2014年9月22日月曜日

朝日叩きに与するなかれ

・朝日新聞叩きがすさまじい。まさによってたかって袋だたきといった様相だ。原因は「両吉田問題」についての誤報と、それについての訂正や謝罪を巡るところにある。その詳細について、ここで書くつもりはない。ただ、マスコミ、あるいはジャーナリズムのどうしようもなさについては、きちんと発言しておこうと思う。

・まず誤報問題について。マスコミの誤報については「GoHoo」(日本報道検証機構)というサイトが、詳細な情報を載せている。それを見れば一目瞭然で、新聞やテレビにとって誤報は日常茶飯事であることがわかる。しかも誤った報道が与えた影響とは比較にならないほどの、小さなお詫び記事を載せるのが慣例なのは、どのメディアも同じである。

・それなのになぜ、今回は各新聞社やテレビが朝日批判をするのか。そこに安倍政権の力が働いていることは明らかだろう。何しろ新聞もテレビも、そのトップがこぞって安倍首相と食事をしたりゴルフをしたりしているのだから、政権との癒着は露骨と言ってもいいのである。その代表は読売新聞と、フジサンケイグループである。

・その意味では、今回の騒動は、従軍慰安婦問題はなかった、福島第一原発事故は収束に向かっているとしたい政府に同調するグループと、それに批判的なグループの戦いだと言える。実際安倍首相は、朝日の誤報が日本の国益を損なったといった発言をして、あからさまな批判をしている。朝日を叩いて政権に批判的な勢力を一気にやっつけてしまおうという狙いがあるのは言うまでもないことだろう。そしてこの構図は、民主党が政権を取った時から露骨に現れているものである。

・このような風潮に悪のりして、大出版社発行の週刊誌が朝日叩きの特集を毎号書いている。週刊誌はただ売り上げを伸ばすために、誤報など気にせず人の気を引く記事を書くから、今さら正義面はできないはずだが、そんなこと知ったことかという態度である。新潮社も文藝春秋も小学館も、出版社としてどんなにいい本を出そうと、こんな週刊誌を作っていては、とても信用はできないのである。

・もっとも日本のメディア状況の問題が、より制度的、構造的なものに起因していることも知っておく必要がある。1新聞社の発行部数としては日本の読売と朝日が世界1位と2位を占めていて、毎日が4位、日本経済新聞が6位、そして中日新聞が9位と、10 位までの半分を占めている。これはけっして誇れることではなく、異常さを示す数字だと言える。全国規模で新聞を発行する国は、先進国ではあまりないからである。これは要するにメディアの中央集権化に他ならない。

・さらに、テレビやラジオはそれぞれ大手新聞社と一体化していて(クロスオーナーシップ)、しかも、総務省によって電波が管理されている。会長や経営委員が政権によって任命されるNHKは言うまでもないが、民放においても、権力批判がしにくいのは制度上仕方がないとも言える。ただし、電波が国の管理下にあるために、既存の放送局とそれと提携する新聞社には、新興勢力に脅かされるという不安を免れるという既得権がある。

・政府や地方自治体、あるいは警察などを情報源とするニュースはそれぞれの場所に設けられた「記者クラブ」で入手される。当然、その場で取材できる人も、既存の大手新聞社や放送局などに限られていて、フリーのジャーナリスト入りにくくなっている。そんな特権が、情報操作に利用されることもまた、ニュースにはありふれている。誤報とは言えないが歪められた情報が無数にあることもまた、事実である。

・「世界価値観調査」が出す『世界主要国データブック』の「世界各国における新聞・雑誌への信頼度(2005年)」によれば、日本は47.5%で世界で一番信頼度が高い国である。また、テレビについても37.9%で4番目になっている。これは先進国では異例なほど高い数字で、それだけ、マスメディアから発信されるニュースを鵜呑みにする割合が高いことを示すものだろう。

・だから誤報騒ぎには敏感に反応すると言えるのかもしれないが、そもそもそれほど信用できるものではないことを前提に受け止めていないことを自覚する方が、もっと大事だろうと思う。

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