2016年7月11日月曜日

アイルランドの若い歌手たち

 

Damien Rice"O" "9" "My Favourite Faded Fantasy"

Lisa Hannigan" Sea Saw" "Passenger"
Wallis Bird "Architect" 'Bird Song"'

rice1.jpg・アイルランド出身のミュージシャンにはずっと聴き続けている人がたくさんいる。ヴァン・モリソン、U2、シニード・オコーナーなどで、その他にもケルト音楽としてチーフタンズ、アニューナ、エンヤ、ジム・マッカン、アルタン、そしてカルロス・ニュネスなどがいる。音楽ジャンルとしてはそれぞれ違っているが,誰にも共通した雰囲気や主張があるなと思って聴いてきた。行ってみたい国だったから、紛争が落ち着いた2005年に出かけ、パブでギネスを飲みながら音楽を聴いた。

rice2.jpg・アイルランドはケルトというヨーロッパに古くからいた民族を基本にした国だ。スコットランドやウェールズも同様だが、アイルランドだけがイギリスから独立している。しかし、隣の強国に押さえつけられて苦難の歴史を辿らされてきた。そのことを強くメッセージしてきたU2のボノやシニード・オコナーなどもいるし、古くから歌われている歌に思いを込める人もいる。僕が一番好きなのはヴァン・モリソンとチーフタンズの『アイリッシュ・ハート・ビート』と言うアルバムだ。

rice3.jpg・最近続けてアイルランドの新しいミュージシャンを知った。その一人、ダミアン・ライスは6月に日本に来たようだ。デビューは2002年だから、僕のアンテナも頼りない限りだと思った。最初が"O"で2枚目が"9"という何とも意味不明なアルバムタイトルだが、歌そのものはメロディアスでオーソドクスなものが多い。ただし言われなければアイルランド出身だとは思えない。アルバムではバックもつけ,ストリングスなども入れているが、ステージではギター一本で歌うことが多いようだ。それで何千人もの聴衆を釘付けにするほどの訴求力を持っていて、それが何よりの魅力のようだ。

lisa1.jpg ・リサ・ハニガンはダミアン・ライスのバック・コーラス、と言うよりはデュエットのように歌うメンバーだったが、独立して2枚のアルバムを出している。で、彼女のオリジナルで構成されたアルバムは、ダミアンのとはまるで違う感じに仕上がっている。ジャケットにさいころのパッチワークが使われているが,これは彼女の自作のようだ。経歴にはダブリンのトリニティ・カレッジで美術史を専攻したとある。ハスキーで静かに歌う様子は,ケルト色を薄めたエンヤのようでもあるし、棘のないシニードのようでもある。

lisa2.jpg ・ダミアン・ライスにしてもリサ・ハニガンにしても、すでにヨーロッパでは有名なミュージシャンで,コンサートをやれば大きな会場のチケットがすぐに完売するほどのようだ。ケルトの臭いがないのは僕にとっては期待外れだったが、EU以後に登場して人気者になったミュージシャンであれば,それも当然だろうな、とも思った。たぶん彼や彼女にとってEU圏内は国内と一緒だという感覚なのかもしれない。ライスはデビュー前に一年間、EUをストリート・ミュージシャンとして放浪したようだ。イギリスの離脱がいかに時代に逆行したものかがわかる話だと思った。

bird1.jpg ・リサはその清楚さと知的な容姿が魅力になっている。しかし、もう一人ウォリス・バードはエキサイティングなロック・ミュージシャンだ。ネットには、ロンドンでデビューしたがポップな歌を強要され、ドイツに移って自由に音楽作りができる環境を見つけたといったコメントがあった。その圧巻のパフォーマンスが日本公演でも一部で話題になったようだ。その場所が吉祥寺のスター・パインズ・カフェだったと聞いて、日本での知名度の低さに驚いた。オールスタンディングでも300人ほどしか入らない小さなところだったからだ。もっともライスのライブもけっして大きくはないEX シアター六本木だった。

bird2.jpg ・音楽的には三者三様でアイリッシュであることやケルト音楽を意識させない。しかしコマーシャリズムや流行に迎合しないでやりたいことを自由にやるという姿勢は共通している。YouTubeでライブを見ると、アルバムよりはずっといいパフォーマンスをする実力派のようだ。こんな魅力的なミュージシャンが続出するのは羨ましい限りだが、日本ではきわめて限られたファンしかいないのは残念というほかはない。その日本に来ての熱演は僕も是非聴きたいと思うのだが,オールスタンディングの狭い会場では,とてもついて行けない。

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