錦織には、そんな傾向を気にする思考方法がなく、個性を大事にするところがある。そんな内容だった。ガラパゴス島に生きる人にはわからないが、外からこの島を見る人からはその特徴がよく見えている。この記事には、そんな印象を強く持った。

・もう一つ、全米オープンについてネットで検索していて、同時に車椅子テニス部門があることと、そこで男女とも日本人選手が優勝したことを知った。国枝慎吾選手は今回で5回目、上地結衣選手ははじめての優勝で、二人ともダブルスでも優勝している。あるいは伊達公子も女子ダブルスで準決勝まで勝ち進んだのだが、錦織選手の陰に隠れて、ほとんど話題にされなかった。どちらも快挙なのに、こちらには目もくれない現金さ。嫌な「空気」だな、と今さらながらに思う。

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